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塔の管理をしてみよう  作者: 早秋
第2部 塔のあれこれ(その9)
469/1358

(10)卒業

 ラゼクアマミヤにある学園では卒業式が行われていた。

 王国の次代の王であるトワに合わせて作られた学園だが、今回のも含めると六回の卒業式が行われていることになる。

 第一回目の卒業式の時は人数が少なかったのだが、今回の卒業式が最大の数になっていた。

 学園の学力の基準は明確に示されていて、学力が足りない者は容赦なく留年するという制度になっている。

 そのため、年齢で最終学年に在籍していた者で学力が足りていない者が、続出したのだ。

 最初の頃は、学園という制度が定着していなかったこともあり、留年という事がさほど騒がれていなかった。

 しかしながら、最近ではずっと学園に居続ける事がマイナスの評価に変わりつつある。

 実際にトワが卒業してしまうので、社交の意味でも学園に居続ける意味が薄れてきているというのも理由の一つに上げられるだろう。

 トワが卒業してしまえば、顔を覚えてもらう為にいるという「言い訳」も使えなくなってしまうからだ。

 学園には、妹姫や弟王子がいるが、既に次代の王として認識されているトワに比べれば、重要性はぐっと減るのである。

 そんなわけで、学園を卒業できない者は一定ラインの学力にすら(・・)達していないという認識に変わりつつあるのだった。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

 厳粛な卒業式が行われた後は、貴族らしく社交のスタートとなる。

 学園を卒業した者は、貴族社会で大人として認められることになる。

 これまでは、学園を卒業していなくとも年齢で認められていたが、これから先はそうもいかなくなると考えられていた。

 そもそも学園が置いている学力の基準はさほど高いわけではない。

 専門のコースに進めば話は別なのだが、基礎課程に関しては貴族社会で生活していれば知っていなければならない事ばかりなのだ。

 逆に言えば、卒業基準を満たしていないと、貴族社会に出てから恥をかくという事になる。

 ちなみにトワはというと、当然のように基礎課程は修了して、専門コースもいくつか修めていたりする。

 その中には、魔法のコースもあり優秀な成績を取っていた。

 

 卒業した元学生とその親族たちが集まったパーティで、ある一角が注目を集めていた。

 それもそのはずで、そこには王族一家が集まっていた。

 フローリア女王と繋がりを持ちたい者達が、熱視線を浴びせているのだ。

 学園在籍中にトワと深い繋がりを持った学生も当然いるが、多くは顔見知り程度、良い所で挨拶を交わしていたくらいなのだ。

 将来さきのことを考えれば、今のうちから関係を持ちたいと思うのは当然のことだろう。

 

 そんな中でトワたちは、今日ばかりはトワを中心に、会話を進めていた。

「お兄様、ご卒業おめでとうございます」

「おめでとうございます」

「ああ、有難う」

 まずは、先日の塔の調査に行った時とは一転して、豪奢なドレスに身を包んだミアが挨拶をした。

 さらに、これまたいつもとは雰囲気が変わっているリクが続いた。

 それに笑って答えたトワが、視線をフローリアへと向けた。

 視線を向けられたフローリアは、鷹揚に頷いた後、トワへと祝いの言葉を掛けた。

「卒業おめでとう」

「ありがとうございます」

 お互いに堅苦しい挨拶だが、この場は公の場となるため仕方のないことなのだった。

 

 その後は、学園生活中にトワと繋がりを作った友人たちと会話を交わしたり、何とか繋がりを持ちたい親たちの口(?)撃を躱したりした。

 この程度の事が出来なければ、これから先に訪れる社交をこなすことなどできないのだ。

 当然トワもそれがわかっているので、安易に逃げたりはしていない。

 ある意味で、このパーティが社交デビューとも言えるのだ。

 最初の印象は、ずっと尾を引く場合がある。

 この場で「王子は社交が苦手」というイメージが付いてしまえば、それがそのまま後まで続いてしまうのだ。

 余談だが、この場でミアやリクに話しかけるのは、ルール違反となる。

 あくまでのこの場は、学園を卒業した者が主役なので、それ以外の者に話しかけるという事は、主役たちを無視しているとみなされる。

 それこそ、社交を知らない素人、と周囲から判断されてしまうのである。

 

 熱気にあふれながら淡々と進むパーティが最高潮の雰囲気になったのは、ダンスが始まった時である。

 フローリアかミアのどちらかを選ぶと思われていたトワが、一人の女性を指定して踊り始めたのだ。

 こう言うダンスの場で最初に指名するのは、基本的に将来のパートナーとなってほしい、という意味合いが込められている。

 勿論、婚約と言った具体的なものではないのだが、それでも周囲は婚約に近いような認識になるのだ。

 これに慌てたのは、トワに将来の相手を送り込もうと目論んでいた親たちだ。

 学年が同じでなくとも、同じ年頃の子や親族を持つ者達は、当然のように王妃を送り込むことを考えていたのだ。

 それが、見事に梯子を外されたことになる。

 当然、相手の女性に注目が集まることとなる。

 そして、パーティが終わった後も、社交界ではその話でもちきりになるのであった。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

 ダニエラ・バルトルプは、セントラル大陸にあるとある街の男爵家の長女だった。

 男爵家と言っても、その町ではほとんど町民たちと変わらない生活をしていた。

 勿論貴族を名乗っているので、商売を行ったりはしているのだが、町に入り込んでいる大商人たちとは比べるのもおこがましい程の規模だった。

 そんなダニエラを相手に、トワが愛を育んで来れたのはひとえに周囲の親友たちの協力があったからこそである。

 トワとダニエラの親友たちは、自分の親たちも含めて周囲の者達には、一切二人の交際について話してこなかった。

 まさしく忠臣と言えるだろう。

 そんな積み重ねがあるからこそ、トワも彼らのことを信用しているのだ。

 

 流石に二人共、親には交際していることを話してある。

 ちなみに、トワがダニエラをフローリアに紹介した時は、「いいのではないか」とあっさりと流していた。

 余りの放任(?)っぷりに、逆にダニエラが不安になっていた。

 そんなダニエラを見たフローリアは、自分のことを引き合いに出して笑っていた。

「そもそも私の相手が相手だからな。トワが誰を選んでも問題なかろう。むしろ、トワが選んだ相手を信用するよ」

 そう言ったフローリアは、トワが選んだ相手を優しく見つめていた。

 

 変わりに大騒ぎになったのは、バルトルプ家の方だった。

 卒業間近になってからダニエラがトワを紹介した時には、父親は真っ青になり母親はもう少しで気を失いそうな表情になっていた。

 そして、その後は「うちの娘では格が・・・・・・」とか「つり合いが・・・・・・」とか言っていたが、トワが一つ一つ懇切丁寧に説得することとなった。

 一言で言えば、「最終的には父親に認められることになるから問題ない」という事になる。

 未だ対面したわけではないが、ダニエラはトワの父親が現人神であることは知っている。

 当然ダニエラの両親もそれを知っているので、まさしく魔法の言葉と言えるのであった。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

 そんなこんなでパーティが終わって数日たったある日。

 遂にダニエラが考助と対面することになった。

 前もってトワから話を聞いていた考助は、息子が連れて来た相手を落ち着いてみることが出来た。

 現人神ではあるが、こういった部分ではまだ人間の感覚が抜けていないのである。

 そして、考助がダニエラを見た第一印象は、「美人というより可愛いといったほうがいいかな」という物だった。

 いくら現人神になったとはいえ、初対面で本質を見抜ける力はない。

 ステータスを見ることは出来るが、それはあくまでも外的な要素に過ぎないのだ。

 一方で、出来すぎな息子のトワが選んだ相手なら問題ないだろうとも考えていた。

 というわけで、考助とダニエラの初対面は、無事に終了することとなった。

 

 付け加えておくと、こっそりとばれないようにピーチが占いをした結果は、相性抜群というものであった。

トワのお相手が決定いたしました。

考助のように第二夫人第三夫人を作るかどうかはまだ決めていませんw


ちなみに、最後の行を書いてから気付いたのですが、ここしばらくピーチが出てきていなかったですね><

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