勘違いも仕方ない。
目の前に迫る真紅の光線。
その場を飛び退き、光線の着弾地点が真っ赤になった跡、膨れ上がり爆発を起こしていた。
命からがらに逃げ回る私は、かれこれもう15分。
地面に潜ってかわす手段を用いていたけど、通用したのは始めだけで、次第に潜る隙すら奪われてしまった。
悪魔さんから、放たれる光線は必ず、赤黒い捻れた角の間の高速で乱回転する魔力の塊から打ち出される。
普通、視線移動とか、魔法着弾予測とか、使ってかわしたり色々ありそうなものですが、コレは次元が違うと思います。
まさか悪魔系の人、皆がこんなの撃ってくるのでしょうか......
私が【霧衣】を使って姿を霧に溶かし、後ろから奇襲を仕掛けたところ、悪魔さんは振り向きもせずに、角の間から光線を撃ってきたのです。私に直撃コースだった攻撃は【霧衣】で減衰された筈ですが、意図も容易く私を吹き飛ばしてしまいました。
もし、【霧衣】がなければ腕一本くらいは宙に舞っていそうな威力でした。
ミストレニア様に貰ったスキルが綺麗に吹き飛ばされ、再展開はすぐにできそうもないみたいで、私の選択肢が狭まっていきます。
それに、試験と言うより命のやり取りを彷彿させる怒濤の攻撃でしたし、ビーム連射・薙ぎ払い・屈折ビーム・収束砲、基本的な攻撃方法はこの4つですよ?正直よけれている私はすごいのではないかと感じています。
ただ、悪魔さんは始まってから、あの位置を動いていませんけどね?
......ぐぬぬぬぬ。
それにもう、MPが20を切ります。
なんとか一泡吹かせたいですね......よし、行きましょうか。
「ほら、お嬢ちゃんもう限界なんじゃない?」
「っ、加速、加速、加速うううう......抜けた!!!」
再び迫り来る光線を、前に叫びながら走ることでカーブする前に通り過ぎます、これぞ、変化球対策!!
いや、まさか、通用するとは......さすが、人間を止めた私!!
魔物ですが、なにか?
この一瞬の隙をついて、驚いている悪魔さんに接近しました。
悪魔さんの表情に焦りが見えました。
私は記憶の模範をします。
そう、私の大切な家族、知りうる中で一番強い人、刹那さんの接近格闘術を実行しました。
本来なら、一回見ただけで真似出来るものではない筈なのに、私はこの立ち回り、腕の振り、力の入れ具合をすべて知っていました。
まるで、昔から教わっていたような、そんな感じがしました。
小さな私から振るわれる右手は確実に悪魔さんの胸に狙いを定めていました。
この軌道、胸を貫くのでは?と頭をよぎりましたが、抵抗なくすんなりと打ち出せる私に驚きです。
悪魔さんが手を下げてガードをしようとしましたが、私は反対の手を振るい受け流すように悪魔さんの腕の軌道を変更しました。
そしてーーー。
「逝け!」
「っ、あ」
ブシャッーーーー。
飛び散る液体。
濡れる胸元。
顔面蒼白な悪魔さんの顔。
打ちだされる私の右手が悪魔さんの豊満な胸に触れ、体を貫く。
そのイメージが頭をめぐりました。
が、
「ぐ、ゴフッ。」
私の右手は悪魔さんの右胸に触れるだけで、口内を蹂躙する青い液体を咳き込むように吐き出しながら、視線を下に向けました。
私の慎ましい胸を貫く角と同色の『尻尾』があったのです。
まさか太ももに巻かれていたのが尻尾だったなんて、気づきませんで、した。
「ぁ、う。」
尻尾を思いきり引き抜かれ、その場に倒れる私に、悪魔さんは大声をあげてコーラルさんを呼んでいました。
「まずいわ!!お願い、コーラル!いそいで。」
「あ、貴女は何をしてるんですか!?ー祈りをここに、癒しをー【ヒール】」
私の体を黄金色の魔力が包み込んでいきます。
いえ、これは、
「神.....力?」
そういって意識を失いました。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「どうしようかしら、どうしらいいのかしら。」
「落ち着いてください、大体どうしてこうなったんですか?さっきまでは手加減できていたじゃないですか」
貴女なりには、という私の幼馴染みが魔力によく似た天使だけが持つ回復の光力を、黄色い花を乗せた幼女に注ぎ込んでいた。
「さっきの一撃の動作はなんか違うのよ、今までの一杯一杯な状態じゃなくて、明らかに冷静な一撃で......殺られると思って、つい。」
「相手を侮るからそうなるんですよ。ですが、私も見ていて感じる所がありましたね。まったく殺気が宿らない攻撃というのはこの世界に現界してから始めて見ました。確かに恐ろしく感じます。」
どうやら、コーラルも感じ取れたようだ。そう、私や天使である彼は感情や殺気に敏感だ。
向けられる視線の意味も簡単に理解できるし、殺気ならば方角と個数すら簡単に割り出すことが出来る。
戦闘において、攻撃には少なくとも感情が乗るものだろう。
諦めを乗せたもの、おおきな殺気を乗せたもの、
緊張を乗せたものなど様々だ。
しかし、感情が乗っていない攻撃などあるものか、
相手を攻撃するということは他者を傷つけるということ。
例え狂人でもなにかしら感情を宿すし、一流の暗殺者でも、鋭利な殺気を意図的に消そうとしても、感情を感じ取れる悪魔や天使にとっては隠すことはできない。
それに、隠そうとするということは、それを意識することであり、余計隠せていないと多種族の連中は気づいていないらしい。
だが、さっき少女からの一撃には何もなかった。
何も無かったのに、行動を起こさなければ私は深手を負っていた筈だ。
まぁ、死ぬことはなかったけど。
でも、だからこそ、恐怖を与える存在であれと先祖に言われてきたが、まさか自分が恐怖を感じるなんて.....
それも、まだ生まれたばかりの子供相手に。
「コーラル、お嬢ちゃんて、あなた達が探していた『魔性の森』の?」
「.....ええ、彼女は嘘をついていませんでしたし、間違えないかと。」
コーラルは回復をさせながら言った。
お嬢ちゃんの顔色も良くなってきたように見える。
ほっとした私は重要なことを訪ねた。
「コーラル......気づかなかったの?始めてあったときに。」
私の問いかけにコーラルは不思議そうな顔をしていた。
「いえ、聞いた話だと140cmくらいの身長だと言われていましたので、あと、魔力が低過ぎたので似た精霊だとしか。」
面目もありません。申し訳なさそうに言った。
「あちゃぁ、やっぱりそうだったのね......ミャオさんがガチでかわされたと言ったから、一発目は結構本気だったんだけど......」
私は、安らかな表情になった幼女を見つめる。
コロコロ感情が変わって可愛いわねこの子......この子がいれば感情も困らないわね......でも、それより先に、謝らないといけないわね。
ほっと息をつく私。
すると、隣で回復をさせていたコーラルの力が幼女からの放電で弾かれた。
「うっ、なん。」
「なにが!?」
二人揃って目の前の放電を続ける幼女に視線を送る。
すると、バチバチと放電したまま幼女が目を開き立ち上がった。
「ー放。」
何かを言った気がするが、放電の音でよく聞こえない。
しかし、変化はすぐに訪れた。
目の前の幼女が、『少女』になったのだ。
私はこの現象を見たことがないが、コーラルへと視線を向けると。
コーラルは驚いた顔をしていた。
「植物魔法【制限】......なんで、精霊種が!?」
突然大声をあげるコーラルに視線を向けず聞き返す。
視線を向けないのは、目の前の少女が剣呑な雰囲気を宿していたからだ。
「コーラル、精霊種がどうしたのかしら。」
「リリ、言うけど、精霊種は【制限】は使わない筈なんです。なぜなら無駄に魔力を消費しないため必要がないからです。ですが、もしーーー。」
私は、目の前で自身の身体を触って確かめたりしている少女から視線を外せないでいた。
少女の片眼は6色の花弁を宿し、頭の上の花も同じく6色に染まってた。
私はごくりと息を呑む。
そんな私にコーラルの声が聞こえる。
「魔精霊の上位種なら、偽ることも可能。」
魔精霊......通称、魔精。
魔に堕ちた精霊種・闇から作り出される魔獣を統べる上位存在。
感情を持ち喋るが、殺戮や暴虐はやめることはない。
そんな存在が目の前に......
警戒する私とコーラルに魔精は翠眼を光らせ言い放つ。
「言いたいことはお互いあるでしょうけど、とりあえず、一回殴らせて。」
ものすごい殺気が込められた一言だった。
私は思った。
「人格転移?」




