番外 対決!
昨日はすみません。
ニーチェは言った。「深淵をのぞく時、深淵もまたこちらをのぞいているのだ」
僕は言った。「女子の着替えをのぞく時、女子もまたこちらを見ているのだ」
ー
「「「いってぇーっ!」」」
入学して一ヶ月、まだまだ春の陽気が続く体育後の教室にて、一吾、井上、高橋は悲鳴をあげていた。僕は言う。
「自業自得だろ」
彼らは無謀にも女子の着替えを覗こうとしたのだ。そしてバレた彼らは、厳しい制裁を食らっていた。もちろん、僕は参加していない。
「いや、佐藤がいけるって言うから」
「いや、アレじゃバレるでしょ」
女子更衣室の扉の上にある小窓から覗こうと、ぴょんぴょん跳ねていた彼らは、タイミングよく飛んで来た英和辞典の餌食になっていたのだ。
「くそーッ!次こそは、次こそはやってやる!」
「「おう!」
「やめなさい。」
反省が全く見られない彼らに、僕からも一発。
全く、覗きをするような奴らと一緒にいると、同類と見られかねない。勘弁してほしい。僕は常識派なのだ。
「痛え」
「どうせバレるんだからやめたら?」
「わかってねぇな、水月は」
「そうだな、男のロマンってのが全く」
「やれやれ」
これだからこいつは、とでも言う風に揃ってこちらを見てくる。
「男のロマンって言うのは顔に英和辞書を貰うことなのかい?」
「ちげぇよ!」
「覗きだよ、の、ぞ、き!!」
「あ、そう」
そこで教室の扉が開き、女子が入ってくる。
僕はその殺気立った様子を横目で見ながら一吾達の話を聞く。彼らは全く気づいていない。
「あ、そうだ、お前もやr…ブォッ!」
「お、おい佐と…ギャッ!」
「お、おまえらっ…ドブァッ!」
「やっぱりロマンなんじゃないの?」
僕は再び顔面に英和辞典を食らった彼らを見て言う。
なぜか僕の方にも飛んで来たのでキャッチした。急いで誤解を解く。
「待て、僕は違う」
「あ、ごめん」
辞典を投げた女子ーー森山、白沢、清水は納得したようで、構えていた広辞苑を降ろしてくれた。っておい、英和辞典の次は広辞苑かよ。
「あ、じゃあこいつらは好きにしていいから」
「あら、どうも」
彼らはずるずると引きずられていった。悲鳴なんて聞こえなかった。そう、聞こえなかったのだ。
ー
数日後、僕は教室で一吾と話していた。
「やっぱお前、剣道部入んねーの?」
「まあね、一吾こそ入部しなくていいの?」
「俺はもういいんだよ、高校ではバイトをしまくって金を稼ぐ!そして遊ぶ!」
高らかに宣言した一吾はキラリと目を光らせ、こちらを見てくる。
「と、言うわけで水月君、ボーリングに行かないかね?」
「展開早すぎない?」
「まあまあ、高橋と井上に誘われたんだよ。行こうぜ!」
「まあ、いいけど」
「よっしゃ!決まりだな!」
そして僕はボーリングに行くことになった。
ー
「久しぶりだな、ボーリングなんて」
ボーリング場に着き、準備を終えると、感慨深げに井上が呟いた。
取り敢えず席に座り、名前などを登録する。
「俺が最初にいく。手本にするんだな、ひよっこ共!」
あらかっこいい。
一吾は颯爽とボールを手に持った。丁度隣のレーンの人もボールを取りに来たようで、向かい合う形になる。そこでふと一吾は顔を上げた。向かいの人と目が合う。
「「あ?」」
二人は威嚇するように声を出した。相手を確認してからの威嚇が早すぎる。
「何でここにてめえが居るんだよ?」
「それはこっちの台詞だコラ」
僕は頭を抱えたくなる。なぜここに田中が居るのか?田中とは、中学の剣道部時代の因縁の相手で、何かとうちの学校にちょっかいをかけきていた。更に一吾は夏の総体で負けている。そして今年から同じ学校だ。そんな二人がかちあってこうならないわけがない。田中のいる方では清水が頭を抱えていた。
「俺は剣道部の打ち上げできてんだよ。不快だから消えろ」
「俺はあいつらと遊びに来た。消えるのはお前だコラ」
駄目だ。殴りあいを始めかねない。僕は仲裁に入る事にした。
「ちょっと落ち着いてくれ」
田中は何か言いたそうにしたが、僕に瞬殺されたことを思い出したのか、口を閉じた。
「せっかくだし、ボーリングで勝負をつけたら?」
これが一番いいはずだ。
「よし、良いだろう!勝負だ!」
「上等だ!」
―
結論から言うと、勝負は一吾の勝ちだ。
だがお世辞にもいい勝負とは言えなかった。何せ勝者のスコアが12なのだから。ちなみに田中は10だ。
ほぼガーターの勝負に、見ている僕達は驚き、呆れた。
「ざっこいな、お前ら」
そう笑っている井上はなんとスコア200だ。
「ボーリングなんて・・・」
僕と清水はそれぞれ落ち込む二人を慰めながら帰ることになった。




