白獅子
遂に、闘技大会の日がやって来た。
今日は一般参加者の予選が行われる。そこで勝ち抜いた者だけが決勝トーナメンに進めるのだ。勇者や招待選手はトーナメントから参加だ。と言うわけで今日はスイゲツの出番だ。僕は狐の面をつけ、闘技場に向かう。
闘技場に着くと、既に何人もの参加者が受付に行列を
作っていた。僕もその後ろに並び、順番を待った。
前に並んでいた銀髪のイケメンが話しかけてくる。
「おや、君も参加者かい?」
「ええ、まあ」
強いな、一目で分かる。このイケメンは強い。そして爽やかだ。
「ところでなんだい?そのお面は?」
まあ気になるよね、このお面。
「これはちょっと事情が」
「ごめんごめん、余計な詮索はやめよう。僕はエヴァン、名前だけならいいだろう?」
そう言ってエヴァンは手を差し出してくる。
「ええ、スイゲツです。よろしく」
僕もその手を握り返しておいた。
その様子を見て、他の参加者がざわめいているのが聞こえた。
「おい、ありゃ上級のエヴァンじゃねぇか」
「なんだと?白獅子か?」
「じゃあ話してるやつは誰だ?」
「知らん」
あー、有名人だったのか。白獅子とか、かっこいいな
そう思ってエヴァンを見ると、
「そんな大したものじゃないよ、スイゲツも敬語なんて使わなくていいからね」
と言った。性格もイケメンか。ファンクラブとかあるんだろうなー。
「じゃあ、遠慮なく。エヴァンはなんでこの大会に参加するの?」
気になっていたことを質問してみた。
この大会は優勝すると賞金とかが出るのでそれを目当てに出場する者も多いと聞く。このイケメンはどうなんだろう。
「うーん。母さんが病気だから、薬代を稼ぎたくてね。スイゲツは?」
「僕はただの腕試しだよ」
言ってて恥ずかしくなるな……エヴァン、立派過ぎだろ
「それにしても上級の稼ぎで買えない薬があるとは思えないけど」
「そうなんだけど、中々母さんの病気は重くてね。金貨100枚必要なんだ」
金貨100枚、日本円で約一億だ。
「どんな薬?」
「パナケアっていう薬なんだけど、賢者様しか作れないんだ」
成る程ね…流通が少ない上に需要はまあまああるからその値段か…僕なら払えるけど、どうなんだろう
「大丈夫だよ、この件に手助けできる人なんてそういないと思うし」
僕が考え込んでいると、エヴァンが言ってくる。
ますますいい奴だな。
ー
長らく並んだが、ようやく受付が僕の番になった。エヴァンは先に受付を済ませ、控え室に向かっている。
「お名前は?」
「スイゲツです」
「はい、少々お待ちください」
そう言って受付は名簿を調べている。
「確認できました。スイゲツさん、これをどうぞ」
「ありがとうございます」
「これは連絡があるまで開けないでくださいね?」
「わかりました」
受付に何やら封筒を渡され、僕は控え室に向かった。
「やあ、無事終わったかい?」
控え室に行くと、エヴァンが待っていた。中にはエヴァン以外にも参加者がいる。だが僕のみた感じではエヴァンが一番強いだろう。勿論僕を除いて、だけど。
そのままエヴァンと色々話していると、アナウンスが聞こえた。
『では、参加者の方々の確認が取れたので、これから説明をします。
まず、本日の試合形式ですが、乱戦になります。
みなさんをA、B、C、Dのブロックに分け、そこからそれぞれ一人、勝ち残った方が闘技大会決勝トーナメントに出場できます。
基本的に戦闘は一人を残し、戦闘不能になるまで行います。殺害は無しです。
降参の場合は、手を挙げて壁際によってください。
そうなった方への攻撃は失格とします。
戦闘で負った怪我については、こちらでできる限り回復します。部分欠損などは治らない場合もありますので、ご容赦ください。
それでは封筒を開けてください。そこにブロックが書かれた紙が入っています。それが貴方のブロックとなります。
説明は以上です。』
乱戦か…まあなんでもいいや
「スイゲツ、どのブロックだった?」
エヴァンに促され封筒を開けると、「C」と書かれた紙が出てきた。
「被らなくてよかったー。僕はBブロックだったよ。応援してるね!」
「よかった、僕も応援してるよ」
『それでは、Aブロックの試合から開始しますのでAブロックの選手は闘技場に集まってください。』
闘技大会がいよいよ始まる。




