最終調整
僕は一吾と荒野に来ていた。本戦は明日に迫っているので、最終調整の為、割りと本気でやり合うつもりだ。
「ウィークネス」
とはいえ、僕と一吾達クラスメイトの間にはかなりの実力差があるので、成瀬水月として戦う時にはウィークネスを使うことにした。まあ、ただの勇者でもこの世界の人たちに比べれば十分強いんだけどね。
「じゃあ、始めようか」
お互い、剣を抜いて向かい合う。
二人ともカルロスさんに教わった型だ。風が髪を揺らすのを合図に、僕達は同時に走り出した。
剣がぶつかり合い、火花を散らす。
僕は即座に剣を斜めにすると、滑った一吾の剣が僕に当たる前に一吾を蹴り飛ばした。
「ぐっ」
カルロスさんに教わった堅実な戦い方は本来の僕の戦い方はではないけど、闘技大会までの修行で大分馴染んでいる。
僕はのけぞった一吾をすかさず追撃する。
体制を立て直す一瞬の隙に、思いっきり剣を横に薙ぐ。一吾はなんとか受け止めたが、大きく後ろに下がった。
「ライトニング」
その間に魔法陣を展開し、魔法を放つ。
「光鏡!」
一吾はとっさに反射の魔法を使い、雷撃を跳ね返して来た。僕は手を振って金陣を展開し、それを防ぐ。
「中々やるね」
「舐めんな!、カルロスさんとの特訓の成果、見してやる!」
僕は剣を構え、一吾の突撃に備えた。
「うらぁ!」
一吾は大上段に構えた剣を振り下ろしてくる。僕はそれを剣を横にして片手を添え、真正面から受け止めた。
火花が散る。
今の僕と一吾の力は拮抗しているので、僕はその体制のまま動けない。
一吾は力を抜くと同時に後ろに飛んで距離をとった。
僕はまた魔法を放つ
「ゲール」
強風が一吾を吹き飛ばした。
だが一吾も吹き飛びながら魔法を放ってくる。
「シャイン・レイン!」
光の矢が僕に向かって降り注いだ。
金陣でそれを防ぐと、僕は一旦地面に手をついてから一吾に向かって走り出す。見ると一吾もこちらに向かっていた。
「フッ」
「せやぁ!」
「わっ」
僕は吹き飛ばされた。一吾が追撃してくる。それをギリギリで後ろに飛んで避ける。好機と見たのか、一吾は更に追って来た。僕は予想通りの展開に、口元に笑みが浮かびそうになるのを堪える。
「これで、決まりだ!」
そう言って一吾はよろけた僕に剣を振り下ろす。
「ついに、かっ……」
勝ちを確信したその顔を見て、僕は設置してあった魔法を発動した。
「ホール」
「だあああああぁぁぁぁ!」
一吾は虚しく穴の中は落ちていった。
「何回も同じ手にかかるよね……」
「クッソォォォ!」
一吾の叫びが荒野にこだました。
ー
「これで何回だよ」
「5回目くらいじゃない?」
一吾が落とし穴に落ちた回数だ。闘技大会までの間、一吾とは何度も模擬戦をやったけど、決着にホールを使うことがよくある。面白いようにかかるからだ。
「魔法の気配には注目、これ鉄則だよ?」
「そうは言っても水月の魔力操作緻密すぎて魔力が分かりづらいんだよ」
「そこはほら、ね?」
「ね?じゃねぇよ!」
僕レベルの魔力操作をしてする奴は少ないが、予選で見たイグナはできるだろう。
「大丈夫、明日はなんとかなるさ」
無責任に言ってみる。実際、予選一回戦は組み合わせが良ければ一回戦は通過できるだろう。
「他人事だな」
「まあね」
実際他人事だ。僕は明日が楽しみだ。そんなことしか考えてない。
「もう一回やる?」
「もちろん!」
僕達は日が暮れるまで模擬戦を繰り返した。




