対面!
一条たちが先へ進む時、シャレイは一歩も動かなかった。動けば僕に斬られると理解しているのだろう。
「やれやれ、一番厄介な人が残ってしまいましたね」
「大魔王の心配はしなくていいのかい?」
「あの方には近衛騎士がついています。魔王クラスの精鋭ですよ」
やれやれ、はこっちのセリフだ。厄介な敵はまだ扉の向こうにもいる。一条たちが心配だ。
「なら早く君を倒して、先へ進ませてもらうよ」
「簡単に通れると思わないことですね……ッ!」
紅雪を抜いて斬りつけた。明らかに斬ったと思ったが、刀は空をきる。
「虚を実に。実を虚に。その攻撃は私に届きません」
「掃射」
次は魔銃を放つ。だが当たらない。完全に捉えているはずだが。
「私の番です」
二体の獣が飛びかかってきた。魔法で作られた幻術の類だとすぐに分かったが、嫌な予感がしたので避ける。
「いい勘ですね。ですが……」
「くっ」
攻撃からは逃れたはず。しかし僕の肩からは血が滲んでいる。仕組みは分からないが、僕に一発当てた様だ。
「やるね」
これは問答無用で倒せる相手じゃないな。
僕は気を引き締めて刀を握り直した。
ーー
紅雪で斬りつけ、魔銃を放ち、「忘却」を使い、金陣で防ぐ。全ての能力を使って戦っても、僕の体には傷が増えるばかりだ。この調子だと三年後くらいには負けるかも知れない。つまりまだ余裕だ。
今までに分かったシャレイの能力は、現実の攻撃を無効にするというもの。後一つ、無いはずの攻撃を現実にするというもの。
どうすれば攻撃が当たるのか、それを考えている。
攻撃しても仕方ないので「八島」を使い、見えない攻撃も全て避ける。
「あなたにも当たりませんね」
このままでは負けもしないし勝てもしない。
早く決着をつけなければ。一応思いついたことを試してみるか……。
「修羅」
妖気が壁に亀裂を入れた。床に霜が張り付く。この状態が僕の全力だ。
「本気を出すようですが、あなたの攻撃は全て現実のもの。私には無効ですよ?」
「なら全部斬ればいい」
鞘に収めた紅雪を、居合の構えで抜き放つ。
「絶・万象……!」
幻も現実も、全て斬る。
「大魔王様……申し訳……ございません」
シャレイは上下で二つに分かれ、氷となって砕け散った。
「……君は強かった。僕は先へ行くよ」
僕は次の間へ続く扉に手をかけた。
ーー→
時は少し遡る。一条たちは水月を残し、次の間へ進んだ。
「成瀬は大丈夫かな?」
「癪だが、あいつは俺より強い」
心配そうな鈴木に、沼田がそう言った。
「俺たちも気を引き締めていくぞ!」
一条の言葉に全員が緊張した。
扉の向こうは薄暗い場所だった。周囲を警戒しながら奥へ進むと、前に玉座が照らし出された。
「……よく来たな人間」
堂々たる巨軀の魔族。禍々しい角を生やし、大きな翼を広げた。それだけで一条たちは後ずさる。
「お、お前が大魔王か!」
「……そうだ」
「俺たちはお前を倒しに来た」
なんとか己を奮い立たせて一条は言った。それを大魔王は無言で聞いた。が、黙ってない者たちがいた。
「我ら大魔王様の近衛騎士!勇者ども、大魔王様には指一本触れさせんぞ!」
「なっ……まだ魔族がいたのか」
現れた五人の魔族に、一条は驚いた顔をする。それをよそに、沼田が魔族に襲いかかった。
素早く銃剣で斬りつけ、防がれたところに銃弾を撃ち込む。剣と銃の組み合わせで戦う沼田には隙がない。
近衛騎士の一人はすぐに劣勢に追い込まれた。
「くっ……人間がああああ!」
そして銃と剣が同時に近衛騎士を貫き、魔力の膨張と共に爆発した。
「まず一人。こんなものか?近衛騎士!」
戦いに見入っていた者たちは、この一言で動いた。一条、大山、清水はそれぞれ近衛騎士に向かっていく。回復魔法での補助が役割の鈴木は後ろに下がり、沼田が残った魔族に斬りつけた。
ーー
「ハァ……ハァ……倒したぞ!大魔王!」
「次はお前だ」
少し時は過ぎ、一条たちは全員立っていた。倒れているのは近衛騎士と名乗った魔族。
一条たちは勝ったのだ。肩で息をしているものの、まだ余力を残していた。
「……面白い。俺が相手をしよう」
とうとう大魔王が立ち上がった。滲み出す威圧感に、一条たちは顔をしかめた。
「全員でかかるぞ!最後の戦い、俺たちが勝つ!」
「「おう!」」
ーーしかし人間の希望は呆気なく崩れ去った。五人は攻撃された事に気づく暇も与えられず、壁に叩きつけられていた。
「ぐうっ……何が起こった?」
一条がうめく。聖剣は大した効果を為さず、無残に折れていた。周りを見れば仲間も同様に唖然としている。
清水の刀も折れ、沼田の銃剣も壊れている。大山に至っては腕の骨が折れているようだ。
「馬鹿な……強すぎる……」
この中で一番強いであろう沼田ですら手も足も出ない。ここに来て勇者たちは格の違う相手に出会ってしまった。
「……この程度か。勇者も弱いな。話にならん」
「はああああ!」
血を流しながら沼田が拳を振りかぶる。だがそれも大魔王は虫を振り払うように軽くあしらった。
「ごはっ……」
「沼田くん!」
鈴木が駆け寄って回復魔法をかけるも、治りは遅そうだ。
「さて、勇者がこれでは、人間も容易く侵略できよう。これまで慎重になりすぎていたようだな」
大魔王は一条たちから興味を失ったように部屋を出ようとした。
が、扉の前で動きを止めた。そして扉は開く。まさに人類最後の希望を背負った、妖気を纏う男が現れた。
「いやー死亡フラグ立てちゃったけど無事だったよ……って誰?禍々しい魔族だね」
「……お前に言われたくない」
ここで禍々しい二人の男が対面した。
「僕は成瀬水月。一応勇者だよ」
「……俺は、大魔王だ」
戦争はいよいよ佳境に入った。人間、魔族の最大戦力がぶつかろうとしている。
新作を書き始めました。グダグダなこの作品の反省から、ちょっと真面目に書いています。
読んでやって下さい。
夜桜の舞う下で
主人公最強ものです。
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