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塔の管理をしてみよう  作者: 早秋
第2部 旅(フロレス王国編)
334/1358

(3)定番イベント

 エイレンの町の公的ギルドでは、クラウンカードを使用して手続きをすることが出来なかった。

 クラウンの認知度はあるのだが、そのカードが本物かどうかを確認する手段がないのだ。

 もし本物だと分かれば、すぐにでも手続きできるのに、と受付のお姉さんが言っていた。

 公的ギルドで出しているカードであれば、共通の規格を使っているためにすぐに読み取ることが出来る。

 だが、クラウンカードは本物だと識別すること自体が出来ないので、手続きには使えないのである。

 その話を聞いて、この辺は今後の課題だな、考助は考えた。

 クラウンカードを識別する機械自体は、さほど手間を掛けなくとも作ることが出来る。

 もしクラウンの支部が世界中に広まるのであれば、そうした物も作って行かないといけないだろう。

 エイレンの町の公的ギルドでの手続きは、さほど時間がかからずに終わっていた。

 ただ、並んでいる人がいなかったことを良い事に、考助が色々聞いていたために、時間がかかってしまった。

 受付のお姉さんも人がいないことがわかっていたためか、考助の質問攻めに嫌な顔せずに付き合ってくれた。

 そう。定番のイベントが発生するくらい時間が経っていても。

 

「聞いてるのか、おい!!」


 野太い男の声が、考助の耳に聞こえて来た。

 というか、先ほどから何か言っていたのだが、余りに中身がないので聞き流していたのだ。

 ミツキをはじめとして、それに引けを取らないピーチがいるのだ。

 これで絡まれないほうがおかしいだろうと、考助はどうでもいいことを考えていた。

 考助の横では、ワンリがピーチの袖を引っ張ってこんなことを聞いていた。

「どうしてこういう人たちって、同じような言動をするの?」

「う~ん。どうしてでしょうね~。私達には計り知れない、様式美があるのかもね」

「大体、お兄様をどうにかしたからって、私達がなびくとは限らないのに」

 なびくなんて言葉をどこで覚えたんだろうと、どうでもいい事を考えてしまった考助である。

「まあ、こういう人たちは、男さえどうにかすれば、後はどうとでもなると考えているからね」

 ピーチに続いて、ミツキまでも男を逆なでするようなことを言った。

「あー。こらこら、君たち。わざわざ煽るようなことを言わないでくれる?」

「え? あ、ご、ごめんなさい」

「私達が何を言ったって、こういう人たちは変わらないわよ」

「そうですね~」

 考助が諌めても、反省したのはワンリだけで、後の二人はどこ吹く風だった。

 二人が言っていたことは、思いっきり同意したい内容だったので、考助としてもさほど強くは言わなかった。

 

「お前ら、いい加減にしろ!!」

 

 無視し続けていたら、流石に堪忍袋の緒が切れたのか、男が考助につかみかかろうとしてきた。

 流石にそれは勘弁してほしかったので、考助はスッと後ろに何歩か引いて躱した。

「一応聞くけど、こういった場合のギルドの対応ってどうなっているのかな?」

「私達は、冒険者同士のトラブルには、基本的に不干渉です」

「基本的に、ね」

「はい。基本的に、です」

 考助が念を押すと、受付のお姉さんはニッコリと笑って答えた。

 男の様子にも動じていない所を見ると、こうしたことは日常的に起こっているのだろう。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

 さてどうしようか、と考助は考えた。

 妖精たちを出せば目の前の男をどうにかすることは、簡単である。

 だが、そうすると余計な方面で目立ってしまう可能性があるのだ。

 アマミヤの塔でもそうだったので、気軽に妖精を呼び出せる存在などほとんどいないと考えた方が良いだろう。

 考助自体の身体能力は、さほど高いとは言えないので単純な腕っぷし勝負になるとやられてしまう可能性がある。

 そんなことを考えていると、ピーチが視線を飛ばして来た。

 珍しいことに、ピーチがどうにかするらしい。

 そういう事ならと、考助はさっさとピーチに対処を任せてしまった。

 

 そのピーチはまず受付のお姉さんに確認を取った。

「一つ聞きますが~。この場合は、正当防衛は成り立つのでしょうか?」

 受付のお姉さんもノリが良いらしく、その質問にすぐ答えて来た。

「微妙な所でしょうね。手を出されたのはそちらの方ですし、貴方が対処してしまうと難しいかもしれません」

「そうですか~」

 受付のお姉さんの答えに気を良くしたのか、考助に手を出した男がニヤリと笑った。

「だ、そうだ。捕まりたくなかったら、黙ってそこで見てろっ・・・・・・っ!?」

 男が何かを言い終わろうとしたその後には、既に男は床に寝転がされていた。

「なっ・・・・・・!?」

 男は、何が起こったのか分からなかったのだろう。その表情には驚きが浮かんでいた。

「あれあれ~? 突然転ぶなんて、どうしたんでしょうね?」

 驚く男に、ピーチがニコリと笑いかけた。

 ちなみに、考助達がいる場所は、ギルドの受付スペースなので、それなりの広さがある。

 中にはテーブルも備え付けてあって、冒険者同士で情報交換をするようになっているのだ。

 真昼間という事もあって、人は少なかったが、それでも全くいないというわけでもない。

 この騒ぎを見ていた者達も、一瞬の出来事に目を丸くしていた。

 

「何もないところで転ぶなんて、足のどこかでも具合を悪くしたかもしれません。お医者に行った方がいいですよ~?」

 畳みかけるようにそう言ったピーチに、男が顔を真っ赤にした。

「ふざけっ・・・・・・!?」

 激昂した男をピーチがスッと睨んだ。

「実力の差も分からないで冒険者を続けると、すぐに命を失いますからさっさと引退した方がいいですよ?」

 傍から見ている分には穏やかなにこやかな表情に見えるピーチだったが、相対している男にとってはそうではなかったのだろう。

 見る間に顔が真っ青になっていった。

 ピーチの威圧を感じ取れるほどには、実力があったらしい。

「あ、ああ、済まなかったな。何かに躓いたらしい」

「そうですか~。足腰は、何の武器を使うにしても重要ですから大切にしてくださいね」

 男の言い訳にもなっていない言葉に、ピーチもニコリと笑って流した。

 その表情を見た男は、慌てて立ち上がりすぐに入口に向かって引き下がって行くのであった。

 それを見て、何人かの男たちも出て行ったので、仲間か部下だったのだろう。

 

「お見事」

「そんなことないですよ~。ミツキさんだったらもっと一瞬だったでしょう?」

「どうかしらね。今の私は、あそこまであっさりとは無理かもしれないわ」

 今のミツキは、力を封印した状態になっている。

 旅に出ると決めた時点で、話し合って決めたのだ。

 シルヴィアから中にはミツキの力を看破する者がいるかもしれないという助言があったのだ。

 余程のことが無い限りは、その封印を解くことは出来ないようになっている。

「まあ、何にしても、手続きの続きをしようか」

 考助がそう言って受付に目を向けると、お姉さんが笑って言った。

「あ、もう手続きは終わっていますので、こちらをどうぞ」

 そう言ってギルドカードを差し出して来た。

 先程のことなど、露ほども感じられない態度である。

 流石はプロだなあ、と変な所で感心する考助であった。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

「どうしたんですか、兄貴? あんな上玉見逃すなんて」

 ギルドを逃げ出した男についてきていた手下がそう聞いてきた。

「うるせーな。あんな化け物に勝てるわけがないだろう!」

「化け物って・・・・・・そりゃ、化け物みたいに綺麗でしたが?」

 あの威圧を全く感じていない手下が、不思議そうな顔をした。

「そうじゃねえ! あの女、とんでもねえ。お前らも死にたくなかったら下手に手を出すなよ」

 あれだけ近くにいたのに、全く実力を感じさせ無かっただけでもとんでもないのに、あの威圧だ。

 とてもじゃないが、まともに戦えば勝ち目などないだろうという事は、よくわかった。

 歯ぎしりをしつつ、それでも男は必死に頭を働かせる。

 人前で恥をかかせた者達に、どうしても一泡吹かせたかった。

「お前ら、良く聞けよ・・・・・・」

 男が話す内容に、ついてきた部下たちがニヤニヤしながら話を聞いてきた。

 そうして男は、首に縄をくくられている状態になるとも知らずに、自ら死刑執行の書類にサインをすることになるのであった。

敢えてミツキの力は封印してあります。

ミツキがそのままの力を振るうと冒険になりませんからねw


しかし・・・・・・最後まで書いてから思いましたが、今更この手のイベントする意味あるのでしょうか?w

無駄に話が長くなるような・・・・・・。

ま、まあ、書いてしまった以上、強引に続きを書きますw

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