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塔の管理をしてみよう  作者: 早秋
第1章 塔に向かおう
5/1358

(3)発動

2014/2/16 8時投稿

 翌朝。

 朝食の準備の手伝いをしようとした考助は、ミツキに止められて二人の作業を眺めていた。

 まあ食事といっても調理器具どころか調味料の類もないので、基本仕留めた動物の肉を焼くなど単純なものなのだが。

 食事内容の改善のためにも町に早く着きたいというのが全員一致した意見であった為、足(飛龍)の確保が最優先になったのだ。

 二人の様子を何とはなしに見ていた考助は、視界にノイズらしきものが走っていることに気づいた。


(・・・? ・・・いやいや、ちょい待て、ノイズって・・・。古いテレビの画面じゃないんだから。何!? 目、おかしくなった?)


 目をこすってみるが状況は変わらない。

 右目だけを開けても出てこずに、左目だけを開けているとノイズが走るので、左目に何かが起こっているらしい。

 左目だけを開けて、たまたま目の前にいたコウヒを注視してみる。

 やはりノイズが走るが、次の瞬間、ノイズが見覚えのある文字に変わり、コンピュータで大量のデータを流し込んだ時のように一気に大量の文字が流れていく。

 大量の情報の洪水が頭の中を駆け巡り、それがプツリと途切れて、考助自身では抵抗もできずに意識を失うのがわかった。

「? ・・・考助様!?」

 たまたま近くにいたコウヒがそれに気づいたのか、自分の名を呼ぶのが分かったが、考助はどうすることもできずに流れに身を任せることしかできなかった。


「・・・で、ここに来るわけか」

 気づいた時にはそこに立っていた。

 コウヒが遠くで名前を呼ぶのを聞いたと思ったら、すでにここに立っていた。

 そこに立っていると気づいて、周りを見た瞬間[常春の庭]だとわかった。

「まだ、一日ちょっとしかたってないのになぁ」

「全くね」

 返事が返ってきたので振り返ってみると、アスラがそこに立っていた。

 とても面白そうな表情をしている。


「[常春の庭]にいるということは、僕はまた死んでしまったのかな?」

「いやいや、違うよ。今回は。さっきのあれで、肉体に負荷がかかりすぎたんで、それに引きずられないように魂が避難した、って感じかな?」

「・・・何、それ!? どゆこと?」

「ちゃんと説明するから落ち着きなさい。

 ・・・ここから出ていくときにプレゼントあげたって言ったわよね?」

 記憶を探ってみる。

 さほど考えずに思い出せた。

「確か左目に・・・左目? まさか!?」

 探るようにアスラのほうを確認した。

 アスラは頷いた。

「そう。私の力の一部ってやつ。いやーまさか、世界に降り立って早々に使い始めるとは思ってなかったわよ。しかも暴走させてしまうし」

「暴走!?」

 そう言って面白そうに笑うアスラに、考助は驚き慄いてしまう。

 そこまで危ないものを渡されたのか。

「あー。何、その態度。本当なら暴走なんてするはずがないのに、考助が無茶な使い方をするからこんなことになったのに」

 考助の態度が気に入らなかったのか、アスラが少し怒ったような表情になる。


(あの、すいません。貴方ほどの美人が怒ると非常に怖いです)


「何ー!?」

 アスラには、考えたことが筒抜けになることをすっかり忘れていた考助であった。

 素直に謝ることにした。

「ごめんなさい。・・・・・・で、結局、どういうことなのか説明願いますでしょうか?」

「うむ、よろしい・・・って、何言わせるのよ!」

 立場が立場なのに、考助に対して偉そうな態度をとることをアスラはなぜか嫌っているのだ。


「・・・つい?」

「つい、じゃないわよ。・・・はあ、もういいわ。説明するからちゃんと聞いてね。・・・いい?」

「お願いします」

「あなた、その左目の力を使ったときに、ここで教えた神力を向こうで思いっきり使ったんだけど、覚えてる?」

「いや、そんなはずは・・・あれ? 言われてみれば・・・使った、ような?」

 ほんの一瞬だったのでよく覚えていない。

「使ったのよ。しかもあの一瞬で、最大限まで力をこめてね」

「・・・げげ。ほんとに?」

「ほんとに、よ。全く・・・あれだけ神力の扱いには注意してと言ったのに・・・というのは、少し酷かしらね」

「どういうこと?」

「簡単に言えば、身体の方が神力の扱いに慣れてないのよ。ここでの扱いはあくまでも魂の状態のままでのことだし、ね」

「なるほど」

 アスラがジト目で、考助を見た。

「・・・ほんとにわかってる?」

「大丈夫。ダイジョウブデス」

 正直危なかったが、何とかついてきてる、ハズ・・・。

「・・・ハア、まあいいわ。とりあえず今回のことで、身体の方も神力にある程度定着したからもう大丈夫だと思うわ」

「・・・ん? 大丈夫って?」

「簡単に言うと、今回のようにばかみたいに一気に能力が解放することがなくなるように、リミッターがかかるようになっているわ。リミッターの上限を上げるには、神力とその目の力を使いこなせるように、数をこなすことね」

「はー。それはまた、便利なことで」

「他人事のように言わない」

「ハイ。スミマセン」

 ジト目で考助を見てきたので、素直に謝った。

 この先もずっとアスラには頭が上がらなさそうである。

 もっとも、今後も今回みたいに直接かかわることがあるかは、不明ではあるのだが。

「要するに、左目を使ったときに、神力を大量に扱わないようにリミッターがかかっていて、リミッターを解除するにはたくさん左目を使う(?)のがいいということ?」

「そうね。概ねそういう理解でいいと思うわ」

 返事が微妙である。完全に合っているわけではないが、間違ってもいないということだろう。

 とりあえず使いながら探っていくしかない。

 いつまでもアスラに頼るわけにはいかないのだから。


「あら。別に頼ってもらってもいいんだけど?」

 人の心を読んで返事をするのはやめてほしいものである。

(もう慣れたからいいけど)


「じゃあ、そろそろ向こうに送るわ。いつまでもこっちにいるわけにもいかないしね」

「・・・そうなのか?」

「そうよ。

 魂と体が長時間離れたままの状態が、いい状態のわけないでしょう?」

「わかった。じゃあ送って・・・てか、今回は時間がかからないんだな」

「ええ。前の時は、身体の準備とか、魂の定着とか色々あったからね」

「なるほど。じゃあ、送って」

 考助がそう言うと、アスラが考助に向かって右手をかざした。

「じゃあね」

 アスラがそういった瞬間、考助はその場から消え去った。


「主様!!」

「考助様!!」

 二人の呼び声に反応して考助は意識を取り戻した。

 意識を取り戻したとき考助は、ミツキに膝枕されていた。

 慌てて身を起こそうとしたが、肩を押さえられる。

「まだ、ダメよ」

 覗き込むようにして考助を見るミツキの表情が非常に怖かった。

 目線を合わせないように視線をずらすと、立派な二つのお山様が映って慌てるが、肩を押さえられているため動けない。

 しょうがないので抵抗を諦めた。


「・・・えーと、もう大丈夫だと思うんだけど・・・」

「駄目です。魂が離れていた時間が結構あったのですから、しばらくそのままでいてください」

 助けを求めてコウヒの方を見るが、あえなく撃沈してしまった。

「結構ってどれくらい?」

「1時間ほどでしょうか」

「え!? そんなに?」

 考助には、[常春の庭]にそこまで長い間いた感覚はない。

「はい。ですので、そのままで何があったか説明してください」

「いや、できれば起きたいんだけど・・・」

「「ダメ」です」

「ミツキの膝の居心地が悪いのであれば、私が代わりますが?」

「どさくさに紛れて、何言ってるのよ!?」

 いや、コウヒさんそういうことではないです。

 そしてミツキさん、目が、目が怖いです。そんな目で見てコウヒをあおらないでください。

 なまじ美人がそういう顔をすると、慣れてない考助にとっては非常に恐ろしい。

 起き上がることを諦めた考助は、そのままの態勢で先ほどのことを説明することにした。


 結局、考助が膝枕から解放されるのは、一時間後のことであった。

2014/3/21 更新

「あなた、ここで教えた神力を向こうで思いっきり使ったんだけど、覚えてる?」

 ↓

「あなた、その左目の力を使ったときに、ここで教えた神力を向こうで思いっきり使ったんだけど、覚えてる?」


次話は夜の20時に投稿します。

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