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塔の管理をしてみよう  作者: 早秋
第21章 塔と加護と進化と
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(7)ヴァミリニア宝玉について

 ヴァミリニア宝玉は、それ単独で存在しているわけではない。

 常に、ヴァミリニア城とヴァミリニア一族の長の二つとセットで存在している。

 その三つは、互いに守り守られる関係になっている。

 例えばヴァミリニア宝玉を失うと、城は存在させることが出来ず、ヴァミリニア一族の長がいなくなると宝玉も存在できなくなる。

 城を失うことは難しいというよりも、城を失うような状況になるときは、必ず他の二つのどちらかが失われているという事になる。

 そんな相互関係は、当然ヴァミリニア宝玉の作りにも影響している。

 以前シュレインが、城の成長には、宝玉の「格」が関係していると語っていたが、それは当然逆のことも言える。

 当然、宝玉の「格」が成長しなければ、城も勝手に大きくなることは無いのだ。

 考助は、この「格」が成長することを宝玉の進化だと考えている。

 現在ではシュレインもそう言う物だと理解しているが、突き詰めればただの物体である宝玉が、進化をするというのは、一族の者にはなかなか受け入れられていない。

 そのこと自体は別に、今回の目的からは外れているので特に問題はない。

 

「それで? 何か分かったかの?」

 そう言って来たシュレインに、考助は首を振った。

「いいや。全く分からないわけじゃないけど、なかなか難しいね」

 考助は現在、ヴァミリニア城の宝玉が安置されている場所に来ている。

 既にこの場所に籠って、数日が経っていた。

 一族の救世主のような扱いになっている考助といえど、今いる場所はヴァミリニア一族にとっては、最重要な場所だ。

 考助とコウヒかミツキのどちらかだけでいられるはずもなく、大体はこうしてシュレインが付き添っていた。

 シュレインが北の塔の管理で手が離せないときは、別の者が付いている。

 もっとも、例えヴァミリニア一族でもシュレインを除いて、一人でこの場所に入ることは禁じられているので、考助の待遇自体が破格であることには違いがないのだが。

 この数日に渡ってヴァミリニア宝玉を調べて来た考助だが、その仕組みの全てを解き明かすには至っていない。

 というよりも、分かったことは全体の三割程度だと見込んでいる。

「なるほどの。という事は、やはり四属性の塔の宝玉も成長させるのは難しいのか?」

「ああ、いや。そっちの方はもう大体分かったよ?」

「・・・・・・は?」

 あっさりとした回答に、シュレインは思わず目が点になった。

「な、なんだ? それが分からなくて、ここに籠っていたのではないのか?」

 ここにきてようやく、考助もシュレインの勘違いに気が付いた。

 いや、この場合どちらかと言うと勘違いしているのは、考助の方なのだが。

 まさかこの短時間で、ヴァミリニア一族の秘宝中の秘宝であるヴァミリニア宝玉の仕組みを解読できるとは、欠片も考えていないだろう。

「いや、調べていたのは、ヴァミリニア宝玉自体だけど?」

 さらりとした考助の回答に、シュレインは思わず眩暈がするのを感じた。

「という事は何か? ここ数日籠っていたのは、四属性の宝玉についての事ではなく、ヴァミリニア宝玉について調べていたと?」

「うん。いや最初は、そうだったんだけど、調べているうちに興が乗ってね」

 これだけの大きさの宝玉に、ヴァミリニア城という物を内包させていることや、一族の長と連動している「格」に付いて等々。

 調べれば調べるほど興味深いことが出てくるために、現在進行形でつい熱中してしまっているのだ。

「つまりは何か? コウスケには、宝玉の作りがどうなっているのか分かっていると?」

「いや、それは流石に。今分かっているのは、せいぜいが最初の取っ掛かり部分くらいだよ?」

 信じがたい情報に、シュレインは頭を抱えた。

 

 過去、それこそヴァミリニア一族と宝玉が共に存在するようになってから長い間。

 当然のように宝玉がどういった仕組みで成り立っているのか、ずっと研究されてきた。

 ところが、その苦労をあざ笑うかように、全く調べを進めることが出来ない。仕組みを理解するどころか、どういった力で動いているかすらわからないのだ。

 その一族における長年の研究をあっさりと考助が、この数日で覆したことになる。

 自分の様子を見て首を傾げた考助に、シュレインはそう言ったことを熱弁して語った。

「ああ・・・つまりは、ぽっと出の自分みたいな者に、解き明かされると困ると?」

「違う! 今更コウスケのことをあーだこうだいう者など、一族にはおらんよ。そうではなく、そのコウスケが今まで解き明かせなかった謎を解き明かしたことの方が問題になるかの」

「えーと、つまりは?」

「コウスケは、今以上に一族の者に敬われることになりかねん」

「ああ、なるほど。・・・でも、それって難しいと思うけど?」

「・・・なぜかの?」

「神力を使いこなせないと、調べることすらできないから」

 要は、現状考助以外に、確認することが出来る者がいないという事だ。

 勿論、神域から神の一柱でも呼んで来れば話は別になる。

「ああ、そういう事か」

 シュレインは納得したように頷き、その後項垂れた。

 神力を使っているという事は、当然神具という事になる。

 ということは、例え研究が進んで仕組みが分かったところで、複製することなど不可能だという事になるわけだ。

 そもそも一族の者が宝玉を研究をしていたのは、複製を目的としていたので、それが出来ないと分かったことになる。

「・・・複製が難しいと分かっただけでも良しとするかの」

「やってできないことは無いと思うけどね」

「それは、コウスケが作った場合かの?」

「まあ、そういうことになるね」

「それでは、意味がないの」

「ああ、そういう事か」

 今度は、考助が納得したように頷いた。

「まあ、一族の人たちで、神力を使えてなおかつ魔道具作りが得意な者がいれば、何とかなりそうな気もするけど?」

 ヴァンパイアは長寿なので、気長に教え込めばできなくはないだろう。

 ちなみに、この世界のヴァンパイアは、長寿であって不死ではない。

 ただし、長寿と言うのは、ヒューマンからすれば気が遠くなるような長さなのだが。

「何とも気が長い話だの」

 その長寿の感覚を持ってしても、考助の言葉は気が遠くなるような話だった。

 

「まあ、同じものを二つ作って意味があるかどうかは別だけどね」

「ん? それはまた、どういう事かの?」

 拠点となるべき城を二つと言わず、複数作れるのは十分意味があるはず、と言う意味で、シュレインが考助に聞いた。

「だってこの宝玉、『一族の長』が一人一つ継承することになっているんだよ?」

 その言葉で考助が言いたいことが、シュレインにも理解できた。

 宝玉が二つあるという事は、一族の長が二人存在するという事になる。

 考助の言葉は、一人の長が複数の宝玉を持つことが出来ないという事を示していた。

「長が複数持てるように出来れば、活用方法はあると思うがの?」

「まあ、それが出来るのであればね」

 考助は、苦笑しつつそう言った。

 要するに、今の段階ではそんな仕様にすることはできないという事なのだ。

「ままならないものだの」

「まあ、そんなもんでしょ?」

「そうさの」

 

「ところで、まだ調査は続けるのかの?」

 そもそもの目的に関しては、既にある程度の目途が付いているのであれば、調査を続ける必要性もない。

「ん? 調査していいんだったら続けたいけど、駄目だったら止めるよ?」

「複製は出来ぬのではないのかの?」

「ああ、そういう事。これに使われている技術は色々使えるからね。今後の為にもまだ見ておきたいかな?」

 神力を使っている技術なので、あくまでも一部の者にしか使えないが、それでも参考にすべきところは多々ある。

「それなら気が済むまで、調査するが良い」

「ありがと」

「気にするな。結局のところ見返りがあることだからの」

 勿論見返りなど期待しているわけではないが、シュレインはあえてそう言う言い方をする。

「はは。覚えておくよ」

 笑った答えた考助は、再び宝玉の調査に戻った。

 冗談のように言ったシュレインだったが、なんだかんだで考助の開発する道具が様々な所で役に立つことは分かっているので、冗談では済まないことも十分に理解しているのであった。

ヴァンパイアについて。

当然剣で切られれば死にますので、争いで滅亡しかかったのは不死ではない証明になりますね。

シュレインが、ミツキに召喚されるような存在になっていたのは、不死だからではなく魔法でそう言う存在にされていたということになります。

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