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劣等魔術師の下剋上 普通科の異端児は魔術科の魔術競技大会に殴り込むようです  作者: 山外大河
二章 魔戦開戦編

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32 真向勝負

 その狼煙に向けて赤坂が移動し始めてからしばらくした所で、赤坂の視界に暁が映った。

 ……誘いこんで奇襲を仕掛けるという様子もなく、その場で待ち構えていたという表現の方が正しいように思える。

 そう、暁は待ち構えていた。

 間違いなく暁の視界にも赤坂は映っていただろう。だけどデバイスから斬撃は放たれず、その場でデバイスを構えて赤坂が到着するのを待っている様に思えた。


(……どうする?)


 向こうがこちらを迎撃してこないのであれば一気に畳みかけるのも手ではあるが、今はそういう手段を取ってはいけない様な気がした。

 そして少なくとも自らの場所を教えて、開けたその場所でデバイスを構える暁はそんな戦いを臨んでいないという事は理解できる。

 だから暁に接近した後そのまま攻め込む様な事はせず、ある程度の距離で一旦立ち止った。

 当然、向こうに付き合ってやる必要などは無い。

 だけど態々場所を無駄に教えてまでセッティングされたこの場でいきなり跳びかかるのも気が引けた。

 公式戦ならともかく、これは互いが切磋琢磨して伸びる事を目的とする様な模擬戦なのだから。

 多分、話位は聞いてもいいだろう。

 少なくとも戦いにふざけた感情を持ちこまなさそうな暁がこんな事をしているのだ。つまりここ乗っておくのが赤坂の成長の糧になるかもしれないから。

 だから赤坂は立ち止って問いかけた。


「おいおい、なんのつもりだよ暁」


「なんのつもり……か。そうだね。この一対一の戦いにおいて俺のやっている事はそう問われても仕方がないね。実際理由も褒められたものじゃないさ」


 そして暁は言う。


「無傷のキミと真正面からぶつかってみたくなった」


 そう言う暁の目に灯っているのは敵対心ではなく好奇心だ。

 多分、というより間違いなく、暁は赤坂のフルバーストと一戦交えたいのだろう。

 そして暁は自らの理由を褒められたものじゃないと言ったがそれは違う。


 多分、赤坂と暁が戦う事があるとすれば、こういう類のフィールドの中での接近戦だ。

 だから真正面からぶつかるという事をこの模擬戦という場で行う事はとても真っ当な行為だ。

 そして……赤坂も暁がその姿勢なら好都合だった。


 フルバーストはいざという時の必殺技だ。

 だけどそもそも、暁と対峙する事そのものがいざという時なのだ。

 だから、赤坂にも好奇心が沸いてくる。

 どのタイミングでフルバーストを使うかは分からないけれど、それでも赤坂の得意範囲である近距離で暁相手に今の自分がどこまで通用するのか。

 勝利を収める事ができるのか。

 ……少し挑んでみたいと思う。


「ああ、俺も正面から全力でぶつかりてえって思ってた」


 だから赤坂はそう言って構えを取った。

 それに暁も少し嬉しそうに微かに笑みを浮かべてデバイスを構える。


「そう言ってくれて嬉しいよ赤坂……じゃあ互いに全力でやろうか」


「ああ」


 そして始まる。

 使用フィールドが街中という遮蔽物などが用意された場での個人戦。

 真正面から静止した状態で始める魔戦本来の一騎打ち。



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