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塔の管理をしてみよう  作者: 早秋
第22章 塔と祭り
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(7)ちょっとした操作

 リリカへの加護の付与は、問題なく終わった。

 元々考助が、リリカの中に自分との繋がりを感じ取れたので、加護自体は問題なく与えることが出来た。

 後は、リリカがキチンと受け取ってくれるかどうかだけだったのだが、戸惑いはあっても拒否感は無かったらしい。

 無事に加護を与えることが出来て、考助は内心でホッとしていた。

 何分、塔のメンバー以外に与えるのは初めてだったので、若干不安があったのも確かだったのだ。

「大丈夫?」

 加護を与えられてから、ボーっとしたままのリリカに、考助が問いかけた。

「え? あ、はい。大丈夫です」

 リリカがそう答えたが、まだ視線が定まってない。

 困った考助は、シルヴィアの方を見た。

「多分大丈夫ですわ。恐らく初めて神威を受け入れたので、色々と混乱しているだけですから」

 色々と、というのは、肉体的にもそうだが、頭も整理するのに時間がかかっているのだ。

「そんなもんか。あれ? でも、最初から加護を持っていたシルヴィアとかフローリアとかはともかく、ピーチとかもこんな風にはなっていなかったよね?」

「それは多分、神力を扱う訓練をしていたからですわ」

 神力操作が出来るようになっていると、神威そのものである加護を受け入れても、今のリリカのようにはならなくてすむのだ。

「どれくらいで治るんだ?」

 興味を持ったのか、アレクがシルヴィアに聞いた。

「どうでしょう? 個人差があるから何とも言えませんわ。そんな長時間ではないと思いますが・・・・・・」

 シルヴィアも首を傾げてそう答える。

 

「お騒がせしました。もう大丈夫です」

 アレクが質問をしてからさほども経たずに、リリカがそう言って頭を下げた。

 ソニアが心配そうに見たが、もう一度大丈夫だとリリカが言った。

 実際に、先ほどまでの倦怠感のような物が、嘘のようにきれいさっぱり無くなった。

 体調的には、いつもと全く変わりがない。

 いつも通り過ぎて、逆に加護を得たことを忘れてしまいそうだった。

「そう。無理しないでね」

 考助がそう言ったが、リリカはとんでもないと言った感じで首を振っている。

「ほんとに大丈夫ですから!!」

「分かった。分かったよ」

 勢い込むリリカに、考助も両手を彼女の目の前に持ってきて止めるジェスチャーをした。

 それでようやく止まったのを見て、更に考助が続けた。

「それで、今クラウンカード持ってる?」

「クラウンカードですか? 勿論持っていますが?」

 クラウンカードは、この塔においては身分を証明する何よりの物になる。

 クラウンに所属している者は、必ずと言っていいほど、常時携帯しておくのが常識になっている。

 リリカは、懐に入っていたカードを何も考えずに考助に渡した。

「ああ、有難う」


 カードを受け取った考助が、何やら弄る仕草を見せた。

「何をしているんだ?」

 アレクが、考助に問いかけたが、何やら集中しているような考助は答えなかった。

 代わりにピーチが、その問いに答えた。

「今のまま窓口でカードの更新をすると、加護を持っていることがばれてしまうから、多分細工をしているんです~」

「細工って・・・・・・そんなこと出来るのか?」

 ステータスの内容の書き換えが出来ないからこそ、クラウンカードは塔の外でも身分証として高い評価を得ているはずなのだ。

 当然そうそう簡単に細工など出来ないと言うのが、世間一般の常識だ。

「普通は出来ませんね~」

「言っておくが、こんなことが出来るのは、コウスケと後はイスナーニくらいか?」

 フローリアも頷きつつ言い添えた。

「いえ。イスナーニも難しいと思いますわ。出来るのはコウスケ様だけでしょう」

「そうか」

 アレクも安心したように頷くだけで、それ以上は追及はしなかった。

 考助なら出来て当然だと考えているのだ。

「やっぱり、コウスケ様が現人神様だからですか?」

 リリカの直球の質問に、シルヴィアが首を振った。

「違うわよ。いえ。違わないのかしら?」

「微妙な所だな」

「別に神様だからではないですよね~。多分現人神になる前から出来てたでしょうから」

 シルヴィア、ピーチ、フローリアと、塔の管理メンバーが揃ってウームと考えている。

 

「イスナーニであれば書き換え自体は出来るだろうね。でも、次に本部で神能刻印機に、通した瞬間にエラーになってしまうと思うけど」

 考助がフォローするように、話を付け加えた。

 そのついでのようにカードをリリカに差し出して続けた。

「ステータスを表示する時みたいに、魔力を流して・・・・・・そう。有難う」

 リリカは言われたままに、カードに触れて魔力を流した。

 そのカードをもう一度手元に引き寄せて、更に作業に戻ってしまった。

 ただ、今度はさほど時間はかからずに、すぐに作業を終えてカードをリリカに差し出した。

「?」

「いや。書き換え終わったからもういつも通り使っていいよ。加護に関しては、自分にしか見えないようになっているから」

「あ、ありがとうございます。・・・・・・ってあれ? 何か数値が違っているような・・・・・・」

 カードを受け取ってステータスを見たリリカは、前に見た時とスキルレベルが違っているところがあることに気付いた。

「ああ。変わっているところがあったから、ついでにそこも書き換えておいたよ」

 考助の言葉に、メンバーたちは考助が何をやったのか分かった。

 左目の権能を使ってステータスをチェックして、その上でカードの書き換えを行ったのだ。


「君に書き換えが出来て、イスナーニ殿に出来ないと言うのは何故だ? 確かイスナーニ殿も開発に関わっていたと聞いていたが?」

 アレクが、不思議に思ったことを考助に聞いた。

「それは簡単な話です。彼女には書き換える権限がありません」

 権限が無いのも確かなのだが、イスナーニも頼まれてもやらないだろう。

 その理由は、

「権限が無い状態で無理に書き換えしようとすると、内容が吹き飛びます。ついでに、カードを作った人と、書き換えしようとした人の魔力を読み取ります。

 なので、次に更新しようとしたときに、二度とカードが使えなくなります」

 早い話が、不正をしようとした人の魔力をブラックリストに載せてしまうのだ。

 災難なのは、カードを落としてしまった上で、そうした不正利用された場合だが、これも等しくブラックリスト化してしまう。

 そのため紛失などの場合は、早期の報告を義務付けているのだ。

「何故か、紛失と盗難に関しては、厳しいと思っていたら、そういう事なんですか」

 横で聞いていたリリカが、納得したように頷いた。

 クラウンカードの扱いに関しては、他の街にある公的ギルドのギルドカード以上の厳しさになっている。

 それは、こうした事情があるためなのだ。

 どんなにごねても、一度ブラックリストに載ってしまうと、それを解消する方法がないのだ。

 当初、軽く見ていた冒険者たちが何人かそう言う事態に陥ってしまったが、カードは再発行されていない。

 そうした実例を見たので、今ではほとんどそうしたことは起こっていない。

 

「それで、加護の話に戻すけれど」

「は、はい!」

 直立不動になったリリカに、考助はもう何も言わなかった。

 言えば、それ以上に話がややこしくなるという事を学習したのだ。

「その加護で、どんな力が発現するかは、リリカ次第だから。色々試してみて」

「わかりました」

「何人かに加護を与えているけど、未だに具体的に使えている人はいないから。もしかしたら、リリカが一番最初に使いこなすかもね」

「そ、そんなことは!」

 リリカが勢いよく首を左右に振っているが、考助としてはそれもあり得ると本気で考えている。

 考助の力に対して、変な先入観がない分、使いこなすことが出来るかもしれない。

 そうした期待もあってリリカに加護を与えることに決めたのだが、それを考助が言うと逆に失敗しそうな気がしたので、あえて言わないことにしている。

 リリカが、考助をどのように考えているかで、加護の形も変わりそうなので、結果が出るのが楽しみな考助であった。

ようやくリリカに加護を渡せました。

このためにわざわざ祭りまで用意して、考助に街をうろつかせました。

この後は、純粋に祭りを楽しみます。

イチャイチャさせられればいいかなあ、と思っていますがどうなることやら。

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