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いつかのどこかで放課後召喚

こうなるといいな、というもの。

本編には関係ないはずです。


「……」

驚愕のあまり、何かを言おうとしていたのだけど忘れて、声もかすれた。

「どうしますか? 紫藤さん。 今ならあなたは元の生活に戻れますよ。 死に掛けの悪魔(ゴミ)なんか放っておいて、このまま何もなかったことにすれば。 もちろん悪魔(ゴミ)に生きているのも死んでいるのも関係ないんですが…… 私は塵が一つ増えようと殺せば問題ないので、どうぞあなたに選択肢をさしあげようかと思います」

頭が混乱してしまい、私はすぐに言葉を返せないでいる。数分前までヘラヘラしていたのに、私は誘拐や死ぬだなんて恐ろしさに本当に立ち向かうなんて、動揺を隠せないでいる。ティファニスが震えているのかと思っていたらそれは私の震えだったのだ。

彼女は本当に悪魔が嫌いなんだろう。憎いんだろう。だってティファニスを光の矢で射った直後、瞬間的に見せた彼女の表情があまりに冷酷で、笑顔でいて、私はそれを何よりも恐れている。この人、怖い。係りたくない。

ちがう。それよりもティファニスだ。ティファニス。ティファニス。

「……っ! ぃ、う! ………ぅ!」

おきてっ! ちあいう。ち、あ、いう! 言葉にだしたいのに口は震えてて、歯はカチカチと音を鳴らしているんだからなにも言えない。

ぱたぱたと動いているティファニスの蝙蝠羽は止まっていて、彼女のかわいらしい笑顔なんかは消えていて、そもそも息なんか聞こえてこない。触れている箇所の体温は低くて、低くて。いつもひんやりとしているのに今は寒くて寒くて、頑張って温めようと摩擦熱とか抱きしめているのに、寒くて寒くて制服から寒さが私にも伝わってくる。

「てぃふぁっにす! おきて! やだやだ! おねがっ ティファニス!」

『うう? キミは無事なんだね。 よかったあ』

私の目尻に浮かぶ涙を指先で拭ってティファニスは無邪気な笑顔でいる。

「ちがう! 無事じゃない。 ティファニスが無事じゃない! キャンディー食べればいいの? って、そうじゃなくて……」

混乱した頭はなにも考えてくれなくて、ただただティファニスが目覚めてくれただけで嬉しくて、ちがう。病院つれていかないと。ああ、そのまえに彼女から逃げないとけどどうやって逃げればいいのさ。

『うう。 キミの言うことよくわかんない』

ティファニスは私の単語だけの言葉をわかるはずもなく、不満げに口をとがらせた。

『わかんなけど、とりあえずまたね』

そう言って、ティファニスは消えた。抱きしめていたはずの重さも温度もなにもかも消えた。掴んでいたはずの手は宙をすくっただけだった。



「つまらない。召喚者を守ることを選びましたか」

彼女は静かに言った。

私の目頭に涙が滲んだ。早い呼吸に嗚咽がまじる。

「ティファニスっ! ティファニス! ティファニス!!」

奥歯を噛みしめて、拳をありったけに力をこめて握りしめる。

残ったものはただただ、出会う前の私だけだ。


どこかでいつかの放課後召喚



「そんな黙りこけてないでさあ。 なにか言ってよー! 契約しようよー それとも新米だから止めようとしてんのー? 」

と、悪魔はいった。

新人に(こう)みえても私はけっこう優秀だよ? 私のパパは天使のママを落すほどだし。 お姉ちゃんとお兄ちゃんは召喚ひっきりなしだし、弟だって悪魔学校を最年少の主席で卒業したからね! 」

悪魔に、少女は息を呑む。

「……っ」


「どんな契約する?」

と、悪魔はいった。

「まあ、叶えてやるけどそのぶん俺になにかくれよな」

悪魔に、少年はびくびくと身体を震わせ答えた。

「ぼくに代わって、ぼくになってほしいんだ」


「……あなたの望むままに」

と、悪魔はいった。

「さあ、どうぞ」

悪魔に、欠伸を噛み殺した女は答えた。

「……チェンジで」


「どういった契約にしますか?」

と、悪魔はいった。

「私の能力の範囲ならどんなものでも叶えられます」

悪魔に、呆けた男は答えた。

「……あー、お試し期間で……って!? いまのなし!! 幼馴染の彼女になってください!! ってそれもまった! もうちょい考えさせてください!」


「お前はなにを望むんだ?」

悪魔はじっと少女を見つめていった。

「さきのやつらのように、金か? 力か? 富か? 名誉か? 知か?」

少女はぼんやりといった感じで悪魔を見て答えた。

「……あの人を、あの人をかえしてください」


「し……」

「私があなたに望むものは、これからの学生生活を一緒にすごしてほしい」

『召喚』の言葉を悪魔が言う前に、少女が望んだ。



「気が合うな」

と、悪魔が馬鹿にするようにいった。

「俺も、ちょうど誰かと契約をしたくなったんだ。そう、契約がてきるならなんだっていいんだ。お前とだってな」

少年は背中合わせの少女の意思を汲み取ることにした。

「守って、これから、彼女を」

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