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塔の管理をしてみよう  作者: 早秋
第2部 塔のあれこれ(その3)
369/1358

(4)子育て

今話は、本筋とは全くかかわりのない話になっています。

 フローリア女王の居城は、正式名称としてアマミヤ城と呼ばれている。

 アマミヤの塔の中にある城なのだからアマミヤ城でいいのでは、という安直な命名だったのだが、今では普通にそう呼ばれている。

 ちなみに、第五層の街はいまではアマミヤ(の街)と呼ばれている。

 正式な名前は未だに無いのだが、アマミヤ城の城下町になっている現状としてはアマミヤでもおかしくはない。

 ラゼクアマミヤ王国が出来てから三年たった今では、アマミヤの街という名称は完全に住民たちに定着していた。

 

 フローリア女王の居城であるアマミヤ城のとある一角は、王族ではない別の者の住まいとしてあてられていた。

 それが誰かというと、フローリアの補佐的な立場にいるシルヴィアだった。

 シルヴィアは最初、城下町に家を借りようとしようとしていたのだが、フローリアが強引にあてがったのだ。

 理由としては、一々街まで部下を呼びに行かせるのが手間だから、という物だった。

 その理由に、シルヴィアは頭を抱えたが、フローリアの側近たちは逆に喜んだ。

 シルヴィアは、政治的な問題に口を出すことはほとんどない。

 フローリアの相談相手として話を聞いたりすることはあるが、当然ながらその手の問題は側近の大臣たちに任せている。

 シルヴィアがフローリアの傍にいるのは、宗教的な問題が起きた時に対応するためだ。

 簡単に言えば、現人神である考助に対しての様々な問題を対処しているのだ。

 ラゼクアマミヤは、別に考助に関する窓口ではないのだが、他の大陸では完全に同一視されている。

 どれほど口を酸っぱくして関係無いと言っても無駄なのだ。

 これに関しては、ラゼクアマミヤ側も仕方がないと思っている面もあるので、どっちもどっちなのだが。

 だからと言って、考助に関する案件をラゼクアマミヤで勝手に処理することは出来ない。

 何しろ神に関わることなので、下手を打つと国自体が無くなってしまう可能性もある。

 フローリアが女王とはいえ、そこは間違ってはいけない。

 むしろ、だからこそ明確に区分けをする必要があるのだ。

 そのためのシルヴィアなのだ。

 考助の巫女として既に一般にも知られているシルヴィアは、打ってつけの人材というわけなのだった。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

 その日の業務を終えてあてがわれた部屋のドアを開けたシルヴィアは、目の前の光景を見て思わず微笑んでしまった。

「あらあら」

 先日生まれた我が子を守るように、一匹の狐が丸くなって我が子と一緒に眠っていたのだ。

 勿論、乳母も何かあった時のためにすぐ傍に控えている。

 部屋に入って来たシルヴィアに気付いて、視線だけで挨拶をしてきた。

 シルヴィアも子供を起こさないように頭を下げる。

 考助の巫女として忙しい日々を送っているシルヴィアは、やはり自分だけで子育てをするわけには行かずに乳母を雇う事にしている。

 フローリアの子達と同じように、周囲に与える影響が大きすぎるので、考助が直接子育てに関わることはほとんどない。

 考助自身は残念そうな表情になっていたのだが、こればかりはどうしようもなかった。

 シルヴィアがラゼクアマミヤの運営に関わらずに、管理層だけで過ごしていればそういう事もなかったのだろうが、シルヴィアが説き伏せた形になっている。

 

 シルヴィアの第一子は、ココロと名付けた。

 名付けは考助だ。

 漢字では「心優」と書くのだが、そもそも漢字という概念が無いこの世界では、ココロという音だけで表記される。

 いずれは漢字とその意味も教えるというのが、今の考助の野望になっている。

 それはともかくとして、そのココロの傍にいる狐はワンリだ。

 フローリアの二人の子供もそうなのだが、常に傍に狐達がいる。

 狐達は、乳母が舌を巻くくらいに子育てが達者で、子供が泣きそうになれば尻尾や体中を使って慰め、下の時は匂いを察して乳母に知らせたりしている。

 子供たちも傍に狐がいないと不機嫌になったりするほどだった。

 両親ともに傍にいないことが影響している可能性もあるが、フローリアもシルヴィアも有難く狐達の手を借りているのであった。

 狐達の間で何か基準があるのか、子育ての手伝いには人化できる者しか来ていない。

 とはいえ、子供や乳母の前で人化するのは滅多になく、ほとんど狐の姿で過ごしている。

 シルヴィアもワンリに一度だけ理由を聞いたのだが、「狐の姿の方が、子供の気持ちが分かりやすいから」という返事が返って来た。

 たまに人化をして見せているのは、子供が大きくなったときに驚かないようにしているためだ。

 その理由をシルヴィアが聞いたとき、そこまで考えているのかと感心したものだ。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

 ワンリは眠っていたとはいえ流石に狐というべきか、野性を失っていないというべきか、シルヴィアが帰って来たことはすぐに気付いた。

 少しだけ顔を上げてシルヴィアを見たが、すぐに頭を下して再び寝入ってしまった。

 ここにいる時のワンリは、狐の姿でいるためか完全に子守りに集中している。

 あくまでメインはココロであると主張するように、シルヴィアのところまで近寄ってくることはほとんどない。

 かといって、シルヴィアが撫でたりするのを嫌がるわけではないのだが。

 

「ふ・・・・・・ふぇぇ・・・・・・っ」

 娘が寝ている所から少し離れた場所で乳母から今日の様子を聞いていると、一瞬だけ泣き声が聞こえた。

 目を覚まして傍に誰もいないと思って泣こうとしたらしいが、ワンリがすぐに気が付いて尻尾をゆらゆらとさせたらしい。

 今も揺れる尻尾を右に左にと視線で追っていた。

 とは言え子供はすぐに飽きる。

 すぐに集中が切れるが、それに気づくと頬をペロペロ舐めたりしている。

 微笑ましい様子をシルヴィアもニコニコしながら見守っていたが、ココロがシルヴィアに気付いて手を伸ばしたところで抱き上げることにした。

 ワンリも心得ているのか、それに対して抗議することなくシルヴィアの足元でまた丸くなった。

 

 しばらく母親の腕の中で大人しくしていたココロだったが、最初に異変に気付いたのはやはりワンリだった。

 椅子に座ってココロを抱きかかえているシルヴィアの膝の上にぴょんと乗ってきた。

 その態度にシルヴィアもピンときた。

「あら。おむつを変えた方が良い?」

 確認するようにワンリを見るが、どうやら正解だったようだ。

「はいはい。新しいのをお持ちしました」

 シルヴィアとワンリのやり取りを見てすぐに気付いた乳母が、替えのおむつを持ってきた。

「有難う」

 おむつを受け取ったシルヴィアは、手慣れた様子で変えていく。

 そして、ワンリの見立てに間違いはなかった。

「だーっ!」

 新しいおむつに変わったココロは、機嫌よさげに手を振り回すのであった。

 

 このように子守りとして非常に優秀な狐達だが、それは子供たちが成長してからも全く変わらない。

 小さい子供の時は遊び相手として動き回り、成人してからは癒しの存在としてずっと傍にいることになるのであった。

というわけで、ワンリ(および狐達)の子育て風景でしたw

ちなみに、子供が大きくなってくると人化する比率も上がっていきます。

普通に言葉で会話したほうが、子供の成長にはいいですから。

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