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劣等魔術師の下剋上 普通科の異端児は魔術科の魔術競技大会に殴り込むようです  作者: 山外大河
二章 魔戦開戦編

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26 世界の壁 下

 例えある程度の距離が離れていてもフルバーストによって放たれる衝撃派は強烈なものだ。

 有効なダメージが与えられる射程距離はそこまで広くないものの、赤坂と暁の距離は充分に有効な範囲だ。この距離で発動までに時間が殆ど掛からない汎用的な結界でそれを防ごうと思えば、少なくとも高校生のレベルでは中之条の様に結界魔術に特化した魔術師でなければそれだけで勝負が決まってもおかしくない。

 だけど暁隼人は防ぎきった。

 ……そして。


「……ッ」


 赤坂の意識は気を抜けば飛びそうになっていた。

 通常の魔戦はデフォルトルールの決闘と違い、ダメージによる痛みは感じない。故に今の赤坂は右腕が粉砕骨折しているにも関わらず、腕が大変な事になっている事が分かる魔戦独特の感覚が纏わりつくに留まっている。

 だがしかし、その代わりにそうした痛みは精神的なダメージとして受け止める事になる。

 痛みはない。痛みはないが、内側から意識を持っていかれそうになる。それが精神力を削られるという事。


 そして。


「終りだ」


「……ッ」


 フルバーストで仕留め損なったという事は即ち。

 決めるつもりで空中で放ったフルバーストの余波で体制が無茶苦茶な事になっているという事は即ち。

 そこから暁の反撃が始まる。


 結界を解除した暁は高速で空中に跳びあがり、赤坂目掛けてその手のデバイスの刀を振り下ろす。

 それを回避する為に赤坂は瞬時に方向も考えずにバーストで加速して距離を取り、なんとかその一太刀を躱す事には成功する。

 だがアスファルトに向けて加速しつつ受け身も取らずに無理矢理着地した事により全身に打撲を負い、

骨も何本も折れて、その痛みが変換されて精神力を削ってきた。


「……ッ」


 それでもなんとかすぐさま体制だけは立て戻して、しゃがみ込んだまま暁を見据える。

 右腕がへし折れ少なくとも左足首を捻挫してまともな機動力を失ったこちらと対照的に、暁はいまだ無傷だ。そして空中の暁は悪い体制などものともせず斬撃を赤坂目掛けて放ってくる。

 それを右足で地を蹴り、辛うじて躱す。

 だけど片足だけでなんとか取った回避行動は、再び不安定な体制を作ってしまう。

 その隙を付く為に、暁は足元に結界を作りだしてそれを蹴り急接近してくる。


(……流石にこの勝負はキツいな)


 辛うじて保ててる意識で赤坂はそう考える。

 今の満身創痍の自分ではおそらく此処からいかなる手を使っても目の前の男を倒す事はできない。

 だからきっと最善策を取るとするなら、ここは大人しく負けておくべきだ。

 まだ一つだけ隠し持っている、使う機会を伺ったまま訪れなかったもう一つの必殺技は使わずに次以降に持っていくべきだと。 

 そう、確かに思った。


 だけど。例え合理的ではなかったとしても。例え5本勝負の内の一回だとしても。

 自分からリタイアする様な。諦める様な真似はしたく無かった。

 だってそうだ。

 これが現実だとすれば、この一回だけが。このどうしようもない一回だけが唯一になってくるのだから。

 例え同じような状況に陥ったとしても、魔捜官ならそこで諦めてはいけないから。


 だから負けるなら、やれる事を全部やってから負けたい。


 だから赤坂は解放する。

 例えそれを使った所で四肢の内の二カ所はほぼ使い物にならず、残った二つも怪我で本来の力は出せない。

 故にまともな戦いにならないのは分かっている。ただ目の前の暁に情報を与えて、この力での初陣をとても情けないものにしてしまう事は分かっている。


 それでも……全力を解放した。


 肉体への負荷を全く考慮しない、たった五秒間だけの最強形態。

 その最強形態で暁隼人を迎えうつ。


 そして赤坂は左拳を握った。

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