斬気
「ふっ」
血振りをすると、これまた紅い雪が舞った。
「お前、やっぱり勝てる気しねぇわ」
「そりゃあ、経験の差というのがあるからね」
「白沢も森山も大丈夫か?」
「大丈夫」
「へいきへいき」
「じゃあ、帰ろうか。ギルドに報告しなくちゃね」
ー
「あ、お疲れ様です。依頼の報告ですか?」
「はい」
「では、別室へどうぞ」
僕達は別室へ案内された。
コンコンコン
「入れ」
ドアをノックすると、中から渋い男の声が聞こえた。
「「失礼します」」
部屋に入ると、そこには壮年の男がいた。気迫に溢れ、人の上に立つ器であることがわかる。一吾達には少し息苦しいだ程だ。
「おう、俺がファーナシアのギルドマスターのロバートだ」
「ギルドマスター……」
一吾が驚くのも無理はない。ギルドマスターとは、ファーナシアにある全ギルドの長だ。指名してきたとは聞いていたけど直接説明することになるとはね。
「今回の報告をさせていただいても?」
「頼んだぞ」
緊張しているらしい一吾達に変わって僕が説明することになった。
「今回の依頼は、『ゴブリンの増加に関する調査』です。実際に森の方へ行くと、確かにゴブリンが増加しているようでした。それを討伐しながら進むと、洞窟がありました。僕達はおそらくゴブリンのコロニーだと推測し、中に入って調査しようと思ったところ盗賊が出てきたのです」
「盗賊か」
「はい、なのでゴブリン増加の原因は盗賊が洞窟からゴブリンを追い出したことかと思われます。普段は洞窟の中にいた個体も外に出ていたのではないかと」
「理解したぜ、ゴブリン討伐と盗賊討伐の分も上乗せして報酬を払おう。」
「ありがとうございます。」
「で、盗賊はどんな奴だった?」
「わかりませんが、これを持っていました。」
僕は黒い石のようなものでできた人形を渡す。
「こいつぁ近頃ファーナシア周辺で暴れていやがった奴らだな……確か、『黒角の猛牛』だったか」
「申し訳有りませんが死体は残っていません」
紅雪の能力で、氷片しか残らなかった。
「まあいい。よく倒せたな。お前か?」
「いえ、みんなでですよ」
「俺が見たとこ、お前が圧倒的に強えな。俺の気迫にも怯んでねぇ」
「気のせいですよ」
「そういうことにしといてやる。ところでな、お前らは調査依頼だけでなく、盗賊、それもそこそこ名の売れた奴らを討伐した訳だ。特別にランクを上げてやろう。お前らは今日から中級冒険者だ」
「え?ありがとうございます!」
「よし、ご苦労だった。帰っていいぞ」
「失礼します」
一吾達と共に退室しようとすると、腕を掴まれた。
「お前は残れ」
「え?何故ですか?」
「じゃーなー!先に帰ってるぞ。鍵は開けといてやる」
「ご飯は作っといてあげるわよ」
薄情な奴らだ。そんなにあっさり帰んなくてもいいじゃないか。っていうか僕の家なんだけど?
「いい仲間を持ったな」
「どこがです⁉︎」
「……本題に入るぞ?」
「はい」
「お前、何もんだ?」
「ただの冒険者です」
「お前らが異世界から召喚された勇者ってことはわかってんだ」
ああ、そう。
「俺もギルドマスターだからな。情報は入ってくる。勇者が召喚されたことは闘技大会まで内密らしいが、噂はそこかしこにある。それこそギルドマスターじゃなくても知ってるくらいにな」
ギルドマスター関係ないじゃないか
「バレちゃあ仕方ありませんね。僕は普通の勇者です」
「嘘だろ。勇者は召喚されて日が経っていねぇからそこまで強くねぇ。イチジョウとかいう奴も冒険者登録してるみてぇだが、まだまだだな、ありゃ」
「それはないですよ。一条は僕達の中で一番強いんですよ?そもそも勇者として召喚された僕達は普通の人間より身体能力などは上がってるはずなので強いですよ」
「そんなの身体強化の魔法を使えば追いつけるだろうが。それに、イチジョウがお前より強い?馬鹿言うな、俺でもお前に勝てるかわかんねぇよ。その強さはなんなんだ?」
「溢れんばかりのの才能で急激に強くなった?」
「なんで疑問系なんだよ!」
どう説明しよう。さすがにギルドマスターの目は誤魔化せなかったみたいだ。きっと現役の時は相当強かったのだろう。かつての僕の仲間に迫る迫力を備えている。考え込んでいると、ロバートさんが殺気にも似た威圧を放ってくる。
僕は無意識のうちに応戦していた。
「うおっ、なんだ」
ロバートさん服の襟の部分が切れた。
やってしまったぁ
「おい、こりゃあ斬気か?」
なぜそれを知っている?




