20・髪飾り(レオル視点)
俺は鞄から青い宝玉が添えられた髪飾りを取り出し、リシアに見せる。
これは姉さんが戦渦に巻き込まれた時に唯一持ってきたもので、彼女はまだ七歳になったばかりの弟を励ますために、『この髪飾りは持ち主を守ってくれる』と言って俺に握らせてくれた。
「レオル、これは……?」
「姉さんはこの髪飾りをよくフィリシアの石像に重ねて、『これが一番似合う』って言ってたな。だから、リシアが持っていてくれよ」
俺は髪飾りをリシアの銀髪、彼女の耳の上あたりで留める。
控えめながらも美しい細工の施されたそれは、リシアの澄んだ美貌によく映えた。
「青い宝玉が、レオルの瞳の色みたいね」
嬉しいことを言ってくれる。
「俺がいなくても、忘れられないだろ?」
そんな言葉に、リシアは堂々と返すのか、それとも赤面して目が泳ぐのか……。
どちらかを期待していた俺の予想に反し、リシアが寂しそうな表情をしてうつむくので、一瞬言葉に詰まる。
「そんな顔で黙り込むなよ。いなくなる時は俺が殺される時だとでも思ってるのか」
「そんなこと、させないわ」
「相変わらず、迫力のあることをさらりと言うな」
リシアの度胸も実力も知ってるのに、その真っ直ぐさが危うく思えてほっとけないのは、どうしてだろうな。
俺はリシアの頭にそっと触れた。
「疲れただろ。今日はもう休むか」
もらった毛布をリシアの肩にかけて、そのままディノの寝ている二階へと連れていく。
「毛布はレオルが使って。私は慣れてるから」
「ありがとう。じゃあ遠慮なく」
俺は毛布でリシアを包んだまま抱きしめて、ディノも含め、三人並んで横になった。
「おやすみ」
腕の中にいるリシアの全身から、異様な緊張感が伝わってくる。
それが俺のせいだと自覚はあるのに、その頑なな態度を溶かしたいもどかしさが募り、抱きしめる腕に力が入ってしまう。
「そんなに首を飛ばして欲しいの?」
脅しが小声なのは、眠っているディノを起こさないようにしているからだろう。
「それはおかしな話だな。これは俺の毛布だろ? 好きに使わせてくれよ」
「私を放して」
「風邪でも引いたらどうするんだ? 俺を困らせるな」
「困っているのは私よ」
「毛布が足りないから、仕方がないだろ。俺の親切に慣れるための、ちょっとした代償だと思って我慢すればいい。慣れれば我慢しなくてもいい。好きな方を選べよ」
「その悪癖、本当に直したほうがいいわ」
「わかってるけど、俺の手に負えなくて。リシアが直してくれないか?」
「……努力するわ」
「真面目だな」
「あなたのためだもの」
「この状況で言うのか」
俺がリシアの頭に頬を寄せると、きつく握りしめているらしい手に力が入ったのがわかる。
今、動揺で出かかっていた暴発を耐えていたな。
調子に乗ってこんなこと続けていたら、俺の体にうっかり穴が開くことも……ないとは言えなさそうだけれど。
困ったことにこの癖、そこそこ手ごわそうなんだよな。




