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お疲れ様


僕達は洞窟の目の前まで来ている。僕が倒しておいたので魔物はここまでに出てこなかった。


「ここかぁ」

「なんか変な気配するから気をつけてね」


僕達は中へと進んだ。


「なんで魔物が一匹もいないんだろう?」

「さっき水月が全滅させたんじゃねぇのか?」

「恐らくはね。だけどここはゴブリンのコロニーのはずだ。なのに一匹もいないのはおかしくない?」

「そう言われると確かに…」

「取り敢えず進んでみよう。ここからじゃはっきりと気配が掴めない。」

「ゴブリンは全滅させたからもういいんじゃない?」

「調査依頼なんだし、調査しないと。僕の予想では地竜の時と同じように奥になんかいると思うんだけど」


そうでなければゴブリンが全員外にいたことが説明できない。


「また魔族か?」

「それはないかな。あの時より気配が弱いし」

「じゃあなんなんだろうな」

「気配がする。気をつけて!」


急激に気配が近づいて来た。周囲の壁が壊れ、中から男が何人も出てきた。周りを囲まれる。


「身ぐるみ全部置いてきな!」

「成る程、盗賊か」


今すぐに全員殺してもいいんだけど、一吾達の経験のために様子を見るか?


「お?上玉が二人もいるじゃねぇか!そいつら置いてくんなら男は許してやるよ!」

「なんだと!ふざけんなよ!」


一吾が言い返す。


「おいおい、この人数に囲まれてそんなことが言えんのかよ」


実際は言えるだろう。勇者と一般の人間では張り合えない。


「おい、やるぞ!」

「本当にいいの?」

「なんだよ、水月。ビビってんのか?」


この世界で生きて行く上で、一吾達に尋ねたいのは


「違うよ、君達に人を殺す覚悟があるのか聞いたんだ」


そう、これまで勇者達は魔物しか殺していない。

魔物を殺すことと人間を殺すことは別物だろう。

だがこの世界ではこんな場面ざらにある。僕は昔、殺すという選択をしたが、彼らはどうする?


「やるよ」

「あたしも」

「わたしも」

「成る程ね…」

「いつかはやんなきゃいけねぇ気がするんだよ。それに魔族も人間も変わんねぇだろ?」

「殺さなくてもいい時は殺さないけど」


それが彼らの選択だそうだ。

僕はちょっと笑って言う。


「そっか、ならいいんだ。でも、殺す気でかかってくる相手と戦うのはなんか、まあ、違うよ?」


うまく説明できない。


「おいおい!相談は終わったのか?」

「終わったかみたいだよ?自分の心との相談がね」

「どうする?女を置いて逃げるか、全員死ぬか」

「僕は殺しにかかってくる相手を殺さない程寛容じゃない。死にたいならかかってきなよ」

「おい!やっちまえ!」


五十名くらいの盗賊達が一斉に襲いかかってくる。

よろしい、皆殺しだ。


「殺気には慣れてんだよ!お前らの比じゃねぇ奴の殺気あびてんだよこっちは!」


一吾も応戦する。なんか言ってるけどなんのことだろうね。


「じゃ、僕も行こうかな?白沢と森山も無理はしないように」


僕は二人に注意した。二人は真面目な顔で頷いている。僕はその様子にひとまず安心すると紅雪を呼び出した。


「紅雪」


相変わらずの禍々しさだ。空間が歪む。今回は周りに一吾達がいるので「氷雪」は控えめにしている。それでも床に霜が降りいるけどね…まったく、制御し辛い聖剣だな。

さて、戦況は?


一吾はよく動いている。だが一対多には慣れていないようで隙があるな。


「くそっ」

「もらったぁ!」


一吾が盗賊の一人に背後を取られた。

僕は魔銃で眉間を撃ち抜く。盗賊は絶命した。


「ありがとな!」


一吾は剣を構えなおし、前の敵を見据えた。

うん、問題なし。


「よそ見してんじゃねぇ!」

「くそがぁ!」


二人、盗賊が斬り掛かってくる。僕はよそ見をしたままそれを斬り捨てた。


「化け物か、お前!」

「ただの学生さ」


自分で言ってて思う。説得力が微塵もない。

……白沢はまあ大丈夫かなぁ

白沢は洞窟の壁を背にして戦っている。背後が隙になり辛いのでいい策だろう。低威力で発動の速い魔法で牽制し、高威力の魔法で倒している。

魔法陣の並立展開か、羨ましい。僕は剣士タイプだが、白沢はクラスでも特に魔法が得意だったので出来るのだろう。


「ライトニング」

「ギャァァァ!」


感電死した盗賊達が足元に転がっている。白沢は心配なさそうだ。

えーと、森山は……

こちらも反対側の壁を背にしていた。森山は盗賊を結界で近づけていない。僕の金色防御魔法陣とは別物で、発動が少し遅いが、十分だろう。


「シャドウ・バインド!」


盗賊達の影が蠢き、盗賊を捕らえた。森山はできるだけ殺したくはないようだ。

それでもいい。


「雪花ーー百花繚乱」


銀色の閃光が疾り、一瞬の静寂の後、盗賊達の首が落ちた。噴き出した血が凍り、雪のように舞った。


それを見届けると僕は言う。


「お疲れ様。今日は帰って早く寝よう。」


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