三つの影
最近怠けがちで執筆をさぼっていた御飾りです。
「これが神聖国家だ」
馬車の中で僕は二人に神聖国家の地図を見せた。
「まず正面から入国なんてしない」
「ハッ!やっぱりな!」
「歴史で学んだ時のイメージのままです!」
君たちの学んだ歴史で、僕はどんなヤツなんだろう。クリスティーナには今度じっくりイメージを聞かせてもらいたい。
「……問題はこの高い壁だ。神聖国家は中央教会がある都市を壁で囲んでいる」
そこで僕はケヴィンを見た。
「エルキュールの能力で乗り越える。出来る?」
「もちろんだ」
「都市に侵入したら次は中央教会だ。そこで勇者達の幽閉場所を調べる。これはクリスティーナね」
「はいっ」
「最後、脱出なんだけど」
「勇者救出はどうなんだよ」
「それは……なんとかなるでしょ」
「なんだか不安です」
「大丈夫。で、脱出は水路からね。この地図を見ると都市の地下には水路が二本通っている。こっちが川から水を引き入れる方、こっちが排水。排水の時間は決まってる。ある程度水を浄化する時間があるからね。その水が流れた直後に凍らせる」
「それで空の水路から逃げるってわけだな?」
「そう、排水の時間は深夜だから、それまでに勇者救出を済ませる必要がある」
「わかりました!」
僕たちは大まかな作戦を立てると、それぞれ準備を始めた。
ーー
神聖国家、城壁。暗くなるのを待って、僕たちは城壁に近づいた。見張りがいないのを確認して、ケヴィンがエルキュールを召喚する。
「よし、準備はいいか?」
「いいよ」
「はい!」
僕たちはの返事を合図に、ケヴィンはエルキュールを地面に突き立てた。三人が柄につかまると、エルキュールが巨大化する。僕たちは一瞬で城壁の上に飛び移っていた。
「このまま拠点となる場所を探そう」
頷きあった僕たちは夜の街に散った。
ーー
しばらくして、僕たちは都市の中心に近い宿の一室に集まっていた。
「では始めます」
クリスティーナは聖剣を召喚すると、目をつぶった。風が集まってくる。聖剣アロキは風の能力を持つ。離れた場所での会話も拾えるのだ。
「聞こえました。中央教会の地下です」
「ありがちだなぁ」
「で、どうすんだ?」
「もうここまで来たら、こっそり侵入して救出して終わりじゃないの?」
「作戦とかはないんですか?」
「いらなくない?」
「はぁぁ?おいおい大丈夫かよ」
「侵入、救出、脱出。これで終了」
「真面目に言ってんのか」
「まあ、もう少し真面目に言うと、神聖国家にはまだなにかある気がするから、早めに片づけたいんだよね。だから僕たちの入国がばれる前に教会に侵入しなきゃいけない」
「勘かよ……」
「こんな勘はよく当たるんだ」
「では行きましょう!」
こうして僕たちは宿を早々に立ち去り、中央教会に向かった。
ー
中央教会は予想通りの厳重な警備だった。僕たちは一人ずつこっそりと気絶させながら動いているので、あまり素早く移動していない。やっとのことで中に侵入したばかりだ。
「ここからは急いでいこうか。二人とも頑張ってついてきてね」
焦れてしまった僕はこう言って走り出した。警備が気付くか気づかないかのタイミングで峰打ちを食らわせ、奥へ進む。すぐに数人の警備が気絶し、僕は下へ続く階段を見つけた。
「お、これだね」
「はぁはぁ……ミヅキ、速すぎます」
「ついてくので精一杯だぜ」
「それで充分だと思うよ」
僕たちはそこで会話を止めた。なにか不穏な気配を察したからだ。はっきりと所在はつかめないが、近い。
「誰かな?」
「さあ、とりあえず進みましょう」
「そうだね」
その気配から意識をそらさないまま奥へ進む。地下は迷路のような造りになっていて、教会の者でないと容易に移動できないようになっている。が、クリスティーナの聖剣は風を操り正しい進路を導いた。
「この壁の向こうです。道に従うとまだまだかかりそうなので近道をしましょう」
「うし!いくぜ!」
「あ、ちょっと待って。一条たちには僕の素性は秘密にしといてね」
「そうだっだな。じゃ、今度こそ……エルキュール!」
瞬時に巨大化した聖剣は壁を粉砕した。勢いあまって一条たちの牢まで破壊したのはご愛敬だ。本人たちはそうではないようで驚いた顔をしたまま固まっている。一条に大山、清水、鈴木、柿崎、野村。全員無事そうで何よりだ。
「助けに来たよ、ケヴィンが」
「そう、俺が頑張った……なに言わせてんだよ」
「無事で何よりです!」
「ああ、クリスティーナ来てくれたのか。ケヴィンさんもありがとうございます」
「成瀬、お前も来たのか」
「まあついでにね。……さあ、早く出よう。ケヴィン、ここを斜め下にぶち抜いてくれる?」
「エルキュール!」
再び聖剣が巨大化し、床を破壊した。その下には太い水道が通っている。
「ここから出れる。走って!」
僕はみんなを急かした。あの不穏な気配が近づいていたからだ。しかし遅かった。最後に鈴木が水道に飛び降りる寸前に僕の前の壁が壊れた。
現れた人物を見て鈴木は絶句した。しばらく口をパクパクさせた後、彼女はこういった。
「沼田……くん?」
嘘だろ。僕はここで絶句した。沼田、あんなたくましくなかっただろ。僕たちのまえに現れた沼田は以前の細い身体ではなく引き締まった肉体を持っていた。鈴木よ、なんで分かった。
沼田は明らかに感動の再開を喜んでいる様子はなく、僕は悪い予感がした。
沼田も再登場させられましたし、そろそろ完結に向けて休まず書いていきたいです。




