後日談:変化の兆し
なんと本日4話目。これで第二部は終了です。第三部からは結構大変だったりもするので頑張って読んでください(笑)
「……最近、変だな」
ラギリ村を発ってから、つまりマツリとムサシの母親ククリユ・エニシが死んでから10日。俺たちはフィアードに戻るでもなく、ただ無為に日々を過ごしていた。
その中で感じた違和感。
特に町などに近いわけでもないのに、魔物にほとんど遭遇しない。
「……変と言えば、変ですね~」
「そもそも、ここにいる私たちも変じゃない?目的がないのなら、こんなところじゃなくてどっかの都市にでも行きましょうよ」
「……だよな~。何にもない生活もそろそろ飽きて来たぜ」
「もうっ、ミルルはなんでそう無神経なの?」
「…………無為」
「ああ、私たちのことは気にしないで?吹っ切ったとは言い切れないけど、それでも納得はしたつもりだから」
最近加入したばかりのマツリがそう告げるが、
「……うっ、ふっぐぅ、か、かあ、ざん!」
母親の死を思い出し、発作的に泣き崩れるムサシ。村を出てからずっとこの調子だ。
「ほらぁ、泣かないの!」
「だ、だっじぇ…」
「まったく、手のかかる妹ですみません」
「いや、別に気にしちゃいねえよ。まあ、ゆったりとしようぜ?」
こんな感じで何もやる気が起きない日々。せめて魔物でも出れば必然的にやる気を出さざるを得ないと思うんだが…。
なんでこんなに魔物は出てこないんだろう?
「……何かあったのかもしれない。一応もう少し奥まで行ってみよう」
「「「うぇ~い」」」
やる気ねえ奴らだな…!
――パキッ…!
「……あん?」
枝が折れるような音、それに続いて奴が姿を現した。
「……ゲジョジョッ」
その姿を見て、声を聞いて。ゾワッと背筋に走るものを感じた。
(……嘘、だろ?)
それは、以前聞いたことのある声。
それは、もう二度と聞きたくなかった声。
「……そ、そん、な」
唯一それについて知っているヤノン。彼女も俺と同様、俺以上にガクガクブルブルと震えている。
「逃げろ」
自分で言ったはずなのに、自分の声だとは思えない。
「逃げろっ!!」
自身に言い聞かせるように声を張り上げる。
だが、それほど大声を出したのに、奴は動かない。
「「…………はっ?」」
俺とヤノンの声が重なる。
以前、ジュプト沼地で会った時には問答無用で襲いかかって来たくせに…。
「あ、あのよ?これって何?」
初遭遇となる皆を代表してミルルが質問してくる。
それにしても、これ…か。
なんといえばいいのか。こいつについては本当になんといえばいいのかさっぱりわからん。そもそも初めて会ったのも、俺はヤノンを助けにあっただけだしな…。
「…ヤノン、何なんだ?」
結果、ヤノンに丸投げする。
「……え、えぇっと何と言われても」
困るのですよとしか言わないが、これは俺も責めることはできんな。
困っていると、くるっと踵を返した。
「……ついて来いって言ってるのかな?」
「…うう~ん」
言われればそうとも取れるが…。
「特に敵意も感じないし、行ってみたらいいんじゃない?」
「…………面妖」
「そんなこと言ってる間に逃げてくぞ?」
チッ!
「しょうがない。とりあえず追いかけよう!各自、危険だと判断したら一番近い所にいる人間と行動すること!最低二人以上だぞ!」
枝を蹴り、跳ねるように移動しながら物凄いスピードで奥へ奥へと進んでいく。
あまりのスピードに俺たちは追いかけるので精一杯だが…。
「…一体この先に何があるんだ?」
「そん、なのっ、あいつに聞き、なさいよ!」
「悪かったよ」
走りながら話すとした噛むぞ?このワン娘。
「……おいおい、マジか」
「うぎゃあああああっ!」
「…………ミルル、うるさい」
「いやいや、冷静に言ってる場合じゃないですよー!!」
「あわ、あわわわわっ!シィドさんどうするんですか!?」
「…………」
「う、うわあぁあああ!マツリー」
あっ、マツリ倒れたわ。
「…逃げる?」
「逃げよう」
「…ゲジュ!」
――ビシッ!
「「「………あっ!」」」
逃げようとしてたのに、あの野郎!
「グ、グラアアアアアアッ!!」
「「「ギャアアアアアッ!!!起きたぁあああああっ!!」」」
ほら、起きたじゃねえかああぁぁぁっ!!
俺たちにけしかけるだけけしかけて、魔物は姿を消していた。
「……あ~あ、どうするよ?」
「どうするって…ドラゴンなんて倒せるわけないのですよっ!」
そう。俺たちが遭遇させられたのは、ドラゴンだった。
体長は約20メートルほど。
しかも寝ていたところを叩き起こされたからか、異様にテンションが高く期限は悪い。
………死んだかも。
魔物に魔物をけしかけられる。そんなしたくもない経験。
世界の革命はまだまだ始まったばかりだ。




