「虚飾」シャレイ
残り少し、頑張ります!
一吾たちと別れた後、魔族が群がっていくのが見えたけど大丈夫だろうか?気のせいかも知れないが、一吾が、
「え?ちょ!多いだろ!」
と叫んでいた気がする。……いや、気のせいだろう。仲間を信じるって大事なことだなあ。
すぐに切り替えて、僕は一条たちの後ろを歩く。残りの魔王は一人ということで、魔王組は二つに分かれた。「暴食」のベルズ戦の補助組と、最後の魔王に備える組だ。魔王組とでも呼ぼうか。
ベルズはフェイスと一吾たちでなんとかなると踏んでいる。再生能力と相性の悪い剣士だが、一吾の光魔法は対魔族として優れている。が、流石に魔王には手こずるだろう。だから補助組は周辺の魔族を処理するために必要だ。
後ろは大丈夫……多分。あとは僕たちが大魔王を倒すだけ。
大魔王組は一条、大山、清水、沼田、鈴木、ケヴィン、僕。今更だが、バランスが悪い。回復、補助が鈴木のみ、あとは全員前衛。……大丈夫だよね?
そもそも千年前の勇者パーティも全員剣士だし。
そんなちょっとした不安が浮かんだところで、大魔王組と魔王組は城の前に到着した。門の前には当然のごとく二人の門番が立ちはだかった。それぞれ槍を持ち、油断なく構えている。
「貴様らが勇者か」
「ここはただじゃ通さねえぞ?」
これまでの魔族とは格が違う。見たところ魔将クラスの力は持っているようだ。
「ここは俺が行こう」
「私も」
こちらから前に出たのは大山と清水。大山は以前戦った時とは比べものにならない強さだ。清水とは戦ったことはないが、確かに強い。流石に勇者の成長速度は速い。
「ゆくぞ!」
勝負は一瞬のうちに決した。槍ごと拳で粉砕する大山。舞うように刀を薙ぐ清水。そして血を吹き出して倒れた門番。
「ぐうっ……我らを倒すか……」
「やりやがる……」
「悪いな。俺たちは先へ進まなければいけない」
「戦いはこれからだ」
二人とも立派な武人の風格だなあ。僕に足りないのは風格な気がする。どうすれば風格が身につくんだろうな。あとで聞いてみよう。
「どうだ?成瀬、俺たちも強くなっただろ?」
一条が自慢げに言ってくる。
「でも神聖国家にはあっさり捕まってたよね」
「あ、あれは沼田がいて、油断したんだ」
だといいんだけど。
「成瀬、あとで一戦付き合ってもらうぞ。闘技大会では完敗だったからな」
「あ、うん。バレた?」
あの時はお面を被って出場したんだけど、すでにバレているらしい。
「佐藤に聞いた」
「僕の情報って殆ど一吾から漏れてない?」
「私も佐藤から色々聞いたぞ。私とも一戦付き合え」
「……これは僕も一吾に一戦付き合ってもらうしかないな」
悪いとは言わない。でもちょっと一発殴らせてほしい。
話を戻そう。門をくぐった僕たちは、いよいよ敵の本拠地に侵入した。漂う魔力、禍々しい気配。この城の主人の気配が濃厚に感じられる。大魔王……邪竜の王に匹敵する力を持っていることは間違いない。
と、そんな時、後ろから冒険者の一人が走ってきた。相当焦っているようで、大汗を流している。
「勇者様ー!大変です!大変です!」
「どうしたんですか?」
一番後ろにいた僕が対応する。
「き、北の街に突然魔族が入り込んで来ました!」
「理由は!?」
これには驚いた。現在人間は大攻勢に出ている。攻め込まれる余地なんてないはずだ。
「国王の兵士が魔族を引き入れたとの情報があります!」
裏切り……!しかしなぜ?まさか大魔王と繋がっているのか?
この情報を聞いた勇者一行も混乱している。僕は手を一回叩いて注目を集めた。
「落ち着いて!早く対処すれば被害は抑えられる!」
今この場にいるのは、大魔王組と、魔王組の片割れ。向こうに魔王が出ることも考慮して、
「ケヴィン!クリスティーナ!頼めるかい?」
「おう!」
「任せてください!」
ここは勇者の子孫に託す。
「すぐに北の街に戻って欲しい。ケヴィンは冒険者を指揮して魔族の掃討、クリスティーナは侵入経路を塞いでくれ」
「了解です!」
「あとは?」
そこで二人はニヤリとした。僕もつられて笑う。彼らの先祖とも同じように悪い笑みを見せ合ったな。
「馬鹿な真似をした愚王に鉄槌を。城ごと破壊してもいい」
「りょーかい!」
「派手にいきますよー!イチジョウ!見ててくださいね?」
「あ、ああ」
一条くん若干引いてます。昔は猫を被って戦えないふりをしていたらしいので当選だ。
「だが走っても時間かかるぞ?」
「それは問題ないよ」
ちょうどその時、僕の前に魔法陣が光り、セレナが現れた。千年前の仲間で唯一存命していて、老いてなお魔法を極める、スーパーおばあちゃんである。
「人使いの荒いやつだねえ。こんな場所に呼びつけるなんて」
ケヴィンたちを送ると考えてから、実はセレナに向けて魔力を放ち続けていたのだ。魔力を察知したセレナがここに来るよう、仕向けておいた。
「頼むよ。僕が戦ってんのにセレナが隠居してんのも気にくわないし。ついでに二人を手伝ってきてよ」
「本音が漏れてるよ……まったく、仕方ないねえ。ケヴィン、クリスティーナ!行くよ!」
「じゃあミヅキ、こっちは任せとけ!」
ケヴィンとがっちり握手し、三人を見送った。
振り返ると、なぜか皆さんがぽかんとしている。
「どうしたの?」
「やっぱり伝説の勇者なんだなあ、と」
「やればできるんだな」
「初めて見たぞ。お前がそんなしっかりしてるところ」
「……僕をなんだと思ってるんだろうね?」
どうやら僕が指揮したのに驚いているらしい。普段の僕ってどんなイメージなんだろう。怖くて聞けない。
沼田と鈴木は黙っているのでどう思っているかは分からないが、どうせ戦闘狂とか言われるに決まっている。……泣いていい?
すこし無言になってしまった僕を気遣うように一条が声を出す。
「ま、まあ先へ進もう!」
「そうだね一条クン」
「怒ってるのか?」
「いや、悟ったよ……」
「成瀬も大変だな」
怒ってはいない。断じて怒ってはいないけれど、先頭は彼らに歩かせることにする。信頼してるんだ。
ーー
それから僕たちは一つの扉の前に立った。この先、大魔王いますよ?と言いたげな扉だ。分厚く、並みの力では開くことすら出来ない扉。
緊張した面持ちで一条が手をかける。
「ーーッ!」
その瞬間、僕が咄嗟に張った金陣には強烈な衝撃が伝わった。間一髪、全員無事だ。
「防がれてしまいましたか。勇者というのも中々やるようですね」
奥から出てきたのは全身黒の服に身を包んだ魔族。
「君が最後の魔王?」
「ええ、『虚飾』シャレイと申します。この部屋の先に大魔王様がおられますが……勿論ただで通すつもりはありません」
すぐに分かった。これは魔王組には荷が重すぎる。これまでの魔王より強い。下手に魔王組に被害を出すよりは、ここで僕が出た方がいい。
「魔王組はすぐに戻って他の補助に当たって欲しい。死にたくなければね」
「は、はい!」
少し戸惑っているようだったので、控えめに殺気を飛ばして言うことを聞かせた。十数人いた魔王組は、引き返していった。
「逃がしません」
「いや、逃げてもらうぜ!」
シャレイが手を動かすと、左右の壁が狭くなったが、沼田が壁を破壊した。それにしてもあのキャラ、いつまでも慣れない。
「やれやれ、逃げてしまいましたか」
シャレイは大して気にしてはいないようだ。彼らは大魔王を脅かす力は持たないし、シャレイにも及ばない。この場では影響のない存在とみなしたのだろう。
「……さて、この場は僕に任せて欲しい。一条、大山、清水、鈴木、沼田……先へ進んでくれ」
大魔王へ相性がいいのは、おそらく一条だ。万が一、僕がここで死ぬとして、一条たちが先に大魔王を倒せばこの戦争は勝つ。
一条以外を残すというのも考えられるが、クラスメイトを捨て駒の様に使うのは御免だ。最善なんてどうだっていい。
「成瀬……任せる!」
「待ってるぞ!」
「追いついてこいよ?」
一条たちは一瞬迷いを見せたが、すぐにシャレイの横を通っていった。
……あれ?死亡フラグだよね?これ。




