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塔の管理をしてみよう  作者: 早秋
第4部 それぞれの現状
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(3)積極的な交流

 その計画が進むことになったのは、考助がシュレインからとある相談を受けたためだ。

 時期は考助が物見遊山の旅に出る前の事なので、一年以上前のことになる。

 プロスト一族を受け入れてしばらく経った頃だった。

 珍しくちょっと困った表情になったシュレインが、くつろぎスペースで休んでいる考助に近寄ってきた。

「コウスケ、ちょっとすまんがいいか?」

「ん? どうしたの?」

「今、吾のところでちょっとした問題が持ち上がっていてのう」

「問題?」

 小首を傾げた考助に、シュレインが「うむ」と頷いた。

「簡単に言えば、もっと他種族とかかわりを持つべきだという者たちと、今のままでいいという者たちがぶつかっておるのだ」

 ヴァンパイアたちがいる階層は、アマミヤの塔と出入りできる転移門だけが繋がっている状態だ。

 ただその転移門は、イグリッドたちが作った物や一部のヴァンパイアが出入りするために使われているだけで、外と積極的に交流が行われているとは言い難い。

 そのため、もっと積極的に外に出ていくべきだと主張する者たちが現れているのだ。

 対して、今のままで十分とする者たちは、過去の経験からなるべく交流を持ちたくないと考えているのである。

 ちなみに、積極派にタルレガ一族が、消極派にプロスト一族が多いのは、当然と言えば当然のことである。

 

 そんな話をシュレインから聞いた考助は、首を傾げた。

「それで? 何か相談?」

 今シュレインが話したことは、あくまでもヴァンパイアの中での問題で、考助に相談するような話ではなかった。

 シュレインがそんなことで一々考助に相談してくるはずがないと考えているのだ。

 その考助の予想は外れておらず、シュレインが一つ頷いて続けた。

「外部の者を迎え入れるのは、特定の場所だけにして受け入れる、という事で決着はついたんだがの・・・・・・」

「うん?」

「ある一定の範囲から外に出ることが出来ないようにするための結界を張る道具なんかは作れないかの?」

 シュレインにそう言われた考助は、腕を組んで首を傾げた。

「うーん。どうだろう? 目的を考えると、許可を得た者は自由に出入りできるようにした方が良いんだよね?」

「そうなるの」

「やってみないと分からないや」

 シュレインが頷くのを見て、考助はそう答えた。

 許可があるものだけを内部に通すための魔道具は存在している。

 だが、許可のない者を結界の内部に閉じ込めておくような魔道具は作ったことが無いのだ。

 理屈から考えれば簡単に出来そうな気もするが、シュレインの話からすればその内部は転移門と繋がることになる。

 さらに言えば、結界といっても個人では使うわけではないので、かなりの大きさになるのだ。

 それぞれの機能が邪魔されないようになるかは、作ってみないと分からないというのが本音だった。

「すまんが、試しに作って見てもらってもいいかの?」

「分かったよ。やってみる」

「頼む」

 出来るかどうかは分からないが、考助はわざわざそんなことは言わなかった。

 シュレインもそのことは十分に分かっているのだ。


 結局、考助がシュレインから依頼を受けて、目的通りの道具が出来たのは一か月後のことだった。

 その道具がヴァンパイアの希望通りの性能を持っていることから、積極派の間で考助が再び祭り上げられることになのはまた別の話である。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

 そんなやり取りが考助とシュレインの間であってからかなりの期間が過ぎた。

 その間に、ヴァンパイアたちは色々な準備を進めてようやく形になったのだ。

 さらにいえば、今回の計画で主導的な役割を果たしたのはヴァンパイアではなくイグリッドたちだった。

 建物の建築からその装飾、そして今回の計画の胆となる『訓練』まで、彼らの全面的な協力が無ければ間違いなくこの計画はとん挫していただろう。

 そして、今回に関して彼らの活躍はその場限りのものではなく、今後も続くことになるのである。

 

「準備が出来た」とシュレインから報告を受けた考助は、珍しく第五層のクラウン本部を訪ねていた。

 勿論考助がいる場所は、ごく限られた者しか入れない部屋だ。

 しかも今回は厳重に呼ばれた者以外は来れないように警備されている。

 部屋には、考助をはじめとした塔の管理組メンバー全員が、クラウン側からは四人の部門長と統括達全員が揃っていた。

 ついでとばかりに考助の子供たち全員も集まっている。

 これだけのメンバーが一堂に会することなど、ごくまれなことだ。

 もし彼ら全員の素性を知っている者がこの場にいれば、何事かと驚いただろう。

 だが、残念ながら今この場には、本当の意味での考助の身内しかいないのであった。

 

 部屋に予定していた全員が揃ったのを確認した考助が、シュレインへと視線を向けた。

 考助の視線を受けたシュレインは、一つ頷いてから話を始める。

「皆、忙しいのに集まってもらって済まなかった。これから始めるのは、吾がヴァンパイアの命運を決める可能性もあるので、吾が考助にわがままを言って集めてもらった」

 シュレインが言った通り、考助が呼びかけたからこそこれだけのメンバーが一堂にそろったのだ。

 そうでなければ、集めることなど不可能だった。

 彼らに集まってもらったのは、今回の件でシュレイン、ひいてはヴァンパイアにとっては言葉通り命運をかけているためだ。

「まあ、吾がここで言葉を尽くして語っても仕方ないので、早速場所を移してもらおう。願わくば・・・・・・いや、これは言わないでおこうかの」

 最後の言葉は口の中で転ばすだけにして、シュレインは早速行動に移した。

 といっても、その行動自体はこの場に集まった者たちにとっては大した作業ではない。

 転移門を部屋に作ったのだ。

 今回の胆は、この転移門の先にある。

 そこでは、ヴァンパイアとイグリッドが待ち構えているのだ。

 転移門を通っていくのを見送っていたシュレインは、祈るような気持ちで最後に門を通るのであった。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

 最初に転移門を通ったのは考助だ。

 反対側にはシュレインの片腕であるゼネットが待っていた。

「お待ちしておりました」

「ああ、うん」

 ゼネットは丁寧に考助に向かって頭を下げたが、失礼ながら考助の視界にはその様子は入っていなかった。

 それを知ってもゼネットは不快に思わず、むしろ狙い通りの結果に安堵と自信が浮かび上がっていた。

 考助の視線は別の方へと向いていたのだ。

 しかも珍しいことに、考助だけではなくその左右に立っていたコウヒやミツキも同じようにそれを注目している。

 そうこうしているうちに、次々と今回呼んだメンバーたちが転移門を通ってやって来た。

 そして、全員が同じような態度をとることになった。

 

 彼らの視線の先にあるのは、一つの建物だった。

 大きさはよくある学校程の大きさだったが、勿論のっぺりした四角いだけではなく芸術的な作りになっている。

 壁には様々な意匠が施されており、それだけでもかなりの価値があるのがわかる。

 工芸部門長であるダレスなどは、一目見るなり大きく唸り、黙り込んでしまったほどだ。

 その一つの建物に、かなりの手間が掛けられているのが分かったのだ。

 勿論こんな建物は、セントラル大陸のどこを探しても見つけることなど出来ないだろう。

 あえて挙げるとすれば、神威物として知られている建物が同じような存在感を放ってはいるが、その方向性は明らかに違っている。

 神威物はあくまでも神を讃える為のものだが、彼らの目の前にある建物はあくまでも人を迎え入れるために造られているのだ。

 建物の外面で圧倒された一同だったが、彼らは中に入ってからそのことを実感することになるのであった。

続きます。終わりませんでした><

ヴァンパイアとイグリッドが何の為の建物を作ったのかは次話で。

この時点で何となく予想はつくかもしれませんがw

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