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塔の管理をしてみよう  作者: 早秋
第22章 塔と祭り
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(2)二日目

 そもそも祭りを見ようという事になったのには、理由がある。

 気づけば十万人を超える規模に発展した街を、しっかりと見ておきたいという希望があったのだ。

 最初は普通に見ようと思っていたのだが、たまたま一周年で祭りが開催されるという事で、それに合わせて来ることにした。

 全員参加なのは、祭りを知らないメンバーもいるので、祭りも楽しもうという話になったところで、全員参加希望してきたのだ。

 現在管理層には、ゴーレム二体以外はいないことになる。

 管理層に繋がる転移門は現在使えないようにしてあるため、誰も管理層に出入りすることは出来なくなっているのだが。

 祭りの最終日には、シルヴィアとピーチが塔の管理側としてイベントに出ることになっている。

 二人は、たまに神殿へ出入りもしているので、既に顔が知られているのでイベントに出ることは問題ないと言っていた。

 むしろ出た方がいいと言っていた。

 シルヴィアは、考助の巫女としての役割があるためこういう場合は、表に出た方がいいのだ。

 ピーチも、本人は遠慮しているが、着々と巫女としての立場を確立しつつあるので、シルヴィアの補佐的な役割を担っている。

 

 祭り二日目。

 考助達は二手に分かれて行動していた。

 考助がいるチームは、翌日一緒に行動できないシルヴィアとピーチの二人に、フローリアとミツキだ。

 ナナはリードに繋がれていて、そのリードは考助が持っている。

 残りのメンバーは、別行動している。

 ミツキはともかく、フローリアがいるのは理由がある。

 その理由が、今目の前にあった。


「ほんの数週間しかいなかったはずなんだが、懐かしさを感じるのはなぜだろうな?」

 現在五人(プラス一匹)は、第五層にあるアレクの屋敷の前に来ていた。

 しばらく顔を見せていなかったフローリアが、顔を見せるのに丁度いい機会だと考えたのだ。

 ドアの前で呼び鈴を鳴らすと、中からメイドが出て来た。

 ちなみに、事前に訪問することは知らせていない。

 驚かせようと言う魂胆だ。

 出てきたメイドは、運よくフローリアがいた時から雇っているメイドだったらしく、仮面を取ったフローリアを見て驚いていた。

 慌てたように中に考助達を導き、すぐにアレクを呼びに行った。

 行政府も祭りの三日間は、完全休業している。

 騒ぎがあった時のために警備隊だけは稼働しているが、他の部署はお休み状態だ。

 アレクは祭りに出かけているわけでもなく、きちんと在宅しているようだった。

 ほとんど待つことなく、考助達がいる部屋にやって来た。

 アレクだけではなく、フローリアの母親であるソニアも連れてきていた。

 室内に入っているので、既に仮面は外してある。

 フローリアを見つけるなり、ソニアはフローリアに抱き付いていた。

 アレクはその様子を嬉しそうに見ている。

 完全に親馬鹿の顔になっていた。

 

「まさか、フローリアに会えるとは思っていなかったよ」

 ソニアとフローリアが話し込んでいるのを横目で見ながら、アレクがそう考助に話しかけて来た。

「折角の機会ですからね」

「そうか。ありがとう。それで? これからの予定は決まっているのか?」

「決まっていると言えば、決まっていますし、決まっていないと言えば、決まっていませんね」

「? どういう事だ?」

「いえ、アレクさんの予定で変わるんですよ。これから一緒に祭りを見に行きませんか?」

 考助の提案に、アレクは驚いた表情を見せた。

「それは・・・・・・いいのか?」

「勿論、御二方とも仮面をしてもらいますよ?」

 考助は含み笑いをしつつ、ミツキを見た。

 そのミツキが、アイテムボックスから二つ仮面を取り出した。


「あなた、行きましょう!」

 アレクが何かを言うより早く、フローリアと話していたはずのソニアが話に加わって来た。

「いや、しかし・・・・・・」

 アレクが心配しているのは、フローリアの事だ。

 彼らがこの塔に来てかなりたっているが、それでもまだ以前の懸念材料が無くなっているわけではない。

 そもそもアレクが塔にいるとばれている時点で、フローリアも塔のどこかにいると思われている。

 そのためどこに目があるのかは分からない状態なのだ。

「来ないなら来ないで良し。もし来たとしてもそれはそれでいいでしょう?」

 考助がそっとアレクに耳打ちをした。

 今まで散々隠れていたフローリアだが、そろそろその生活も改善させてあげたかったのだ。

 そのための餌でもある。

 もし危険な状態だとすれば、以前のようにフローリアに加護を与えているスピカからのお告げもあるだろうと楽観もしている。

「そういう事か・・・わかった。すぐに準備をして来よう」

 アレクも考助の狙いを理解して、すぐに頷いた。

 勿論戦力としてミツキを当てにしているのは、言うまでもない。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

 ドリア夫妻(アレクとソニア)を加えて真っ先に向かったのは、以前考助が神威召喚を行った神殿だ。

 神殿の前にある広場では、出店が立ち並んで騒がしかったが、中は逆に静まり返っていた。

 ソニアは最初、考助がこの神殿の主神だと言われて驚いていた。

 だが、考助の紹介をするときのフローリアの表情を見て、ハハーンと納得したような顔になっていた。

 勿論考助がここでやらかした内容は、アレクから聞いている。

 だからと言って最初の時の態度を変えなかったのだから、しっかりと空気を読める女性と言えるだろう。

 伊達に第三王子の妻をしていたわけではない。

 しかも立場を捨てたアレクに、きっちりと付いてくるだけの度胸もあるのだ。

 フローリア曰く、アレクと同様の只の親馬鹿だという説もあるのだが。

 

 ここに来たのは、特に理由があるわけではなく、神威召喚して以来一度も来ていなかったので、様子を見たかったというのがある。

 神殿の祈りの間に来てすぐに、神域の気配を感じ取ることが出来た。

 神威召喚したときの加護はしっかりと残っているらしい。

 こうして神域の気配を感じ取ることは出来るのに、自身の神威を抑えるのにあれだけ苦労したのには、何とも不思議な感じだったが。

 そんな雰囲気を感じながら進んでいくと、誰もいないと思われた広間に、一人の女性がいた。

 その人物に気付いたシルヴィアが、声を掛けた。

「リリカさん、でしたか。祭りの日なのに、熱心ですわね」

「あ! シルヴィア様」

 既に何度も顔を合わせてるので、シルヴィアが主神(考助)の巫女だという事は分かっているためすぐに、シルヴィアに向かって頭を下げた。

「祭りの日だからです。祭りが開けるようになったのも、コウスケ様のおかげなのですから」

「そうですか」

 リリカの答えに、シルヴィアも笑顔で答えた。

 その様子を見ながら、考助は何ともくすぐったい感情を覚えた。

 以前であれば、違和感を感じまくっていただろうが、現人神としての意識を持ち始めているためか、そう言った感情も少なくなっていた。


 リリカは、シルヴィアが連れて来た者達が気になるのかチラチラと窺っていたが、自分から聞き出すのは失礼に当たると思って聞き出せないでいた。

 ピーチに関しては、シルヴィアと一緒に来ているのを見ているので、分かっているのだが、他の者達は見たことが無い。

 何より、この神殿に従魔を連れてきている者に注意をしていいのかどうかが分からないのだ。

 シルヴィアが何も言わないので、言わないほうがいいのかどうかを迷っていた。

 この後すぐに、思ってもみなかった事態になるのだが、そんなことは露知らず、自身の中の常識と葛藤するリリカであった。

再びのリリカ登場!

いつの間にやら準レギュラーになりましたw

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