目覚め
「うわ!ちょっと!?」
「レンくん?どこぉ~。」
「真っ白で場所が分からん!皆の者動くこと無かれ。」
「チユ、俺は隣にいる!みんな動くなよ!霧が抜けるまで待つんだ、この速度ならきっと数秒だ。」
天候は先程まで快晴だったのに目の前から物凄い速度で迫る霧に辺り一帯呑み込まれた。
こんな場所に霧が発生するなんて聞いたことがないと4人は思った。
4人の目的はここより北にあるサーセルブ大陸有数の植物精霊園の一つを目指していた。
理由は4人パーティーの中にいる魔法使いが精霊魔法の適正スキルを手にいれたからだ。
さっそく、精霊に会いに行くために衛星都市を離れここまで来たが目的の精霊園まで少しと言うところで精霊園から急速に迫る霧にのまれ、周りは真っ白に覆われて何も見えなくなってしまった。
レンと呼ばれた青年はこのパーティーのリーダーで精霊の中でも数が多い植物精霊なら逢える確率も段違いだと踏んでいたが、衛星都市のギルドで騒がれていることが頭から離れなかった。
「精霊からの襲撃かもしれない!周りに気を配るんだ。」
「レン......くん?」
「うっあ......と、チユか脅かすなよ。」
レンは自分のマントの先端を握られる感覚にドキッとしたが知っている声が聞こえ安心した。でも、警戒は続ける。
姿が見えないほど霧が濃いため、マントを握るチユの姿が見えない。
少し離れたところから声が聞こえた。
その方向からパーティーメンバーの一人である時ヶ織出身の侍であることがわかった。
彼は宣言通りその場を動かなかったようだ。
「しかし、真であるのか?その精霊達が人族を襲う......と。」
「実際に被害に在っている純人族もいるんだ。警戒はするべきだと思う。」
「某には、その空中都市での被害は偽りのような気がしてならんが......」
「私は、コンクレントが戦争を仕掛けてフルエンクが返り討ちにしちゃって氷付けの人の住めない街が出来たことの方が信じらんないよ。」
「わかったから、サブロウさんもチユも周りを警戒してよ。」
「うむ、すまぬ。」
「はーい。」
レンは二人に注意して周りを見回していたが、あることに気づいた。
レンのメンバーは4人だ。
魔法剣士のレン。
治癒魔法のチユ。
攻撃一極型侍のサブロウ。
そして、魔法使いの......
「しまった!?リュシー!!どこだ!返事をしてくれ!」
「うそ!リュシーが居なくなっちゃった。」
「なんと!?リュシー殿ぉー。」
魔法使いのリュシーは今回目的地まで待ちきれないのか先頭をズンズン進んでいたためにいの一番に霧に呑まれてしまっていた。
声が届く範囲にいた筈だけど、彼女がパニックを起こし、じっとして居られなかったかもしれない。
3人はその場を動かず霧が晴れるまで声をあげるが返事は聞こえない。
数分して3人とも最悪の結末をイメージしてしまっていた。
暫くして誰も声を挙げなくなっていた。
霧が晴れてくると、3人とも急いで周りを見回したが、大きな杖をもったローブの少女は見つからなかった。
「俺のせいだ......もっと警戒してリュシーに注意していれば......」
「やだぁ.....よぉ。お願いだから、怪我なら治せるから。」
レンは項垂れ、その場にうずくまるチユ。
「レン殿介錯を......頼む」
「いや!何しようとしてるのサブロウさん!?」
「離すのである!某がいながら、なんたる結果!無様を晒すわけにはーーー。」
「ちょっと、やめようよ!自傷は治し難いんだよ!?」
結局落ち込む暇もなくサブロウの暴走を止めることになったレンとチユだった。
そのコントのようなことをしている3人から遠くの岩を挟んだ反対側には未だに霧で覆われていたが話声は聞こえる。
話しているのは二人の女性だった。
『面白いパーティーですね。私も急いでなければもう少し話をしても良いのですけど。』
そう言う申し訳なさそうな声に明るい声が返す。
「いえ!いいんです。気にしないでください。」
『契約は......私は決めた子がいるので無理ですけど、この先に18人はいますので相談して相性の良い相手を選んでくださいね。』
「は、はい!助言ありがとうございます。」
霧が少し薄れて周りを見やすくしていた。
『いえいえ、こちらこそコンクレントまでの道のりを教えてもらって感謝します。ほら、早く合流してあげた方が良いですよ。』
優しげに微笑む薄紫の長い髪に似た色合いの着物を着た女性は遠くにいる切腹しようとする侍を押さえる光景に指を指していた。
それを見て驚く大きな杖を持った少女は踵を返し全力で走っていった。
「ええええー!?すいませんこれで失礼します!!」
出会い頭に霧に紛れ拉致った少女がメンバーの元に駆けていった。
どうやら切腹をしなくてすんだようだ。
その光景にクスリと笑った。
『さて、方向はわかりました......ここから5日と言うところでしょうか。』
紫の目をコンクレント湖上都市がある方に向けた。
『アンが【小さな庭園】に来なくなって約3週間.......これは非常事態のようなので、こっちに来てみましたが、まさか一番近くの端末(花)がサーセルブの端っことは......魔性の森にもう少し植えておけばよかったですね。』
そう言いながら霧に紛れて姿が霞んでいった。
そして、南下を始める霧の集合体。
コンクレントまでー距離5日ーだった。
『それに嫌な予感がします。なんていうか私の天敵が復活したような......』
そうボヤくのを最後に真っ白に覆われた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーー。
「お、おはようございます。」
「ふふ、おはようございますアン。」
「やあ君が魔性の森で最近生まれた魔物かな?」
『はあん?何なの、あの偉そうな態度!?殺る?殺っちゃおう?』
(ちょ.....)
「たぶん.....そうでしょうか?」
おはようございます。今私は大変困ったことに巻き込まれてしまいました。
記憶世界から目を覚ますと私は即座に自分のカードでプロフィールを確認しました。
どうやら私が思っていたよりは代償はでかくないように感じました。
いや、でかいのかな?神様の貰い物の一部(時空間制御)が消失していました。
これであっちでも現実の世界と同等の時間が流れてしまうのです。
でも、今の私は一人じゃありません。
なんたっってシュレイさんと一緒に居られるのですから!!
シュレイさんは私のスキルになっていました。
うまくいってよかったです。
頭の上で私にぴったりと張り付いている大きな花がシュレイさんです。
どうやら、こちら側には私の身体かがないと行動できないみたいでした。
『ねえ、なんで城にソロモンの末裔が要るわけ?帰って!自分の城に帰れば良いでしょ。』
(そろもん?だれでしょう.......。)
そういう、シュレイさんですがその声は私か同族の植物しか聞くことは出来ません。
私はとりあえず、目の前に用意された席に着くことにしました。
私が席についたことで、この城で唯一の男性が席を立ち『両手をひろげ』自己紹介をしてくれました。
その男性の後ろにはオレンジの燃える焔のような髪色の女性が立っていました。
「はじめまして、私はこの城の真上のコンクレント湖上都市で領主をやっているコンレル・コンクレントです。以後お見知りおきを、愛らしい魔皇似の少女。」
『愛らしい?そうでしょうそうでしょう。』
(はずかしいからやめてください。シュレイさん。)
シュレイさんが感情を表すように私の頭の上の花をヒラヒラと動かしてました。
挨拶をされたら返さなければ!そう思い立ち上がろうとしたとき、後ろに控えていた銀髪のメイドのオリジンに肩に手を置かれ、行動を抑制されてしまいました。どうやら、ここは堂々としてれば良いみたいです。
「コンレルさん......その、後ろの方は?」
私は先程からこちらを睨みつける。オレンジ色の髪の少女のことを聞きました。
すると、コンレルさんはニッコリとして答えました。
「ああ、彼女は私に支える魔神の一柱ですよ。」
魔神て......
私の世界のゲームや漫画の知識から簡単に魔神という存在の想像が付きますが、もし神様に連なる実力だったら......そう固まる私に
控えていた少女が一歩前にでてハッキリと睨み付けてきました。
「ぽわぽわしやがりまして、バカ丸出しですね。私はフェネクスと言います。覚えられるんですか?無理じゃないですか?バカそうですし。」
「.......ふぇ?」
そんな好戦的な台詞を言われてしまい呆気にとられてしました。
彼女は元々口が悪いようです。きっとそうですよ挨拶みたいなものですね。
だから......
『ぶっ殺.....す。変わりなさいアン!アイツ殺せない!!』
(だ、ダメですよ!そんなことしたら本当に現状何も分からない状態のままじゃないですか!)
そう、私は寝ていたために外がどうなっているのか全く判っていないのだ。
故に今回の話し合いは何が起きているのか知れるチャンスというわけだ。
そんな場でちょっとした暴言で問題を起こされたら元も子もない。
そう思っていた.......が、
「良い度胸ですね焼き鳥女、相手になりますよ。外に出なさい。」
「ちょっと、オリジンさん!?」
頭に青筋を浮かべた銀髪のメイドが殺気の籠った目で売られた喧嘩を買っていました。
話し合いは難航しそうです。
私はそう思いため息をつきました。




