13・記念すべき初錬金は
私の記念すべき初錬金は、狂気の雄叫びを上げているホラー感溢れる猫だった。
ディノのかわいい笑顔をイメージしたはずなのに、得体の知れない言葉を叫んでるようにしか見えず、技術不足のせいでゾンビ気味の体つきからも、異様さがよく伝わってくる。
かろうじて猫だとわかるのが、余計に申し訳ない仕上がりね。
私にかける言葉を見つけられない、レオルの深刻に悩んだ視線が痛い。
平気よ、言われなくてもわかってるわ。
これは間違いなく「ごめんなさい」ね。
ホラー猫の石像を見つめるディノの身体が震えている。
ごめんなさい……。
「フィリシア、僕から素晴らしい作品を生み出してくれてありがとう!」
「えっ」
真面目なディノが嫌味なんて珍しいわね。
それとも私の心の傷を気づかっているのかしら。
「なんだか先鋭的な作風でぞわぞわっと来るね! 新しい僕に出会えたみたいな感動で涙が……ううっ。これは家宝にするしかないよ」
「待って! それは待って!」
なぜかディノが喜んでいるけれど、表情の圧力がすごいホラー猫をずっと大切にされるなんて、私の方はいたたまれない。
「まだ全然納得できないの。もう少しマシなものを作りたいから待っていて」
「マシなもの? 僕は大満足だけど、芸術って奥が深いんだね。だけど錬金術は魔力をやたらと消費するし、フィリシアも疲れているのなら無理をしない方が良いよ」
「それは全く、なんともないわ。だから魔力が尽きるまで練習する気持ちでやらせて!」
私はその後も夢中になってディノの石像を作り続ける。
我に返ると、草地には異様な迫力を持つ猫らしき物体がずらりと並んでいた。
回数を増すごとに技術が上がっているらしく、雑なホラー猫が精巧なホラー猫に進化していてより一層怖い。
「こんなに僕がたくさん……!」
絶対違うわ。
「フィリシア、本当に……本当にありがとう! おかげで芸術の魅力に目覚めたよ!」
こっちの気持ちは複雑だけど、ディノのしっぽが嬉しそうにリズムを取っているので、やはり本心から喜んでくれているらしい。
「でもこんなにたくさんは邪魔……ううん。持ち運ぶのが難しいわね。誰にも見つからない場所に捨てたほうが……」
「その心配はないよ!」
ディノが両手を合わせて叩くと、白い煙が彼の足元に現れた。
それが霧散すると、そこには錬金釜より一回り小さい宝箱のようなものが置かれている。
「これは錬金釜付属の収納箱なんだ。信じられないくらいたくさんの物がしまえて、鮮度のあるものだって劣化せずに保存できる便利な道具だよ」
ディノは収納箱を開けると、その中にホラー猫を次々と入れ始めた。
箱の大きさを越える量を詰め続けているように見えるけれど、ディノの言う通り中身が溢れる様子もない。
付属の収納箱、すごいわ!
だけどこれでは、無かったことにしたい失敗作を捨てる理由が見つからないわね……。
悩む私をよそに、ディノは全てのホラー猫を収納箱にしまいこむ。
「欲しい時は、収納箱の前でそれを念じてから蓋を開けば出て来るから、整理整頓も心配ないよ。それに錬金釜付属の石板を使えば、何が入っているのかも確認できるんだ、こんな風に」
ディノが再び手を叩くと、白い煙が彼の手元に現れて消える。
すると四角い石板が握られていた。
ディノが石板の表面を傷つけないように爪をしまった肉球でタップすると、私の国の文字が浮かび上がる。




