↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】厄災王女、千年後に自分の力を知る~戸惑っているので、そんなに甘やかさないでください~  作者: 入魚ひえん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

40/67

40・ケーキの恨み

 錬金部屋へ入ると、ディノが「おかえり! おかえり!! おかえり!!!」と、明らかに期待に満ちた様子で出迎えてくれたので、私は丁寧に謝罪してから抱き潰れたケーキの箱を差し出す。


 ディノはレオルにおねだりしていたお店の箱が潰れていることに気づいて目玉を剥き、猫と人間の中間のような悲鳴を上げた。


「どうして、どうして……! こんないたわしい姿に!!!」


 ディノが震える手で箱を開けると、中には赤と青のベリーと小ぶりのハーブが飾られた、見た目も鮮やかな二色の層で作られたムースケーキが少し崩れている。


 ディノはなにやらこの世の終わりのように泣き叫んでいるけれど、大げさだと思うわ。


 ちょっと形は悪くなったけれど、私がかつて作り続けた、ゾンビ気味のホラー猫よりずっとまともだもの。


「箱に守られていたし、そこまで酷くないわ。それにすごく美味しそうよ」


「美味しいのは大前提なんだよぉ! フィリシア、芸術家なんだから美しさを忘れてはいけないよぉ!」


「むなしい芸術からはもう足を洗ったわ。今の私は実用的な世界の方でやっていくつもりよ」


「フィリシアっ!」


「文句があるのなら、私が頂こうかしら。レオルにもそう言われたし、明日、ディノの代わりに私がお礼と感想を伝えるわ」


 私が手を伸ばすとディノはさっと箱を遠ざけ、借りてきた猫のように大人しくケーキを食べ始めた。


 はじめからそうすればいいのに。


「だけどごめんなさい。私が責任を持って運ぶと決めたのに、気づいたらつい腕に力を込め過ぎてしまった結果なの」


「ふんっ。どうせレオルと変顔勝負でもして、笑いをこらえていたんだろう?」


「それならこらえる間もなく、一瞬で圧勝する自信があるわ」


「さすがだなぁフィリシア! 僕の嫌味にそこまで恥ずかしげもなく勝利宣言されると、もう怒る気も失せたよ!」


 さっきの、嫌味だったのね。


 気づかず真剣に答えていたわ。


「だけどこんな風に箱を抱き潰すなんて……これはフィリシア流の芸術なの?」


「変顔勝負の予想より地味で申し訳ないのだけれど、私、レオルといるとよく力が入ってしまうの」


「ああ、いつもの悪癖かぁ。でもあれって、リシアが相変わらず頑なだから、レオルも歪んだ癖を身に付けているんだと思うな。確かに千年前は誰かに頼ることも出来なかったんだろうけど、リシアはもう少し甘えることを覚えたらいいよ。今はレオルがいてくれるんだし」


「存分に甘えている気がするけれど」


「それなら今日だって、レオルを荷物持ちにして、ケーキの箱を潰さないように持たせれば良かったんだよ!」


「あなたが笑顔で言うと、なんでも悪者の所業に思えて来るわ」


「そう? だけどフィリシア、僕はいつだって君の味方だし、最近は元気がなさそうだから心配しているんだよ。このケーキが食べたい悩みだったら諦めてもらうけれど、レオルとの関係程度なら、僕に相談してよ!」


 ディノにレオルの悩み相談をしても、納得のできる回答がもらえた記憶は無いけれど。


「悩みならあるわ。レオルには諦めるって言ったけれど、私、自分を百人くらい欲しいの」


 たったそれだけの情報で、ディノの目が輝いた。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。