気ままな一日。
『エルシュ?ここでなにしてるの?』
『報告、大したことはありません。お子様の様子を見ていただけです。』
『ぶっ、本人の前でそんなこと言っていないでしょうね!?』
微睡む意識の中声が聞こえる。
『訂正、言い方を間違えました、おこさま(笑)でしたね。』
『私以外が貶すとイラっとするのはなぜかしらね?』
『提案、精神鑑定致しますか?』
『よし、イラっとするのは私の問題じゃなくてエルシュの対応にあると見たわ!』
『軌道修正、で、今の時刻はAM6:34になりますが、主様のご用は?』
『......ちょっと、無理してないか様子を見に来ただけよ、すぐ戻るわ。』
『賛成、こちらに意識を持ってきていると向こうで何かあったときに大変ですから。』
『あ、そうだ、コンクレント城とギルド本部に連絡とれない?』
『検討、善処しますが、何分フルエンクの走査型探知結界が厄介です。』
何の話をしているのだろうか.......
『ー門。ーー放置、ーーですか。』
『ーーーーーんなわけないじゃない。』
『ーー的。ーーー。』
『ーーーって感じなんだけど』
いいや、今の私はまともな思考ができなさそうだから聞き流すことにする。
ただ、二人の声が真剣で、何かを心配していることだけは分かった。
『アン......もうちょっと待ってね。』
近くにシュレイさんの気配を感じる。
培養槽に手をついている気がする。
その手が放れいていく。
少し寂しさを感じた。
もう少し、ここに......
でも、その思いは届かない。
『目下の問題が片付いたら、旅に出ましょう?実は私これでも案内できるのよ。』
『訂正提案。1000年前の記憶で旅の案内をするのですか?地雷臭がするので私特製ガイドマップを使いませんか?』
『バカにしてぇ......エルシュは相変わらずね!もう!』
『光栄。話は変わりますが、宝物庫の整理をしてくれましたか?』
『うっ、』
『忠告。散らかしたら片付けるのは領域持ちの常識ですよ。』
『わ、わかったわよ!今やればいいんでしょ?やれば!』
『疑惑。そういってまともにやったことがないので監視しにいきます。』
言い争いをしながら離れていく二人。
感じられる距離に何もいなくなり、また意識が沈んでいく。
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目を醒ました私の状況はやはり昨日起きたときと何一つ変わっていませんでした。
培養槽の液体の中に浮遊する私。
培養槽がライトアップされているため、私からはここの部屋全体が見渡せない。
私が視認できる範囲は、このカプセルから5mくらいの範囲だ。
カプセルから伸びるケーブル。
どう見てもパソコンのような機材。
それが3つ、いや、見える範囲にはそれくらいってことだ。
床は真っ白ですが、5m先は真っ暗で何も見えません。
そんな周りでただ一人、姿勢正しく椅子に腰掛け、上下左右に開くガラケーをいじっているのはこの領域の管理者で、領域魔法【セント・エルシュ】そのものだそうです。
「問。このでばいす?は私でも利用可能なのですか?」
ガラケーを上に向けたり、はたまたぐるぐる回したりしていた、エルシュさんは不思議な顔をしつつ聞いてきました。
私は両膝を抱えたまま、培養槽の中を非常にゆっくりな速度で横に回転していましたが、答えるべく停止します。
「そうですよ、私限定です......しかし、シュレイさんは私と今は1つ......もしかしたら」
「好奇心。是非とも私に使い方を教えてください。」
椅子から立ち上がり、ピシッと伸びた身体から頭をさげられ少し狼狽したが、そんな大それた事を教える訳じゃなかったことに思い至った。
「それで、その、とりあえず今の私にそれを向けてみて、きっと使えると思う。」
私はそういいました。因みに声を伝えられるようになったのは、身体が液体に馴染んだのか、はたまた、エルシュさんが液体に何か淹れたのか私にはわかりませんが、ジェスチャーよりはいいかなと思いました。
ドキドキしているエルシュさんを始めてみた気がします。
クールだけどこんな一面もあるんですね。
「そ、それでは、こうですか?」
おっかなビックリのエルシュさんだけど、手に持つケータイ擬き『リーダ』を私に向けて、何も反応がないことから、表情が即座に無表情に戻りました。
ドキドキして目が輝いていそうな顔から一変、......ゴミを見る目に。
表情の0地点突破してますよエルシュさん!!
やはり、シュレイさんのスキルなだけはある。
「幻滅。動きませんでした......ゴミですね。」
いや!それ私のだから!?捨てようとしないでください。
椅子の上に器用に膝を抱えて座る緑髪のロングヘアーさんが私の事をジト目で見てきますので、なんとかできることを考え付きました。
そういえば、私、神様に追加して貰ったアプリがあるんでしたっけ?
あれをするには......
私は膝を抱えたままの状態から直立します。
ただし、上下反対ですけど。
なんでかって......もう、上下の感覚がないんですよ!!重力?なにそれ。
なんかこの中ヤバイ気がしてきたんですけど、馴染める私に戦慄ですよ。
「エルシュさん、ちょっと質問があるんで答えてくださいね。」
「謎。.....了承しました。」
ジト目のまま頷くエルシュさん。
「じゃあ、一個目ですけど、ここって【セント・エルシュ】の中ってことはわかるんですけど、【セント・エルシュ】は『どこ』にあるんですか?」
「回答。現在地は【空飛ぶ島】新・研究室(仮)です。【空飛ぶ島】自体は、【小さな庭園】から上空10,000mに浮遊中です。」
え、ここ『空』なの?
やばいですね、手が震えてきました。
ま、まぁ、第一条件はクリアです。
私の領域内であれば問題ありません。
結構高いところにいますけど、制空権とか聞いたこと無いですし、問題ないかと。
「では次ですけど、ちょっと訳あって私自身もMPや魔核が極端に少ないですが、これ、ものっスゴい消費しますので魔力関連は大丈夫そうですか?。」
「報告。そこら辺はスキルにより何の問題もありません。」
そ、そうですよね。
気を取り直して大事な3つ目。
「エルシュさん.....領域内での活動はエルシュさんがある程度権限を持っているんですよね?」
「混乱。そうですが......?」
「なら、行けますね.....たぶん。」
どのくらいの権限か分からないけど、きっと大丈夫だろう。
エルシュさんは何をするのか不思議な顔をしていました。
そう、今からためすことは、私が神様に貰った力のひとつ、創造と想像の権能の縮小版です。
いや、簡単に言うと瞬間通販ですね。
しかも、アプリに乗っているカタログの中ならば、MP、または魔核をお金に換算して具現できるみたいです。
実は私、一回も使ったことないんですよね......だって研究棟とか最低MP900とかですよ?当時の私でも払えませんよ
はたして、エルシュさんは使うことが......できるのでしょうか。




