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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第22章 塔と祭り

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(3)婚約者?

 リリカが心の中で葛藤を行っているその時、考助もふとあることに気付いていた。
 その感覚が正しいものかきちんと確認しようと、リリカに声を掛けようとした。
 だが、別の声に邪魔されて、中断させられてしまった。

「アレク殿!」
 アレクを呼び掛ける男の声が、神殿内に響いた。
 リリカとシルヴィア以外の者達は、現在仮面を付けている。
 本来であれば、アレクがここにいることは、分からないはずであった。
 そのアレクは、付けている仮面の内側でため息を吐いてからその仮面を外した。
「ディオン殿、何の用かな? 私は祭りを楽しんでいるのだが?」
 顔をしかめつつ、アレクはディオンと呼んだ男に話しかけた。
 ディオンはいかにも取り巻きと言った男たちを三人引き連れて、アレクのところまで近寄って来た。
「ようやく会えましたよ。何しろあなたは、時間がないと言っていつも会ってくれない」
「今の私はこの街の代官なのだぞ? 仕事を優先するのは当たり前だろう?」
 ディオンは以前からアレクとの面会を求めて何度も来ていたのだ。
 そのたびに断られているのだが、諦めずにいたらしい。
 もっともアレクも全く会っていないわけではない。
 何度か会っているのだが、そのたびに話は平行線に終わっているのだ。
「では、今は大丈夫という事でしょう? 何しろ祭りなど楽しんでいるのですから」
「そなたは、私に妻とのデートも楽しんではいけないと言うのか?」
 アレクの剣呑な表情に、どこ吹く風でディオンは肩をすくめた。
「いえいえ。そんなことはありませんよ。私との時間を少しだけ作ってもらえればいいだけです」
「私にとっては、妻との時間が非常に貴重だという事が、相変わらず分かってもらえないらしいな」
「それは仕方ありません。私にとっても貴方との時間は貴重ですから」
 以前のアレクであれば、絶対に取らなかった態度をディオンは取っている。
 何しろアレクは母国の第三王子だったのだから。
 だが、今のアレクは、ただの代官でしかない。
 それが分かっているからこそ、この態度なのだ。

「アレク様、この方は?」
 このままだといつまでも平行線を辿りそうだと判断したシルヴィアが、間に入って問いかけた。
 そのシルヴィアを、一瞬だけ驚いたような表情で見た後、笑顔を浮かべた。
「これは失礼しました。美しいお嬢さん。私は、フロレス王国のビエラ公爵家の長男で、ディオン・ビエラと申します」
「そうですか」
 シルヴィアは、ディオンに一礼だけして、すぐにアレクの方を向いた。
「どういう要件なのかは分かっているのですか?」
 アレクの態度からそう判断して問いかけたのだが、アレクもすぐに頷いた。
「何。大した要件じゃない。何度問いかけられても答えは同じだと言っているのだがな」
「あなたは! ご自身の娘の婚約者が、わざわざ迎えに来ているというのに、大した要件ではないと仰るのか?」
「婚約者?」
 シルヴィアもすぐに誰の事かは分かったが、分からないふりをしてアレクに聞いた。
「元、だな。そんなものは、とっくに解消されているのにな」
「そうなんですか」
「ああ。しかも、娘が加護持ちだと分かった途端に、手のひらを反してよりを取り戻したいと来たもんだ。馬鹿らしくて相手もしていられんよ」
 その説明で完全に状況が理解できた。
 確かに、アレクでなくてもやってられないと思うだろう。
 ただし、残念ながらディオンには公爵家という後ろ盾があるため、無下に追い出すこともできないでいるのだ。
「なるほど、そういうことですか」
 シルヴィアも納得したように頷いた。
 この場にいる全員が、聞きたかったことを聞けた。
 同時に、まともに相手にするのも馬鹿らしいという事もわかったのである。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

「私はもとより婚約の解消など望んでいませんでしたよ? ですので、婚約破棄など誤解も甚だしい話ですね」
 ぬけぬけとそう言い放つディオンだったが、残念ながら取り巻き以外は彼の話を聞いていなかった。
「そうか。もうそなたと話すことなど何もない。お引き取りを願おうか」
「へえ? どうやってですか? ここは、貴方の仕事場や自宅ではないのですよ?」
 ディオンがそう言ってニコリと笑うと、後ろに控えていた取り巻きが、わざとらしく剣をかちりと鳴らした。
 それを見たアレクが、何かを言うより早く、シルヴィアが反応した。
「控えなさい、無礼者! ここをどこだと思っているのですか!」
 本来であれば、神殿内は武器の使用は禁じられてる。
 普通の神殿で、今のようなことをすれば、間違いなく外に追い出されているだろう。
 だが、この神殿に神職たちがいないことが分かっているのか、ディオン側も態度を崩さなかった。
「ははは。本来の神殿であれば、その言葉も通じるのですが、ここでは違いますよ、お嬢さん」
「そうですか。どうあっても引かないと? それこそ、どうなっても知りませんよ?」
「・・・・・・何?」
 シルヴィアの言葉に、ディオンは一瞬だけ怯んだ様子をみせた。
「確かにここには、常駐している神職はいませんが、それだけ特殊な神殿だと理解できませんか?」
「・・・・・・どういう事でしょう?」
「この神殿に、三大神の加護が与えられてることは、ご存知でしょう? しかも主神が支配している塔の御膝元の神殿です。そこで騒ぎを起こして、ただで済むと思っているのですか?」
「は、はったりもいい加減に・・・・・・」
「はったりかどうかを、あなたご自身で確かめるのですか? それならそれで構いませんが」
 あくまでも冷静にそう言い放つシルヴィアに、ディオンは戸惑った表情になった。
 シルヴィアの態度で、普通の巫女ではないと察したのだ。

「貴方は?」
「申し遅れましたわ。私はこの神殿の主神の巫女です」
 シルヴィアがあえて、考助の名前も自身の名前も出さなかった。
 それで十分だったからだ。
「巫女・・・・・・という事は・・・・・・」
 普通であれば、巫女と言うのは女性の神職にある者達全てを指す。
 ただ、この場合の巫女と言うのは全く別の意味を持つことは、この場にいた全員が理解できた。
 気軽に口に出せないはずのその立場を明確にしたことからも、嘘ではないことは明白だった。
「貴方がどう思おうが勝手ですが、この神殿でこれ以上の騒ぎは許しませんよ?」
 そう言われたディオンは、改めてシルヴィアを見た。
 見た目はただの小娘にしか見えない。
 だが、すぐ傍にいるもう一人の巫女とは違った雰囲気を感じるのも確かだった。
 立場上、何人もの高位の神職たちと会って来たが、彼らと同じような雰囲気を目の前の小娘が出しているのだ。
「・・・・・・ちっ」
 思わず舌打ちをしたディオンは、一度だけアレクを睨みつけてから、取り巻きを引き連れて神殿から出て行った。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

「す、すごいですね。シルヴィア様」
 一連の様子を見ていたリリカが、感激したようにシルヴィアを褒めた。
 そのシルヴィアは、ただ首を振った。
「いいえ。私もまだまだですわ。本来であれば、巫女の立場を明らかにせずに治めなければならないのですから」
「だが、助かったのも事実だ。ありがとう」
 アレクもそう言って頭を下げた。
「そうだな。いっそのこと私が出ることも考えたのだが」
 フローリアが、そう言いながら仮面を外した。
「それは止めておいた方がいいですわ。余計相手をいい気にさせるだけですから」
 その結果どういう事になるかは、想像に難くない。
 何しろ、主神本人がいた上に、そのすぐ隣には代弁者までいたのだから。
 あのまま続けていれば、間違いなくミツキが出て来ただろう。
 それを抑えられたのが、今回の最大の成果だと、シルヴィアは内心で思うのであった。
書き上げてから気づきました。

考助、空気ですねw
まあ変に出しゃばると余計ややこしくなるので、シルヴィアだけで治まるようにしたんですがw
ディオンがあっさり引いたのは、しっかりと空気が読める人間だからです。
伊達に公爵家の跡取りではないという事ですね。チャラ男っぽいですがw
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