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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第2部 塔のあれこれ(その9)

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(9)調査

 管理層にミアがリクを伴って来ていた。
 最近のミアは、来年の学園の卒業に向けて、塔についての情報を集めているのだ。
 内容までは詳しく聞いていないが、塔についてまとめた物を卒業の論文にするらしい。
 今年卒業のトワは、既に論文を提出して卒業が決まっている。
 タイトルは、「ラゼクアマミヤとアマミヤの塔の今後について」という物だった。
 次代の王と決まっているトワが発表したこの論文は、多くの注目を集めていた。
 勿論、提出する前に、考助とフローリアの添削が入ったことは言うまでもない。
 ただし、考助は目を通すだけ通したが、特に何かを訂正すると言ったことは無かった。
 トワが次代のトップを歩むことになることは、既に既定路線になっている。
 余程おかしな道に進まない限りは、自分が口出しする必要はないと考えているのである。

 そう言う意味では、最近になって塔の各階層の調査を始めたミアにも具体的な口出しはしていない。
 危険な上層への出入りは、コウヒやミツキと言った護衛がいない限りは出入りは駄目だと言っているくらいだ。
 既にミアには、転移門をある程度自由に使える権限を渡してある。
 先程の上層への出入りを制限しているくらいだ、後はほぼ自由に各階層に出入りできる。
 考助の許可を一々取っているようでは、研究(?)もままならないと思い、さっさと登録したのだ。
 ついでに、リクが付いてきているのは、色んな階層に出てくるモンスターを討伐するためだ。
 リク自身の戦闘能力は、何とか一人で初級クラスのモンスターを倒せるようになったと言った所だ。
 そのため護衛として、コウヒやミツキが付いて行ったり、高ランクの狐達が必ず一緒に付いている。
 それでもリクは、年から考えれば、十分すぎるほどの戦闘能力を持っているのだ。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 ミアとリクに付き添うようにコウヒがいるのを見た考助は、一応何かあった時のために確認をすることにした。
「今日は中層に行くのかい?」
 いくらコウヒが付いているとはいえ、高ランクモンスターが出てくる上層に立ち入ることは禁止している。
 コウヒ一人だけだと、ミアやリクのような足手纏いを複数抱えて上層をのんびりと視察するのは、どう考えても危険すぎる。
 コウヒがいれば、権限上は上層へと出入りすることが出来るが、コウヒが考助のいう事を反故にすることはあり得ないのだ。
「はい。今日は、第六十層辺りのダンジョンを見てみます」
「六十って・・・・・・あのあたりは、不死系が出てくるんじゃなかった?」
 考助は、思わず目を瞬かせた。
 不死系というのは、端的に言うとゾンビなどが出てくる。
 その最大の特徴として、階層によっては凄まじいまでの匂いが漂っているのだ。
 ミアがその匂いを苦手として、今まで避けていたことをきちんと考助は知っている。

 案の定、ミアは不死系という言葉に反応して顔をしかめた。
「そうなんですが・・・・・・苦手だからと言って、いつまでも避けてはいられないですから」
 その言葉には、塔のことを調べるには、苦手な階層もしっかりと調査するという意思が感じられた。
「そう。・・・・・・だったら、コウヒに頼んで匂いを消してもらうのは無しでね」
「え?! お、お父様??!!」
 突然のことにミアが慌てた様子を見せた。
 どうやら前もって、消臭の魔法を使うように頼んでいたらしい。
「それだけ熱心になっているんだから、当然匂いも直接感じ取るんだよね?」
 そう言った考助の表情は明らかにからかっている物だったのだが、それが見えているのかいないのか、ミアがむっとした表情になった。
「わかりました。ちゃんと匂いも感じてきます」
 考助にしてみれば、ちょっとからかってみただけだったのだが、どうやら意地になってしまったらしい。
 さっさとコウヒに向かって、先程の話は無しでと消臭の魔法を取り消してしまった。
 本人がやる気になっているんだったら特に止める必要もないかと、考助もそれ以上は言わなかった。
 代わりに、今度は一緒にいたリクに言葉を向けた。
「ミアが我慢するんだから、リクも消臭は無しだよね? 冒険者になったら常に消臭の魔法が使えるわけじゃないんだし」
「大丈夫。僕は最初から掛けてもらってないから」
 未だにリクは、冒険者になることを目指しているのだ。
 自分のやるべきことを理解しているのか、リクはしっかりと頷いてそう言った。

「そうか。だったらもうこれ以上は何も言わないよ。しっかりと調査してくると良い」
「それじゃあ、行ってきます」
「行ってきます」
 考助の言葉を皮切りに、ミアたちは転移門を使って転移をするのであった。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 ミアたちが戻って来たのは、考助が見送ってから三時間ほど時間が経っていた。
 あれほど嫌がっていた腐臭のする階層に、長時間いたと考えていなかったのだが、きっちりとそれだけの時間を調査していたようだった。
 長い間腐臭のする場所にいたせいか、若干匂いが染みついていた。
「あ~、生き返るわ! 空気がおいしい!」
 戻ってくるなりミアがそう言って深呼吸をしていた。
 ミアの隣ではリクも同じように深呼吸を繰り返している。
「なんだ。今までずっと籠っていたのかい?」
「そうよ! ちゃんと調査しろって言ってましたから。でもおかげて色々新しいことがわかりましたわ」
 目を輝かせてそう言うミアに、考助は苦笑した。
 一つのことに熱中して、我を忘れてしまう状態には身に覚えがある。
 恐らく今の自分の状態に気付いていないのだろうと、考助は助言をすることにした。
「そう。それじゃあ、まずは結果をまとめる前に、風呂にでも行ってくると良い。匂いが染みついているよ」
 考助がそう言うと、その事実を今さら思い出したかのようにミアが顔色を変えて、慌てて袖口を鼻まで持って行きスンスンと匂いを嗅いだ。
「い、いやですわ! すぐに入ってきます!」
 叫ぶように言い残してから淑女の嗜みも忘れて、ミアはバタバタと風呂場へと駆けだして行った。

 ミアの様子を首を振って見送った考助は、リクの方を見た。
「・・・・・・やれやれ。リクはしばらく待っていると良い」
「うん。あ、でもこのまま座ると匂いが・・・・・・」
 匂いが付いたまま椅子に座ったりすると、匂いが移ってしまうことを気にしたリクが、そう言って口ごもった。
 そんなリクを見て、考助は笑って答えた。
「風呂場の横にある部屋は、元々そういう時のために作られているから、気にしなくていいよ。コウヒ、連れて行ってあげて」
 塔の管理をすると、どうしても匂いが付いてしまう階層に出入りすることがある。
 コレットたちと今のような関係になる前は、ちゃんと別々に風呂に入っていたのでそう言う部屋もきちんと用意されているのだ。
 ここ最近では、ほとんど用をなしてはいなかったのだが。
「わかった」
 リクがそう言って頷くと同時に、コウヒがリクを連れ立って行った。
 子供たちが、特にミアが頻繁に出入りするようになった管理層は、良くも悪くも騒がしくなるのであった。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

「それで? どうだったの?」
 風呂に入ってさっぱりしたミアとリクが揃ってから、考助がくつろぎスペースで問いかけた。
「それはもう、色々と新発見がありましたわ」
「僕もゾンビとの戦い方とか色々わかった」
 主に匂いの面ではひどい目に遭ったようだが、それぞれ収穫はあったらしい。
「そうか」
 考助にしてみれば、中身はともかくとして、無事に戻ってきてくれただけで十分である。
 特に、それ以上追及することなく、よかったと頷くだけだった。

「・・・・・・それだけですか?」
 だが、ミアは考助のその態度に不満を持ったようだ。
 その顔には、もっと詳しく聞いて、と書いてある。
 考助は一度だけ苦笑をして、ミアとリクに詳しい話を聞くのであった。
ゾンビなので、しっかりと匂いはあります。
考助も腐臭には慣れていなかったので、攻略時は苦労していました。
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