41・レシピ機能
「僕をかわいがってくれるフィリシアが百人もいたら……それはいいなぁ。ふふふ、僕をだっこする順番で揉めたりして」
なぜかディノは楽しそうなことを想像しているようだけれど、欲しいものを手に入れようとする私が、ちょっとした言い合い程度で済ませると思っているのかしら。
「でも人数が多いだけではダメね。百人の私が暴発を使って錬金釜の奪い合いをはじめたら、本当に厄災の王女になってしまうわ。もっと現実的な方法で、たくさん作れるようになりたいのだけど……」
「作ればいいじゃないか!」
「作れるけど、錬金釜で作っていると知られないように、わざと作る量を少なくして持って行ってるの。もっとたくさん欲しい人がいるのに」
「それなら、レシピを出してみようか?」
「レシピ?」
「錬金釜はね、調合した品を作る時に再現した手順を、印刷することが出来るんだ。それを見れば、錬金釜で作った物の作り方がわかるよ! 木材の余りで作った紙も収納箱にしまってあるから、それに印刷すればリシアが百人いなくても、別の百人に手分けして作ってもらえるんじゃないかな?」
「なるほどね、他の人に頼んで作るという考えはなかったわ」
確かにレシピがあれば、他の人に作ってもらうことも出来るわよね。
「とりあえず、作る時間も魔力消費も一番少なくて簡単そうな物を試してみようかしら。携帯用ビスケットのレシピを出してくれる?」
「ふふ、まず食べ物のレシピを出すっていうのは僕も賛成!」
ディノはふわふわのクリームを口元に付けたまま手を叩くと、現れた錬金釜付属の石板を慣れた手つきでタップする。
すると錬金釜が動き出して、中がぐつぐつと怪しい音を立て始めてしばらく待つと、釜の口から紙の束が重力無視で浮かび上がってきた。
手に取っただけで、嫌な予感がする。
気のせいではなかった。
持った紙の束の感触が分厚すぎるわ。
印刷ミスかと思ってめくってみたけれど、どの紙にもみっちりと作り方の手順が書かれていた。
これ、私が百人いたとしても大変すぎて、間違いなくこの手順では作らないわね……。
だけど錬金釜はサボらず、この工程全部やってくれているのだと思うと、感謝が湧いてくる。
「ディノ、錬金釜を代表してあなたに伝えるわ。いつもありがとう」
「感謝もいいけれど、このレオルの買ってきてくれたケーキみたいな味を、ぼくにごちそうしてくれるのを期待してしまうなぁ」
「もちろん。お祝い事でもある時に作るわ」
しばらくは簡略化したレシピの試作に忙しくなりそうなので、そう言って保留した。




