新たな刀
「ねぇ……」
眠い、まだ夜だというのに誰かが僕を起こす声が聞こえる。
「ねぇ」
うるさいな、まだ夜でしょうが。
「ねぇ、成瀬」
だが僕の意思に反し、目は覚めてきた。声の輪郭がはっきりとして来て、それが誰の声なのかすぐにわかった。
「……まだ夜だよ、白沢」
僕は目を開け、白沢に苦言を呈する。
「何言ってんの、7時は朝でしょ」
「夜じゃないか」
呆れたように言ってくる白沢にそう返す。
「いいから起きて」
「あと五分」
僕はそう言って布団を被った。
五分なんて嘘だ。このまま寝てやる。
「……念力」
白沢は躊躇なく目覚まし時計を僕の腹にめりこませた。
「ぐはっ、この不良娘めぇ……!」
白沢はさらに花瓶を浮かべた。
「わかった、起きる!起きるからその浮かべてるのを置いてくれませんか?」
「あたしも準備があるからはやくしてよね」
「なんの?」
「は?闘技大会に決まってるじゃん」
ーッそういえば!僕は完全に目が覚めた
「ああ、急ごう」
「はやくしてよ」
それにしても、躊躇なく人の腹に目覚まし時計をぶつけてくるなんて、人として何か欠けてるんじゃないだろうか、あの子。
ー
「よく来たな、もうできてるぜ」
僕は準備を終えると、紅蓮亭に来ていた。
中に入ると、上機嫌で店主が出来上がった品を見せてきた。
「二つありますけど?」
「ああ、包丁はサービスだ」
机の上には刀の他に黒い包丁があった。
「わざわざありがとうございます」
「おめぇは気に入ったからな、まあこいつを鞘から抜いてみろ」
そう言って店主は刀を手渡してくる。
鍔のない、黒い拵えの刀だ。
鞘から抜くと、刀身まで黒かった。
「ほお…」
その美しい姿に思わず溜息が出る。
「はっはっは、気に入ったか?黒鋼竜の鱗を使ってあるからな、真っ黒だ。」
成る程ね、だから包丁も黒いのか。
「包丁なんて爪をまるまる使ってるんだぜ?」
「いいんですか?貴重な爪を使っちゃって」
「いいんだよ、おめぇが取ってきたんじゃねぇか」
「ありがとうございます」
「で、持った感じはどうだ?」
気になるようで、そんなことを聞いてきた。もちろん自信たっぷりの顔でだ。
「はい、しっくりきますね」
刀は不思議と手に馴染んだ。
まるで長年愛用したかのような感触だ。
「よし!持ってけ。そいつの名は『鴉』だ」
「ありがとうございます」
「闘技大会頑張れよ、俺も観に行くからな」
僕はそんな声を背中に受け、店を出た。




