55・色々とついていけない
「カシュラ王国では、前国王と親しかった僕の家への風当たりが強くて、どんどん果樹園も縮小して……凍霜害の被害を受けた時には、国は助けてくれるどころか、最後に残った土地まで上手くやって取りあげていったよ。それでも残ってくれたこいつらには、まともな給金すら渡せないままさ」
「坊ちゃん……」
フロイデンの背後の二人もうなだれている。
「後ろ盾のない僕は、自分たちに出来ることで金を集めるしかない。資金があれば、また果樹園を再開できる。僕には金と場所が必要なんだ。彼女を迎えるためにも……」
それで星石師を紹介することで得られる報奨金が欲しくて、コシマさんの元へ来たのね。
だけどコシマさんは星石師ではないし、ハーキス領での生活を辞めるつもりもなさそうだし……。
「つまり、果樹園を再開できれば、コシマさんとレオルをそっとしておいてくれるのよね」
「……どういうことだ?」
「私、近々考案した物がいくつも商品化されるから、お金が入るらしいの。それを渡すわ」
「な、何だって?」
「資金があれば、あなた達はまた果樹園が出来るのでしょう? オルドー様は私の考案した商品が売れたら、好きな宝石や装飾品、調度品が気兼ねなく買える額が入るはずだって言って下さったけれど、そういうのが欲しければ自分で作るもの」
話しながら、私が錬金釜付属の収納袋からそれより大きな収納箱を出すと、男たちがぎょっとする。
「私、物を作るのが趣味だから、色々持っているのよ。お腹は空いていない?」
収納箱をごそごそやりながら、私は作りすぎて余っていた試作の携帯ビスケット見つけると、ディノが十匹ほど入りそうな竹かごに山盛り詰めて押し付けた。
「これ、日持ちも良いしオルドー様が喜んでくれるくらい美味しいのよ。みんなで食べて」
さすがに食べきれなかったから、とても助かるわ。
突然現れた大量のビスケットの山に、フロイデンたちはあっけにとられている。
「待て、色々とついていけない。君の目的はなんだ? なぜ僕たちを脅していたのに支援するような変わり身をする? 一体どういうことだ?」
「脅していないわ、お願いしていたのよ。それに話を聞いていたら、あなたたちの作る果物をどうしても食べてみたくなったの。果樹園があれば、作ってくれるのよね?」
携帯ビスケットが山盛りになっている竹かごを前に、二人の男は口元をディノのように唾液で輝かせながら交互に言い合った。
「そのかごの中から、甘党の俺を満足させられる、とんでもなく美味そうな匂いがするぜ!」
「ううっ、こいつはたまらねぇっ! 限界まで減っている腹がさらに減ってくる!!」




