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劣等魔術師の下剋上 普通科の異端児は魔術科の魔術競技大会に殴り込むようです  作者: 山外大河
二章 魔戦開戦編

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27 決死の5秒間

 赤坂の視界に映る高速で接近する暁の姿が、やや緩やかなものになったのが分かった。

 動体視力の大幅な強化。

 五秒間の高出力に……これから行う上限五秒間の高速戦闘についていくための要。


 そして赤坂は正面の暁の動きを注視する。

 こちらから突っ込む機動力が期待できない以上、動くのは最低限でいい。

 目に見えて機動力も攻撃の手数も落ちてしまっている相手に止めを刺しに来た暁の意表を突く。


 そして暁のデバイスが振り下ろされた……その瞬間だった。


「なに……ッ!?」


 暁のデバイスの日本刀の刀身を側面から殴り付け軌道を大幅に反らす。

 そして振り下ろした拳を戻さぬままに、無事な右足でフルバーストをアスファルト目掛けて打ち込んで超加速を行う。

 そして放つ。暁目掛けてのショルダータックル。


「……ッ!?」


 暁は瞬時に対応し正面に近距離の有効射程で放たれたフルバーストを防ぎきった結界を張り巡らせる。

 ……だが、次の瞬間響いたのは破砕音だ。

 近距離とはいえある程度の距離が離れた状態でさえ結界に大きく罅を入れたフルバースト。

 その高出力から発生する運動エネルギーを要いてほぼゼロ距離から。それも先のフルバーストの様に距離の離れた位置であるが故の衝撃の拡散もなく、比較的衝撃を与えるポイントを集中させられる一撃。十分破壊できる期待値はある。


 ……そして、結界を超えればそこにいるのは暁隼人だ。


 次の瞬間、赤坂のショルダータックルが炸裂した。

 当然強力な結界に阻まれた事により勢いは落ちている。これだけではとても決定打にはならない。

 だけどそれでも相手を弾き飛ばすだけの勢いはあり、そしてなによりどれだけ粗く拙い攻撃でもようやく叩き込めた一撃。

 そしてこの模擬戦の近接戦闘において、暁より先に叩き込めた一撃。

 だからとにかく、大切な一撃。

 そして……そこで終わらせない。終わらせるつもりは無い。


(……いくぞ暁!)


 態勢は崩れている。右腕と右足は粉砕骨折し、左足は捻挫。フルバーストの余波やアスファルトへのダイブで全身が骨折や打撲などを併発している。そして今まさに最大出力の魔力操作による肉体の強化で全身が悲鳴を上げている。

 それでも、まだ左腕は動く。

 左腕だけでも動けるなら、まだ勝負は付いていない。

 視界の先では、ワンバウンドした後に滑るように態勢を立て直した暁の姿が映る。

 その暁に、最後まで喰らいつけ。


「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!」


 後方に向いた左手でバーストを放ち加速する。

 そしてその勢いで回転したまま左拳を握り絞め、暁の前へと躍り出て放つ。

 全身全霊の最後の一撃。最大出力の裏拳。


 ……だが。


「……ッ!?」


 暁は辛うじてという様子でそれを回避して、そして。


「……ぐッ」


 そこにカウンターを合わせる様にデバイスの刀を振るわれ、切り伏せられる。

 満身創痍だった赤坂にとって、それはトドメの一撃にされるには十分な一撃だった。

 故に、フルバーストの活動限界時間である5秒を待たずに赤坂の意識は遠のき――

 

「……」


 再び試合前の何もない空間へと戻ってきた。

 赤坂の視界の先には同じく戻ってきた暁の姿がいた。


(……最後の、躱されたか)


 あれが当たっていた所で決定打になっていたかどうかは分からない。

 最大出力で身体能力は大幅に上昇している。だけどそれでも左腕が無事なら全力の拳が撃てる訳でもないし、体勢が極端に悪い状態での攻撃は同じく拳の威力を落とす。

 だからあの一撃がどうであれ結果は同じだったのかもしれない。

 ……それでも、結果は変わらなくても当てたかった。


(……次は躱されねえ様にしねえとな)


 中々ああいう状況が訪れる事は無いかもしれない。

 だけど次は当てられるようにしたいとは思った。

 まだ自分の戦い方の改善点が多いと改めて実感して……実感したら次に向けて改善していかなければならないとも思う。

 それは無駄ではなくきっと他の場面でも役に立つと思うし、、そして例え同じような状況に立って攻撃を当ててそれを決定打にできなくても、こちらに仲間がいればそれが決定打に繋がるかもしれない。

 だから無駄な事なんて何もないのだ。 


 そう、赤坂は自分の中で一つ決着を付けていた時だった。

 暁が赤坂に声を掛けて来る。


「なんだよ、結構やるじゃないか」


 先程までの好戦的な視線や雰囲気は鳴りを潜め、なんだか普通に友人に向ける様な雰囲気を出して。

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