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塔の管理をしてみよう  作者: 早秋
第4部 それぞれの現状
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(4)高級ホテル

 イグリッドたちが作った建物は、ラゼクアマミヤでは高級ホテルなどで使われている建築技術が基礎になっている。

 ただし、それはあくまでも基礎であって、受ける印象は全く違う。

 そもそもこれほどの技巧を使って建物を作れば、どれほどの経費が掛かるかわからない。

 ゴテゴテに金銀財宝を飾っているというわけではないのだが、それでもその建物が素晴らしいことは一目でわかる。

 その建物をヴァンパイアとイグリッドが何のために造ったのかといえば、ホテルにするためだ。

 もっといえば、積極派たちはこの地域を温泉街にしようともくろんでいるのである。

 温泉に関しては、それこそイグリッドの得意分野である地下から探し出して引っ張ってきている。

 今はまだ一つの建物しかないが、観光地として上手くなりたてば、どんどん建物を増やす予定だった。

 ちなみに、温泉街にしようとしている地域は、ヴァミリニア城がある地域とは離れた場所にある。

 温泉街(予定地)は結構な広範囲で考助が作った結界で守られているので、ヴァミリニア城のあるところまでたどり着くことは出来ないようになっている。

 そうすることで消極派と妥協を図ったというわけだ。

 

 いつまでも建物を眺めていても仕方ないので、一同はホテルの中へと入った。

 そこでも一同は唸り声を上げることになった。

 入口から入ってすぐのところは、かなりの広さが確保されたホールと宿泊客を受け付けるカウンターが備え付けられている。

 そのホールには寛げるようにソファやテーブルが置かれているのだが、一つ一つが高級な物だというのがわかる。

 イグリッドの技術が見事に発揮されている。

 それだけではなく、室内を照らしている照明は、考助が発明したものが使われているので、古い技巧だけで作られているわけではないことも分かる。

「なんというか・・・・・・わしらが建てているホテルがみすぼらしく見えてくるな」

 ホテルの外見から衝撃を受けっぱなしのダレスが、そんなことを言った。

 だが、それを聞いたシュレインが首を左右に振った。

「それは間違っておるの」

「どういう事だ?」

「簡単な話だ。其方らが建てるときには必ずと言って良い程、予算という制限が付く。その中で出来うる限りの技術を振るうのだろう?」

 その言葉を聞いたシュミットが、シュレインが何を言いたいのかを察した。

「まさかこのホテルは採算を無視して作られているのですか?」

 商人からすれば信じたくないような事実に、だがシュレインは頷いた。

「はっきり言えばその通りだ。私も初めてここに来た時は頭が痛くなった」

 報告を受けている予算の額と実際に立っている建物や内装を見れば、シュレインにも明らかに予算をオーバーしているのがわかった。

 だが、建物もそうだが、こうした調度品は一つ一つがイグリッドの手で作られている。

 イグリッドの作品が高価な美術品に近いような評価を受けていることを考えれば、その値段はほとんど青天井に近いものがあるのだ。

 

 そこまでの説明を聞いたシュミットは、直感に近い感じである答えを導き出した。

「まさか、その予算というのは、原価分だけの値段だった、とかですか?」

 シュミットの言葉に、シュレインは苦い顔になって頷いた。

「まさしくその通りだの。全く、イグリッドの非常識がここで炸裂するとは思わなかった」

 そもそもイグリッドが作る作品の多くは、彼ら自身が掘り出した鉱石や原石を使って作られるのがほとんどだ。

 勿論、外から受ける依頼によっては指定された素材を使って物を作ることもあるのだが、そうした場合はクラウンを通して素材を仕入れているのだ。

 シュレインがイグリッドから話を聞いたところによると、このホテルを作る際に使われている原材料のほとんどが、この階層で取れる物を使っているとのことだった。

 要するに、イグリッドの人件費を除けば、ほとんど経費が掛かっていないのと同じなのである。

 だから赤字になっているわけではないと、イグリッドらしい呑気さを笑っていたほどだ。

 勿論、シュレインはその言葉を完全に信じたわけではない。

 ホテルが出来るとなれば、彼らが住む階層にヴァンパイアとイグリッド以外の種族が来ることになるのだ。

 計画を聞いたイグリッドたちが張り切ったのは、間違いがない。

 その張り切りぶりがシュレインからすれば、暴走に近い物だったというわけである。

 

 話を聞いたシュミットが、何処となく納得した顔になっていた。

 彼はイグリッドと直接取引をしたことはないが、ヴァンパイアを通してなら何度もやり取りをしている。

 はじけ飛んだときにイグリッドの暴走具合は、シュミットもよくわかっているのだ。

「・・・・・・なんというか、ご苦労様です」

 シュレインの気苦労を察したシュミットが、何とも言えない表情になるのであった。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

 シュレインたちの話を聞きながら考助は、いつまでも見入っていても仕方ないとカウンターへと近づいて行った。

 そこには二、三名のイグリッドが待ち構えていた。

 カウンターの高さは普通の種族を基準に造られているので、カウンターの裏ではイグリッドに合わせて台などが用意されているのだろう。

 上半身を見せてこちら側を見てくる様は、どうみても飾られている「お人形さん」だった。

 考助が近づいてくるのを見て、ニコリと笑って言った。

「よく来ただ・・・・・いたっ! よ、ようこそいらっしゃいませ」

 隣にいた同じイグリッドに頭を小突かれて言い直したそのイグリッドを見て、考助は何とも言えない気持ちになった。

 はっきり言えば、見慣れていない者がみれば、そのまま攫いたくなる気持ちがよくわかってしまうやり取りだった。

 現に、考助の隣にいるミアは、目を輝かせてイグリッドのやり取りを見ていた。

 いろんな意味で心配になってくる光景だが、周囲を確認すると要所要所に警備のヴァンパイアが立っている。

 今回の考助たちの訪問は、彼らの訓練も兼ねているのだ。

 まだ慣れていなさそうな言葉遣いだが、最初のうちはそのままでも大丈夫のような感じだ。

 勿論、考助個人の感想なので、万人受けするわけではないだろう。

 中にはいちゃもんを付けてくる者もいる可能性もあるだろう。

 

 まだ名前は決まっていないこのホテルは、全ての人に解放する予定にはなっていない。

 クラウンで定めているランクの高い者と決めているのだ。

 このランクとは、普段依頼を受けるために基準にしているものではなく、別のランク制度だ。

 例えば冒険者であれば、依頼を完了したとしても態度やそのほか諸々で依頼主からは評価が低くなるような者たちもいる。

 依頼のランクが高くても、その評価ではランクが低いという事も十分にあり得る。

 いわば、その人物やパーティの内面を評価しているものになる。

 そして、その評価が高い者は、クラウンからの指名依頼を多く受けることが出来るといったものだ。

 ヴァンパイアとイグリッドが経営するこのホテルは、その評価を使って利用者を制限することになっている。

 だからこそ、クラウンの統括達や部門長たちが勢ぞろいしているわけだ。

 彼らの表情を見る限りでは、今のところは問題なさそうである。

 

 このあと考助たちは、各部屋に入ってそれぞれ施設を見回ったのだが、特に大きな問題は見受けられなかった。

 ただし、施設といっても温泉以外の設備は食堂やホールや、ボードゲームやカードゲームが出来るような部屋があるくらいだ。

 もっともシュレインたちに言わせれば、十分すぎるほど豪華だということだったが。

 その話を聞いた考助は、折角なのでこの世界に娯楽でも増やそうかと、温泉に入りながら考えるのであった。

というわけで、高級ホテルでした。

ちなみに、ホテルとしてはあり得ないくらい豪華です。

最先端の調度品を作っているイグリッドたちが頑張った結果です。

次は久しぶりに狐達に焦点を当てます。

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