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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第2部 スミット王国

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(7)巫女

 クリストフがイエズから「コウ」の正体について話を聞いた翌朝。
 昨夜遅くまで仕事に追われて夜更けまで作業をしたために、クリストフは寝坊をしてしまった。
 普段なら自力で目を覚ますのだが、今日はドアをノックする音で目を覚ました。
「クリストフ様、失礼します。起きていらっしゃいますか? ・・・・・・クリストフ様?」
 名前を呼ばれたことによって、ハッと目を覚ましたクリストフは軽く頭を振って返事を返した。
「どうした? 何かあったか?」
「イエズがすぐに話があると言っています」
「・・・・・・分かった。すぐに行くと伝えろ」
 そう返事を返したクリストフは、扉の外にいた側近が遠ざかるのを確認してからベットから下りた。
 周りを見渡していつもと違う光景に目を細める。
 今いる場所がアマミヤの塔の大使館の一室であることを思い出してから、すぐさま普段着へと着替えた。
 城にいる時のように家令がいるわけではないので、全て自分で用意をする。
 クリストフ自身は王子だが、軍にいたこともあるので身の回りの物は自分で用意できるのだ。
 すぐに身を整えた後、イエズの元へと向かうのであった。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 何処にイエズがいるのか分からなかったので、一度レメショフから聞こうと彼の執務室へと向かった。
 昨日のうちに、何処が執務室になるかは聞いている。
 家具などは、事前準備で用意してあるのだ。
 一応、ノックをしてから声を掛けた。
「クリストフだ。質問があるのだが、いいか?」
「クリストフ様?! ど、どうぞ!!」
 中から若干慌てたような物音がした後で、返事が返って来た。
 まさか、クリストフ自身がいきなり来るとは考えていなかったらしい。
 苦笑をしながらドアを開けると、中にはレメショフ以外の者がいた。
 これから会いに行こうとしていたイエズである。

「おや。ここにいたのか」
「はっ。私の用事にはレメショフ伯爵も含まれていたため先に報告をと思いまして」
 イエズの表情には、クリストフの機嫌を伺うようなものが含まれていた。
 クリストフをさて置き、先にレメショフに報告したことを怒られると思っているのだろう。
「気にするな。私が寝坊したのが悪い。それよりも報告とやらは終わったのか?」
「いえ。これからです」
「そうか。では、ついでに私も一緒に聞こう」
 どうせ同じ内容の報告であれば、わざわざ二度手間を掛ける必要はない。
 イエズはクリストフの答えに、一礼をしてから報告をした。
「かしこまりました。それで、報告ですが、「あの方」から呼び出しがかかりました」
「・・・・・・何?」
 イエズがわざわざ「あの方」と言うのが誰であるのか、クリストフはすぐに思い当たった。
 流石に昨日の今日の事なので忘れるはずもない。
 逆に昨日の話し合いに参加していなかったレメショフは不思議そうな表情になっていた。

「ば、馬鹿者。なぜすぐに報告に来ない?! すぐに用意をして・・・・・・」
 自分の寝坊で遅くなったことを忘れて、クリストフは若干慌てた様子を見せた。
 そんなクリストフに、イエズは落ち着くように手を差し伸べた。
「落ち着いてください。謁見の時間は本日の昼すぎからです」
 イエズの答えを聞いて、クリストフは全身の力が抜けるのを自覚した。
 自分がここまで慌てるのも珍しいと、心の中で苦笑をした。
「そうか。・・・・・・済まなかった」
「いえ。私も<神託>を貰った時は、慌てましたから」
「神託!? 其方がか?」
 驚くクリストフに、イエズは頷いた。
「はい。あれは間違いなく<神託>です。まあ、あの方はただのシンワだと仰っていましたが」
 神託を貰って慌てたときのことを思い出し、イエズは苦笑した。
 そんなイエズに、クリストフは同情めいた視線を返した。
「あの・・・・・・一体、どういうお話なのでしょうか?」
 昨日の話をイエズの聞いていないレメショフが、意味が分からない様子で二人を見ている。
 そんなレメショフを見て、クリストフはイエズに視線だけで説明するように求めた。

 イエズの説明を聞きながらだんだんと顔を青くしていくレメショフを見て、クリストフはこれからの事を考えてため息を吐くのであった。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 イエズが神託を受けた面会場所は、街の中にある神殿だった。
 神殿の大きさは中規模なものだ。
 スミット国内でもそうだし、南大陸内を歩けばいくらでも同じ規模の神殿はあるだろう。
 問題は、その規模ではなくこの神殿が作られることになった経緯だ。
 当時塔の管理者だったコウスケと言う人物が、塔の力を使って一瞬で建ててしまっただけでも驚嘆に値する。
 しかもそれだけではなく、三大神の神威召喚を行ったというのだ。
 現在ではそのコウスケなる人物が現人神であることは、三大神が認めているという。
 ある意味で、この神殿はアマミヤの塔の力そのものを示していると言ってもいいだろう。
 クリストフたちはその力を発現した人物その者に会おうとしているのだ。
 アマミヤの塔に町が出来たばかりの当初は姿を見せることはあったらしいが、ラゼクアマミヤという国が出来た現在は現人神の姿を見たという話は全く聞かなくなっていた。
 無理やり面会をもぎ取ったゲイツ王国の末路を聞けば、自ら藪に手を突っ込む馬鹿はいないという事だろう。

 何人もの国王と面識のあるクリストフと言えど、当然神との対面は初めての事だ。
 緊張しつつ神殿の扉を開こうとしたが、その前にスッとその扉が開いた。
 そして、中から二人の女性が姿を見せた。
 その内の一人を見て、思わずクリストフは息を飲んだ。
 隣にいたレメショフとイエズが同じような状態になっているのを感じる。
 今まで会ったことが無い程の美貌の持ち主だったのだ。
 その女性はクリストフをまっすぐに見て、問いかけて来た。
「スミット国のクリストフ様でしょうか?」
「あ、ああ・・・・・・」
 かろうじてクリストフが返事をすると、女性はニコリと笑った。
「では、こちらへどうぞ。主がお待ちです」
 そう言って、その女性はすぐに奥へと向かってしまった。
 それを見たクリストフは、一瞬で浮ついていた心が静まった。
 これから神と対面するのに、このような精神状態では駄目だと思い直したのだ。

「こちらへどうぞ」
 もう一人の女性がそう言って神殿の奥へと指し示した。
 二人共巫女服を着ているので、この神殿にいる巫女なのだろうとクリストフ辺りをつける。
「其方たちは、この神殿に勤めているのか?」
「これは失礼しました。私の名はリリカと申します。それで、あちらが・・・・・・」
 リリカと名乗った女性が、一行の先を歩く女性を示して、
「コウスケ様の巫女であるシルヴィア様になります」
「な、なんと・・・・・・!」
 シルヴィアの名前に反応したのは、イエズだった。
 イエズは、現人神の巫女がシルヴィアと言う名であることを噂で聞いていたのだ。
 思わず立ち止まって、神官としての挨拶をかわそうとしたところを、シルヴィアが困ったような表情になってそれを止めた。
「主が奥でお待ちですので、挨拶は後でお願いしますわ」
「あ、ああ、そうか。そうでしたね」
 シルヴィアに止められたイエズは、同意するように頷いた。
 それを見たシルヴィアは、再び奥へと歩みを進めるのであった。
シルヴィア&リリカ登場!
次はいよいよ考助と対面です。
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