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塔の管理をしてみよう  作者: 早秋
第21章 塔と加護と進化と
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(5)ピーチの変化

 狼達へ加護を与えた後は、そのほかの眷属たちの所を回って加護を与えた。

 狐達は天狐と地狐それぞれ十匹ずつ。

 その他の召喚獣たちは、その種全体で十匹ずつを選んだ。

 <進化の萌芽>が出ていない個体も選んである。

 そのため、加護が進化にどの程度影響を与えるのかも確認できるはずだ。

 加護自体どの程度の数を与えることが出来るのかを確認する目的もあったのだが、上限はなさそうな感じなので、これ以上は止めておいた。

 特に理由は無いのだが、加護を大盤振る舞いしても意味がないと思ったので自重したのだ。

 ちなみにコーたち飛龍には加護を与えていない。

 そもそも飛龍たちが、進化ができる個体かどうかがわからなかった為だ。

 勿論進化をしなくても加護を与えること自体は問題ないのだが、今回はあくまでも進化との兼ね合いを調べるためなので、また別の機会に与えることに決めた。

 

 管理層に戻ると、ピーチが難しい顔をして座っていた。

「ん? どうかしたの?」

 声を掛けられて初めて考助がいたことに気付いたように、ピーチが顔を上げた。

「はい~? あ、コウスケさん?」

 考助が声を掛けてもどこか呆けた感じになっている。

「ちょっとちょっと、大丈夫?」

 考助は、少し慌ててピーチの所へ駆け寄り、目の前で手を左右に振り始めた。

「いえ~。ちょっと大丈夫じゃないというか・・・いっぺんに情報が入りすぎて少し混乱しています」

 その台詞で、ピーチがどういう状態になっているか理解できた。

 加護の力が発現したのはいいが、その力から得られた情報が多すぎて、処理が間に合っていない可能性があるのだ。

 それが行き過ぎると、考助が初めて左目の力を解放した時のようになる。

 勿論、加護はそこまでの力を発現することはない。

 とは言え、今のピーチのような状態になることは十分にあり得る。

 暴走、とはいかないまでも、それに近い状態になっているのだ。

「一気に解放したりすると、一気に情報が押し寄せたりするから今の状態になるんだよ」

「そうみたいです~」

「あー、うん。取りあえず、頭の中で情報が整理できるように目を瞑ったほうがいい」

 目から得られる情報と言うのが一番脳の力を使っていると聞いたことがある。

 それを無理やり遮断することによって、少しでも脳を整理させる方がいいと考えたのだ。

「そうします~」

 そう言って目を瞑ったピーチの隣に、考助は座った。

 そして、そのままフラフラしそうなピーチの頭をそっと押さえて、そのまま自身の膝の上に倒した。

「ふわわ~。コウスケさん~?」

 折角瞑っていた目を開けて、驚いたような表情を浮かべるピーチ。

 昼間から考助がこういった行動に出ること自体が珍しいので、驚いたのだ。

「まあまあ、たまにはいいでしょ? ゆっくり休みなよ」

 若干赤くなっているピーチと言うのも珍しい。

 折角なので、その端正な顔をゆっくり堪能させてもらうことにした。

「・・・そうさせてもらいます~」

 若干のためらいを見せたものの、ピーチは素直にそのまま目を瞑った。

「そうそう。いっそのことそのまま少しだけでも寝た方がよくなると思うよ?」

「はい~」

 返事をしたピーチは、既に気持ちよさそうになっていた。

 勿論、ピーチの寝つきがいいのではなく、傍にいたコウヒの悪戯だ。

 加護の力の半暴走の状態で、更に魔法を重ね掛けして大丈夫かと思ったのだが、特に問題なさそうだったのでそのままにしておいた。

 いつもであれば、コレット辺りが「イチャイチャ禁止~」と入ってくるのだが、特に邪魔されることなくピーチが目を覚ますまでそのままの状態を続けるのであった。

 

 ピーチが目を覚ましたのは、二時間程度経ってからのことだった。

 管理層のくつろぎスペースは、普段は人の出入りが激しいのだが、いままで一人も通ることは無かった。

 あるいは、ピーチの珍しい様子に気づいて、入ってくるのを遠慮していたのかもしれない、と考助は考えていた。

 何故なら、ピーチが目を覚ました時とほぼ同時に、フローリアが入ってきたからだ。

「お? 他には誰もいないのか? 珍しいな」

「私はさっきまで寝てたので気づきませんでしたが~?」

 ピーチがそう言って、考助の方を見た。

「ああ。ピーチが寝てからは誰も入ってこなかったな」

「ぬ? 寝てたのか? それこそ珍しいな。何かあったのか?」

 普段はのんびりしているピーチだが、誰かの前で昼寝をするという事はほとんどない。

 他のメンバーであれば、今いるくつろぎスペースにあるソファーで昼寝をしていることはよく見かけたりするのだが。

「ああ。加護の力にてられたらしい」

「ちょっと張り切りすぎました~」

 のんびりした口調だが、若干落ち込んでいる。

「いやいや。初めての事だからしょうがないし、落ち込むことは無いよ。むしろちゃんとしたアドバイスが出来なくてごめん」

 新米神なので、加護を与えた場合にどういったことになるのか、さっぱりわからないのだ。

 これがエリスあたりなら、きちんとしたアドバイスも与えられるのだろう。

 二人そろって落ち込みそうになったのを見たフローリアが、若干慌てた感じになる。

「待て待て。二人そろって落ち込んでどうする。お互いに初めての事なんだから、多少の事故(?)はしようがあるまい?」

 普段相手を慰めるなんてことをほとんどしないフローリアだが、流石にこの二人の状態は良くないと考えて、何とか収めようとした。

 そんなフローリアの助け舟がやってきた。

 

「おやおや~? 何、この雰囲気は?」

「お父様、どうかした?」

 コレットがハクを伴って入ってきた。

 恐らく今まで一緒に塔の視察にでも行っていたのだろう。

「いや、私もよくわからんのだがな。来た時にはこうなってきた」

 しょうがないので、考助がピーチが寝入る前にぐったりしていた様子を説明した。

 それを聞いたフローリアとコレットが、顔を合わせた。

「それはおそらく魔力酔いの一種ではないか?」

「もしくは、コウスケが言った通り暴走とも考えられるけど・・・私も魔力酔いだと思うわ」

「魔力酔い、ですか~? 私が、ですか?」

 魔力酔いとは、魔力を扱う者が急激にその量を増やした際に発生する一種の成長痛のような物だ。

 勿論聖力の場合は、聖力酔いという言い方をするが、この場合はどちらも同じ意味である。

「魔力酔いって何?」

「いや、僕もそれ知らないんだけど?」

 ハクに聞かれた考助が、素直にそう言ってコレットを見た。

「いや、私もさほど詳しいわけじゃ・・・あ、シルヴィア説明お願い!」

 説明をお願いされて窮地に立ったコレットが、救世主シルヴィアが入ってきたのを見て其方に話を振った。

「・・・はい?」

 いきなり話を振られたシルヴィアは、当然首を傾げるのであった。

 

「吾も魔力酔いだと思うがな」

 シルヴィアの後に一緒に入ってきたシュレインが、説明を聞いた後そう言って来た。

 シルヴィアはしばらく考えていたが、同意するように頷いた。

「そうですわね。魔力酔いというか、この場合は神力酔いという事になるのでしょうか」

「「「神力酔い?」」」

 首を傾げた一同に、シルヴィアが説明を続けた。

「加護を得る前からそうでしたが、ピーチさんは私達の中で一番神力の扱いが上手ですわ。勿論コウスケさんを除いてですが」

 この説明に、全員が頷く。

「コウスケ様の加護を使おうと訓練していて分かったのですが、恐らくコウスケ様の加護の力を使う場合は、神力を使っているかと思われます」

「なるほどの。だから、一番神力の扱いが上手いピーチが、一番最初に発現できたと?」

「いえ。どちらかと言えば、以前考えた通り種族特性が先で、それに神力の扱いが付随して来たのかと」

 ピーチ以外にも、種族特性がはっきりしているのは、シュレインもコレットも同じなのだ。

 だが、それでもピーチが誰よりも先に加護の力を発現できたのは、神力の扱いの事があったということも含まれていたのだ。

「以前からの神力を扱ってきたことと、今回の加護の件で、神力酔いのような状態になったのだと思いますわ。

 ただ、勿論コウスケさんの情報過多と言うのも混ざっているようですが」

 的確なシルヴィアの意見に、全員が納得したような表情になっていた。

「あ、あの・・・。今の話も絶対ではないので、参考程度に聞いておいてくださいね」

 一応最後に、シルヴィアがそう念を押したが、残念ながらそれを聞くものは誰もいないのであった。

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