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塔の管理をしてみよう  作者: 早秋
第2部 塔のあれこれ(その3)
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(2)大規模討伐

 ラゼクアマミヤが建国してから二か月ほどが経った第五層の街では、ちょっとした喧騒に包まれていた。

 騒ぎの中心は、城門前の広場だ。

 そこには、二百人近い集団が集まっていた。

 その集団は、統一された武装をしている。

 町を守っている警備兵とはまた違った装備という事は、一目でわかる。

 彼らは、セントラル大陸では初めて組織された対モンスター戦用の戦闘集団だった。

 所属的にはラゼクアマミヤに所属している軍隊という事になる。

 ただし、セントラル大陸では他に国家がないために人類同士の戦争になることはまずあり得ない。

 あったとしても未所属の村や町との散発的な小競り合い程度になるだろう。

 しかも、勢いのあるラゼクアマミヤに手を出そうという所はほとんどないに等しい。

 他大陸に目を向けても、船で渡ってこないければならないという地理的条件に加えて、その船が塔の攻撃兵器で沈められるとなれば、手を出そうという国家はほとんど無い。

 というわけで、対人用の軍はほとんど必要のないラゼクアマミヤだったが、対モンスターとなると話は別だった。

 セントラル大陸は、モンスターが跋扈する魔大陸だ。

 いつモンスターの大発生が起こってもおかしくはない。

 そういったことを考えれば、セントラル大陸で初めて出来た国家であるラゼクアマミヤが、対モンスター用の軍隊を用意するのは何もおかしくはなかった。

 しかも、塔の中で軍を維持していれば、転移門を使って距離の問題をある程度解消することが出来る。

 出先機関のような物は当然必要にはなるのだが、あくまでもそれは監視の意味合いが強いのだ。

 勿論モンスターが相手である以上は、そんな理屈は通用しない場合もある。

 とはいえ、大発生したモンスターの襲撃を今まで以上に防ぐことが出来る可能性があるのだ。

 普段町の周辺で活動している冒険者からの情報で大発生の兆候を発見すれば、すぐに駆けつけることも出来る。

 そのためには、今までに無かった新しい組織を作る必要があったのだが、それを形にしたのが城門前にいる彼らという事になるのだ。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

 ラゼクアマミヤが建国してから二か月。

 彼ら・・・・・・討伐軍は、座学に訓練に励んでいた。

 警備兵と違い相手は人間ではなくモンスターを対象としている。

 そのことから、当然ながら元は冒険者が多い。

 新兵もいるので、これが初陣だという者もいる。

 その討伐軍が向かっているのは、第四十層になる。

 今回の件で、金鉱山を用意するために第四十層を今までの動線から独立させて、第五層から直接行き来できるように転移門を設置した。

 今まで繋がっていた第三十九層と第四十六層は、第四十層を飛ばしてそれぞれで行き来できるようになっている。

 第五層⇔第四十層、~第三十九層⇔第四十六層~という感じになっている。

 勿論第五層が今まで繋がっていた第四層と第六層はそのまま繋がっている。

 第四十層は元は砂漠地帯だったが、今回の件ために大きな鉱山を抱える階層に変化させた。

 当然、メインは金山という事になる。

 階層を丸々作り変えたため少なくない出費になったが、今後の事を考えれば大したことにはならないだろう。

 更に、今回討伐軍を向かわせているのも、一部回収を行わせるためだ。

 彼らの訓練と合わせて、モンスターを召喚させて討伐をさせる予定になっているのだ。

 

 第四十層に転移した討伐軍は、すぐさま山に向かうわけではなく拠点の作成を行った。

 今回の訓練は長期戦の訓練も兼ねているのだ。

 全部隊の拠点の用意をしている間に、偵察部隊が周辺及び山にいるモンスターの調査も行っている。

 当然ながら考助が用意したモンスターの数や種類は知らせていない。

 どこにどんな配置をしたかも分からないので、偵察も重要になってくるのだ。

 だったら先に偵察をさせた方が良いのでは、という意見も当然出たのだが、繰り返しになるが長期戦の訓練も兼ねているのでその意見は却下された。

 訓練の名目は、未知のエリアの探索及び制圧、となっている。

 勿論、金山があることだけは知らせてある。

 場合によっては、討伐軍はセントラル大陸の環境調査が任務となることも視野に入れているので、今回の訓練はその実地訓練ともなっているのである。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

「おい! 右からくるぞ!」

「二時方向に新たに追加、五匹!」

 戦場を様々な掛け声が飛び交っていた。

 今回の戦場に出される新兵は巻き込まれないようにするだけで精一杯。

 モンスター討伐のベテラン兵(元冒険者)は、自分に向かって来たモンスターを討伐するのにおわれるという状態になっていた。

 何故そんな状態になっているかというと、出現していたモンスターの数が問題だった。

 

 偵察部隊の報告を受けた上層部は、その報告を聞いて何の冗談かと思った。

「間違いはないのだな?」

「は、はい。どう少なく見積もっても、中級に位置するモンスターが最低でも二百。多い場合は三百以上はいます」

 繰り返されるその報告に、テント内は重苦しい雰囲気に包まれていた。

 一同の内心は、何の冗談だ、という物で統一されていただろう。

 偵察の報告数が曖昧なのも、それ以上詳しく調べると危険だと判断して引き返して来たためだ。

 上層部は、自分たちも慢心していたことを思い知らされた。

 今回の戦闘を用意したのは、塔の管理者だ。

 であれば、攻略不可能な物は用意するはずがない簡単な物だと、どこかで思い込んでいたのだ。

 犠牲もなしに乗り切れるだろうという気分が、あっという間に吹き飛んでしまった。

 新兵を含む二百の戦力に対して中級モンスターが三百。

 どう考えても舐めてかかれる相手ではない。

 こちら側の二百の戦力が全てベテランであれば、どうとでも出来る数ではあるが、新兵も含むとなるとそうも言っていられない。

 だからと言って、彼らに引くという選択肢は無かった。

 彼らが忠誠を誓っている女王から、倒せるはずの数だと言われてきているのだ。

 結果として上層部の面々は、本格的に討伐の作戦を立てることになったのである。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

 入り乱れる戦場を、上空から見つめている者達がいた。

 考助を含めた管理メンバーである。

 当然と言うべきか、フローリアも含まれている。

 彼らは魔法で浮いているというわけではなく、コー達飛龍に載って戦場の様子を見ているのだ。

 当然会話も神力を使っての会話になる。

<中々善戦しているけど、そろそろ厳しいかな?>

<・・・・・・そうだな。このまま続ければ、間違いなく犠牲が出るだろう>

 これだけの戦闘でありながら、死者はまだ出ていない状態だ。

 これは訓練であるからと、死者が出ないように厳命しているのだ。

 そのために、攻め切れていないということもあるのだが。

<しかし、この規模の集団で攻めきれないとなると、問題があるのではないかの?>

<まあ、その辺は今後の課題だろうな>

 シュレインの懸念に、フローリアは冷静に返した。

 フローリアとしては、今回の件で現在の討伐軍の限界を上層部が知れただけでも収穫があると考えている。

<じゃあ、介入する?>

<うむ。そうしよう>

 これ以上続けても犠牲者が出るだけだろう。

 フローリアは、さっさと考助達が介入することを決めるのであった。

 

 考助達が介入した後は、あっさりと決着がついた。

 何しろ本来の力を出したナナが、本気で一言遠吠えしただけで、モンスター達が戦闘を放棄してその場から散って行ったのだ。

 その後をナナが嬉しそうに駆けて行ったのを、討伐軍の戦闘を継続できていた者達が呆然と見守っていた。

 本来の姿を晒したナナはまさしく神獣と言った風貌であり、とてもではないが手を出せるといった雰囲気ではなかったのだ。

 突然起こった戦場の変化について行けなかったというのもあるが。

 その時ナナの姿を見た者達が、ナナの事を<塔の守護獣>と呼ぶようになることは、考助を含めてまだ誰も知らないのであった。

討伐失敗! ナナ無双!


・・・・・・なぜかナナ無双の話になってしまいました。

最初はそのつもりはなかったんだけどなあ。

ちなみにこの後討伐軍はきちんと討伐を果たして、ラゼクアマミヤは見事に金山を手に入れることが出来ます。

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