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塔の管理をしてみよう  作者: 早秋
第1章 タウゼン王国編
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(11)新たな騒ぎ

 誰も近づかないような廃屋の中で、二人の男が対面していた。

 先日、考助達への「次の手」のことを話していた二人だ。

 ただし、今日の雰囲気は先日とは違って、最初から険悪な物だった。

 考助達をどうにかするように依頼をした男が、その相手に対して怒っていた。

「どういう事なんだ!!」

 廃屋で話し合いがされていることが周囲にばれないように声そのものは抑えられているが、かなり激昂している。

 相対している方の男は、その怒りを静かに受け流していた。

「どうもこうもありません。私達の者では、あの商隊を襲いきることは不可能です」

 そうきっぱりと言い切られて、怒りを加速させた男は額に青筋を立てている。

「たかがCランクのパーティ一つと、他に二つのパーティを負かせないとは、其方らも落ちたな」

「恐れ入りますが、冒険者ギルドのランクなど目安の一つでしかないことは、ヘルマン殿の方がお詳しいかと存じます」

「何だと?!」

 反射的に言い返そうとしたヘルマンだったが、この場で名前を出されてそれまでの怒りがわずかに収まった。

 

 今相対している男の組織は、使い勝手が良いために昔から重宝して使っていた。

 そのたびに、今いる男と交渉してきたのだが、目の前の男はこういう場で迂闊に名前を出すような者ではない。

 名前を出したことで、冷静になるように誘導されたのだ。

 良いように操られているようにも感じたが、それでも今、多少とはいえ冷静になれたのは大きかった。

 男の言った言葉の意味をきちんと考えられる余裕が出来た。

 しっかりと考えると、その言葉の意味は重要な情報が含まれていることがわかる。

 

「・・・・・・それほどなのか?」

 たかがCランクの冒険者と侮っていたヘルマンだが、目の前の男の言葉の意味を正確に読み取っていた。

 要するに、護衛をしている考助達は、Cランク程度の実力ではないと言い切っているのだ。

 長年の付き合いで、自分たちの失敗を隠すために相手の実力を大きく語るような男ではないという信用程度はある。

 そうしたヘルマンの考えを読み取ったのか、男は小さく頷いた。

「はい。実力的にはAランクと言われてもおかしくはないかと」

「・・・・・・何だと?!」

 一度冷静になって男の言葉を真剣に聞く気になったにもかかわらず、再びヘルマンは疑わしげな表情になった。

 Aランクの冒険者というのは、それほど実力が高い者達の集団なのだ。

 それほどの実力があるのであれば、仕事柄、自分の耳に噂として入ってきてもおかしくはない。

 だが、ヘルマン自身はコウという冒険者の名前は聞いたことが無かった。

 

「コウという冒険者の名前など聞いたことが無いが?」

「はい。こちらで詳しく調べましたが、どうやらセントラル大陸から最近移って来たようです」

「なるほど、な」

 セントラル大陸で活動している冒険者が実力者ぞろいであるという話は、ヘルマンのような立場にあれば嫌でも聞こえてくる。

 実際に目にしたことはないのだが。

 

 考え込むヘルマンを見つつ、男が今の状況をさらに説明した。

「我々が持っている手持ちで最大の戦力を投入しましたが、まるで歯が立ちませんでした。これ以上の投入は損害が大きくなるだけで無意味です」

 先程と同じように不可能だと言い切ったが、ヘルマンは今度は激昂することは無かった。

 既に次に何をすべきか、頭の中で組み立てている。

「・・・・・・そうか。わかった。・・・・・・良く知らせてくれた」

「いえ。結局失敗したのは変わりありませんから」

 ヘルマンは、長い付き合いで目の前の男が怒りを殺していることに気付いた。

 裏の仕事を散々こなしてきた男だが、失敗をしたことはほとんどない。

 それだけに、今回のように完膚なきまでに叩きのめされたことはないのだ。

 心の中ではかなり煮えくり返っていることが想像できた。

 それを思えば、まだ次の手が打てるヘルマンは、心に余裕が浮かんでくる。

「わかった。この件に関しては、もうそなたたちは関与しなくていい。・・・・・・いや、次の指示があるまで待っているがいい」

「かしこまりました」

 ヘルマンに対して、男が深々と頭を下げることによって、この場での話し合いは終わりを迎えるのであった。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

 王都までのほとんどの行程を終えて、最後の大きめの町に滞在している考助達は、ちょっとした休息を楽しんでいた。

 現在運ぶべき荷物は、納品する商業ギルドの支店で責任を持って管理されている。

 そのため、一時的に考助達は荷物から解放されているというわけだ。

 ちなみにこの間に荷物が失われたとしても、考助達やレネーに責任の所在はない。

 予定よりも早く行程が進んでいるので、最後のスパートをする前にちょっとしたブレイクタイムと言った所だ。

 

 考助達が魔道具屋で置かれている品を確認していた丁度その時に、若干慌てた様子でレネーがやって来た。

「ああ、良かったコウさん。こちらにいらしたのですか」

「レネーさん? どうしたのですか?」

「例の荷物に関して、ちょっとした問題が発生しまして・・・・・・」

 レネーは、言外にここでは言えないと匂わせて言葉を濁した。

 考助もそれを察して、手にしていた魔道具をすぐに元の位置に戻した。

「そうですか。私も戻ったほうが良いのですね?」

「はい。お願いします」

 この町に来るまでにレネーの考助に対する信頼度は、最高にまで上がっている。

 休息中の考助を呼びに来たのは、それだけ信頼している証でもある。

 考助としても、休息中とはいえ護衛途中であるので、呼ばれることは問題がないと思っている。

 それだけの金額を護衛料としてもらっているのだ。

 考助は、レネーに導かれるままに、荷物を預けている商人ギルドへと向かうのであった。

 

 考助達が荷物を預けている商人ギルドの倉庫へと到着すると、既にそこはちょっとした騒ぎが起きていた。

 正確には、いかつい装備を付けた集団が、入口を守っている門番と押し問答をしていたのだ。

 そのいかつい装備とは、タウゼン王国の騎士団が着ている重装備だった。

 つまりは、この国の正式な騎士団の人間が、騒ぎを起こしていることになる。

 ここまで来る途中にレネーから聞いた話だと、突然今になって騎士団が荷物の検査を申し出て来たとのことだった。

 別にそのこと自体は珍しいことではないので特に構わないのだそうだ。

 町に入ってくる荷物に対して、門で検品は行われているが、こうして抜き打ちで検査されることもある。

 そうしたことはよくあるので、門番も落ち着いて対処していたのだが、問題はここにきている騎士団たちは書面を持っていないのだ。

 少なくとも今の様子を見る限りでは、一度も出していない。

 こうした検査があるときは、正式な書面を元に行われる。

 はっきり言えば、来ている装備は正式なものとはいえ、きわめて怪しい者達なのである。

 

 レネーが考助達を呼んだのは、騎士たちが強引に突破した際にそれを食い止める役目を期待しているのだ。

 そのため、考助達は正面の入口ではなく、裏の入口から入ることになった。

 勿論裏の入口にも門番は立っているが、レネーがいれば通り抜けることが出来る。

 レネーに付いてきている考助達もあっさりと通ることが出来た。

 一応裏側の周囲を窺ってみたが、騎士たちが別方向から無理やり押し掛けてくるという事はなさそうだった。

 そうして考助達が肝心の荷物のある場所に着いたその時。

 また新たな集団が現れてさらに事態がややこしくなるのであった。

どんどん巻き込まれて行く考助達でした。

そのまますんなり王都には着かせませんw

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