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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第22章 塔と祭り

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(8)再びの登場

 リリカへ加護を与えた後は、予定通り祭り見学を続けた。
 露店が多く出ているのは、やはり街の中央にある大通りが一番多く、当然競争率も高かった。
 それだけ気合の入った露店も多く並んでいるので、祭りらしい呼び込みも数多くされていた。
 そんな中、ドリア一家が横並びに並んで歩いていた。
 その少し先には、両腕をシルヴィアとピーチに取られて歩いている考助がいる。
 ミツキはその後ろにいて、あくまでも護衛の立場を崩してはいないのだが。

 その様子を見ながら、ソニアが娘に問いかけた。
「貴方は混ざらなくてもいいのかしら?」
「私は柄じゃないしな。それに、あの二人は明日イベントに出るから、その分今日楽しませたい」
「あらあら。素直じゃないのね」
 ソニアのからかうような声に、娘のフローリアが若干慌てた様子を見せた。
 残念ながらどちらも仮面をしているので、表情は見えないが容易に想像が出来る。
「そ、そんなことはないぞ? 私だって管理層では・・・・・・あ」
 失言したと思ったときには遅かった。
 隣からくすくすと笑い声が聞こえて来た。
「それはよかったわ。貴方の事だから、素直になれずに悔しがってばかりかと思っていた」
「ま、まあ。その、なんだ。たまにだ、たまに」
「はいはい。良かったわね」
「・・・・・・むう」
 フローリアは不満そうに呟いたが、ソニアにはどこ吹く風だった。
「あの人の周りにいるのは、とんでもない美人ばかりだから、奥手の貴方は悔しがってばかりだと思ってたけど」
「そ、そんなことは無いぞ?」
 たぶん、と小さく付け加えたフローリア。
 若干自信が無かったのだろう。
「あらあら? 貴方だって悪くはないんだから、もっと積極的にいかないと、ね?」
 悪くないどころか、大抵の男が振り向く容姿をしている。
 ただ、相手が悪すぎるだけなのだ。
「せ、積極的にって・・・・・・私がか?」
 積極的になる自分を想像するが、途中でイメージが霧散して、どうしても想像が出来ないフローリアであった。

「わ、私はともかく、二人も相変わらずなんだろう?」
「それは勿論」
 即答するソニアに、フローリアも仮面の内側で笑った。
 この二人は、いつでも仲がいい。
 当然喧嘩をすることもあるが、それはそれ。
 むしろ無い方がおかしいだろう、とフローリアは考えている。
「でも、お父さんったら、こっちに来てから仕事で忙しいって、以前ほど構ってくれないのよ?」
「む・・・・・・? そうなのか?」
 それは初耳だったフローリアが、アレクを見た。
「い、いや。忙しいのは本当だぞ? 何しろ急成長している組織だから、人手が足りなくて、色々と手が回らないんだ」
 実際その通りで、何かがあるとアレクの所に話が回ってくる状態だった。
 この先落ち着いて来れば、アレクの手を煩わすことも減っていくだろう。
 もっとも、未だ人口がかなりの速さで増え続けているので、まだ先の話になるだろうが。
「まあ、母上も元気そうなので安心した」
 アレクとは、管理層の会議室で顔を合わせることもあるのだが、ソニアときちんと対面するのは久しぶりだったのだ。
 勿論アレクから近況は聞いているので、元気にしていることは知っている。
「そうねえ。私も元気な姿が見れてよかったわ」
「まあ、あんなのが未だに来ている以上、そうそうこちらには来れないだろうが」
 あんなの、というのが何の事なのかは言うまでもないだろう。
「それも時間の問題だろう。いつまでもここにいることもできないだろうからな。だからと言って油断は出来ないが」
 フローリアが管理層に身を寄せるようになって、まだ一年は経っていない。
 以前の問題が完全に収まるまで、期間的にはまだ時間が足りない。
 場合によっては、数年単位が必要になるだろう。
「寂しく過ごしているわけではなさそうだから、私も安心したわ。・・・・・・あら? むしろ、結果的にはよかったのかしら」
「は、母上!」
 フローリアの慌てたような声に、ソニアは楽しそうにコロコロと笑うのであった。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

「し、シルヴィア。いつまでこの格好は続けるの?」
 シルヴィアとピーチに腕を組まれている考助が、後ろを気にしつつそう聞いた。
「あら? 嫌なんですか?」
「うーん? もう少しくっついた方がいいのかしら~?」
「それ以上は、まじで勘弁してください」
 先ほどから腕にやわらかいものが当たって、どうしてもそちらに意識が行ってしまう。
 男の悲しい性である。
「じゃあ今のままでいいわよね?」
「・・・・・・はい」
 仮面で顔は見えないが、明らかに笑顔になっているであろうシルヴィアに、考助は諦めてそう返事をした。
 自分がいろんな意味で贅沢なことを言っていることは、理解しているのだ。

「後ろの方も楽しんでいるみたいですね~」
「まあ、久しぶりだからね」
「あら~? それだけじゃなくて、祭りも楽しいと思うけど?」
「それも同意する」
 実際に考助も祭りを楽しんでいる。
 考えてみれば、この世界に来て初めての祭りなのだ。
「何を考えているんですか?」
 そんな雰囲気を察したのか、シルヴィアが聞いてきた。
「いや。考えてみれば、この世界に来て初めての祭りだなってね」
「あら~? そうだったんですか?」
「それは初耳ですわ」
「あれ? 言ってなかったっけ?」
 てっきり祭りに行くことを決めた時に言っていると思っていた。
「じゃあ、今日と明日、存分に楽しまないといけませんわね」
「勿論」
 考助は全力で頷く。
「それじゃあ、まずは今日からですね~」
「そうだね」

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 それからしばらくは祭りを楽しんだ。
 露店も考助が知っている定番の物から、こちらの世界に来て初めて見るものまで様々あった。
 そのどれもが工夫を凝らしているのがよくわかるものだった。
 ちなみに、最後まで両腕は解放されなかった。
 そのため、男の殺気のこもった視線を感じるときもあったが、気にしないことにしていた。
 これがもし仮面を外した状態だったらどうなっていたんだろうと思ったが、どう考えても考助にとってはいい方向にはならないだろう。
 しばらく静かな喧騒を楽しもうと中央の道から外れた時に、それは起こった。
 少し前から自分たちをつけている者達がいたのが分かっていたので、誘ったのだ。
 勿論、それが誰かと言うと、ディオン御一行だった。

 現在考助達は、後ろと前を男たちで挟まれていた。
 前方にはにやけ顔をしたディオンが立っている。
「ディオン、貴様!」
「おやおや。何ですか?」
 アレクの怒鳴り声にも、にやけ顔を変えない。
 自分の優位を疑っていないのだ。
 そんなディオンに、考助が仮面の下でため息を吐いた。
「自分が誘われたのも分からないとは、やっぱりどこか抜けているのかな?」
「多分、想像もしていないんでしょうね~」
 そんな考助に対して、ピーチが相槌を打った。
「何だと? 貴様、この状況が・・・・・・」
「ああ、もうはい。分かったから。ミツキ、面倒だからこいつだけ残して、さっさと片付けちゃって」
「わかったわ」
 ディオンに最後まで言わせずに、考助がミツキに指示を出した。
 そのミツキは、一言だけ答えてすぐに姿を消した。
 その次の瞬間には、考助達を取り囲んでいた男たちが、倒れていた。
「なっ、な!?」
 一人だけ残されたディオンが、それを見て驚きの声を上げた。
 既にその時には、ミツキは考助の傍に戻っていた。

「そう言うわけだから、さっさといなくなってくれないかな?」
「き、貴様!」
 それでも何かを言おうとするディオンに、考助は仮面を外してさらに続けた。
「そうそう。言っておくけど、これ以上ドリア一家にちょっかいを掛けてくるようだったら、正式に抗議を出すから。アマミヤの塔として」
「そんなことが、出来ると・・・・・・」
「出来るんだよ、それが。これでも一応、この塔の管理者の一員だから」
 人気がないことを良い事に、考助があっさりと暴露した。
「・・・・・・・・・・・・」
「ここがあんたの母国なら他にやりようもあるんだろうけどね。生憎ここは塔の中だ。あんたの好きにはさせないよ」
 既にディオンは顔を青くしている。
「それが分かったなら、さっさとここから出ていくんだね」
 考助はそう言って、転移門のある方を指さした。
 いくら祭りの最中とは言え、外へ出る転移門はきちんと動かしている。
「く、くそ・・・・・・!!」
 ディオンは、そう悪態を吐いて、その場を去って行った。

 残った考助は首を傾げた。
「僕が塔の管理者だっていうの、ブラフかもしれないのにねえ」
「所詮、家の力がないと何もできないという事ですわ」
「まあいいか。アレク、今後面会とか求めてきたら、問答無用で追い出していいから」
「わかりました。ありがとうございます」
 アレクはそう言って、考助に頭を下げた。
 考助の言葉さえあれば、アレクとしてもあとはどうとでもできるのだ。
「ああ、いいのいいの。いい加減、僕もむかついてたからね」
 真実、本気の言葉を言って、考助は手を振るのであった。
と、言うわけで再登場のディオンでしたw
あの程度で諦める性格なら、こんなところ(塔)まで来ていないという事で、
再登場です。
今後は・・・・・・出てくるのかなあ。
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