ステーキ
短くてすみません。
僕はギルドに来ていた。
「解体の申し込みですか?」
「はい、黒鋼竜です」
「ッ!わかりました。すぐに向かわせます。」
ギルドには、討伐した魔物を有償で解体してくれるシステムがある。僕は王都の門の外に黒鋼竜の死体を残し、申し込みに来たのだ。一吾は黒鋼竜の死体の番をしてくれている。
「黒鋼竜ってのはどこだい?」
奥から出て来たのは数人の屈強なおっさん達だ。
「門の外です」
「急ぐぜ!」
走り出したおっさん達は意外にも早く、僕も小走りになって追いかけた。
ー
「「おお……」」
おっさん達は、黒鋼竜を目の前にし、目をキラキラさせながら感嘆の声をあげた。
「任せな!」
彼らははっとすると、すぐに作業に取り掛かった。
「なあ水月、大丈夫なのか?あのおっさん達。ニヤニヤしてるぞ」
「……」
それについてはなにも言えない。大物を解体するのがよほど楽しいのか、おっさん達は無言だ。
作業はみるみるうちに進んでいく。肉は綺麗に切り分けられ、角や牙、爪、鱗が剥ぎ取られていた。
「肉はいるかい?」
「たべれるんですか?」
「もちろん、絶品だぜ!」
「お願いします!」
是非とも黒鋼竜の肉を食べてみたい。
「はっはっは!任せなぁ!」
何にして食べようか、ステーキ?串焼き?
そんなことを考えているうちに、おっさん達の作業は終わっていた。
「お代は余った鱗と肉でいいぜ!」
彼らは颯爽と帰っていった。満足感と共に。
ー
「早えな」
「ええ、これが鱗です。他にも、牙など」
僕達は紅蓮亭に素材を持って来ていた。これで刀を打ってもらえる。
「ありがとうな!明後日になったらまた来い。できてると思うぜ」
「こちらこそ、ありがとうございます」
僕達は紅蓮亭を後にした。
ー
家に帰り、黒鋼竜の肉を取り出す。
「なに、それ?」
厨房に持っていくと、森山が覗き込んできた。
「黒鋼竜の肉だよ。絶品だというから持って来た」
「討伐したの!?」
「まあね」
僕は森山と話しながら料理する。
肉を分厚く切り、鉄板にのせる。ジュッという小気味良い音がして、香ばしい香りが漂い始めた。
「ステーキ?」
「うん、肉は結構な量があるから取り敢えず今日はステーキにしようと思って」
「おいしそう」
確かに、ステーキからはいい匂いがする。
僕はレアくらいの焼き加減にすると、リビングに持っていった。
「うっひょぉ」
余りのいい香りに一吾が声を出す。
「早く食べようぜ」
「まあまあ、急がない急がない」
「ステーキ?」
匂いにつられたのか、白沢も姿をあらわす。
「そうだよ」
「食べる」
即答だ。
「「いただきます」」
みんなは食べ始めた。
僕も黒鋼竜の肉を口に運ぶ。
おお!鱗の堅さに反し、肉はとても柔らかい。油が程よく乗り、美味しい。
「うめぇぇ!」
「おいしい」
「おいしい」
同居人達からの評判も中々だ。
明日はハンバーグにしてみようか