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塔の管理をしてみよう  作者: 早秋
第3章 塔へ色々な種族を受け入れよう
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(2) 妖精

よろしくお願いします

 第五層の転移門が開通する一週間前。

 どうしてもギルドカードを作りたい考助は、管理層でステータス確認装置を形にしようと頑張っていた。

 その作業を一区切りさせた考助は、第七十三層から戻ってきたコウヒからある相談を受けていた。

「主様、少しよろしいでしょうか?」

「・・・ん? どうかした?」

「第七十三層のリストンからある提案を受けましたが、それを受け入れていいのか確認したいのです」

「提案?」

「それが、第七十三層の世界樹は、あの場で根付けるまでは成長できたそうです。ですが、これ以上本格的に成長させるにはどうしても人手が必要になるそうです」

「ああ、なるほど。・・・って、あれ? リストン、前に一人じゃ人手が足りないからって、自前で仲間召喚してなかったっけ?」

 考助の言う通り、リストンは他に二人のハイエルフを召喚していた。

 そもそもこの世界でハイエルフは、ほぼ伝説的な存在になっている。

 そのハイエルフが、なぜコウヒやリストンに召喚されているかというと、肉体的にはともかく精神的にはほぼ不滅と言っていいハイエルフたちが、肉体を捨てて精神体として存在しているからだ。

 その精神体を呼び出して、召喚で肉体を与えているのだ。

 ちなみに、他のハイエルフの名前や存在を知っていて召喚したリストンと全く知らずに呼び出したコウヒでは、後者の方がはるかに難易度が高いというのは余談である。


「はい。今までは三人でも大丈夫だったそうですが、それ以上となるとどうしても周辺の環境にも手を入れないといけないそうで、どうしても人手がいるそうです」

「なるほどね。・・・で? わざわざコウヒが僕に相談ってことは、ミツキの時みたいに、結構な人数になるってこと?」

 第七十六層を管理しているミツキも以前にシュレインに請われて、大量の眷属を召喚している。

「いえ。それが、召喚ではなく・・・外からエルフたちを呼びたいと言っています」

「・・・・・・なるほど」

 考助は、なぜコウヒが相談に来たのか理解できた。

 外から呼ぶということは、それなりの人数になるということだろう。

 塔の外に一々出て転移を繰り返す、という方法もできなくはないが、それをするにはコウヒの時間的負担が大きすぎるのだ。

 それよりは、転移門を設置したほうがいいということだ。

 だが、それには大きな問題点がある。


「・・・外部と繋がって、余計なものまで呼び込みかねない、と?」

「そうです。一応確認しましたが、こちらに引き込もうとしている一族は、閉鎖的な一族で外との関わりはほとんどないそうです」

 その答えに考助は苦笑した。

「・・・それはそれで、扱いづらい気がするけど?」

「そうですが、逆に考えれば、塔の階層に引きこもるのに適しているともいえます」

「引きこもるって・・・まあ、確かに」

「それからその一族は、アーゼン大陸にある世界樹を管理している一族だそうです」

 アーゼン大陸とは、セントラル大陸から見て北に位置する大陸だ。

「もうすでに世界樹の管理してるのに、わざわざこっちに来るの?」

「それが・・・リストンによると、その世界樹はすでに役目を終えているそうです」

「・・・・・・どういうこと?」

「世界樹とは、その世界の聖力や魔力の流れを整える役目があるそうですが、そこの世界樹はすでにそれらの地脈から外れてしまっているようです」

「なるほど。それでもう役目が終わってる、ということ?」

「はい」

「そうか・・・。・・・とりあえず、会ってみないことには、何とも言えないな。会うことって可能?」

「今からですか? 何も主様ではなく私が先に確認して参りますが?」

「大丈夫だよ。二人にちゃんとついてきてもらうし。あと、ほかの場所にある世界樹も見てみたい」

 コウヒは、考助のその言葉にミツキの方を確認した。

 彼女も第七十六層を管理しているので、以前のようにいつでも時間があるわけではないのだ。

「私のほうは大丈夫よ」

「・・・わかりました。では、リストンに話をしてきます」

「あ、まった。僕も行くよ。成長した世界樹見てみたいし」

 考助の提案にコウヒも同意して、三人で第七十三層へ向かうことになった。


 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦


「おや。これは、皆さんおそろいで・・・何かありましたか?」

「以前より話のあったエルフ移住の件です。あとは主様が、成長した世界樹を見たいと仰ったので来ました」

 第七十三層へ向かった考助たちを出迎えたのは、リストンだ。

 他の二人は出払っているのか付近には見当たらない。

 そして、考助はというと、成長した世界樹に見入っていた。

 もともと苗木という割には大きいと思っていたが、さらに大きく成長している。

「そうですか。・・・? 考助様?」

 考助の様子に、リストンが不思議そうに問いかけた。

 だが考助はその声が聞こえていないのか、世界樹の方へ近づいて行っている。

「主様?」

「考助様?」

 足取りは普通なので、操られているということはないが、それでも何となく様子のおかしい考助に、コウヒとミツキも訝しげにしている。

「・・・これが、世界樹か」

 そんな周囲の様子も気にせずに、考助は世界樹を見入っていた。

 考助が見ているのは、大小の光に囲まれている世界樹だ。

 苗木として植えたばかりの時は、そのようなものは見えなかった。

 左目の力のおかげで見えているのか、それともそれに関係なく見えているのかは不明だが、今はそんなことどうでもいい。

 とにかく、この幻想的な様子に、ただただ魅入っていた。


 やがて世界樹に近づいていた考助が、根本まで到着して右手をその幹にそっと触れる。

 その瞬間、世界樹が淡く光を発して、さらには葉の部分から小さな光を生み出していった。

 やがて、その光が考助の目の前に集まり、最後には手のひらサイズの妖精(?)が出現していた。

 その妖精は、楽しそうに考助の周りをふわふわと飛び回っている。

「そ・・・そんな・・・あれは、まさか・・・」

 その様子を見てリストンは、呆然としていた。

 どう見てもその妖精には敵意が見えないので、そのままやらせたいようにしているミツキが、リストンへ質問を投げかけた。

「あれが何か、知っているようね。あれは、何?」

「・・・いえ。そんなはずはありません。・・・私の勘違いですからお気になさらずに・・・」

「あなたの個人的な意見などどうでもいいわ。いいから、知っていることを話しなさい」

「・・・・・・」

 リストンが黙り込むと、ミツキがわずかにプレッシャーを放つ。

 それを受けて、リストンは背中に冷や汗をかきながら話しだした。

「・・・我々エルフに伝わる伝説です。世界樹には偉大な精霊が宿っており、その精霊に認められた者の前にだけそのお姿を現すと・・・」

「なるほどね。ということは、あれはその精霊かあるいはそれに近しい存在ということね」

「さすが、主様です」

 そんな、まさか、ありえない、とつぶやくリストンを放置して、コウヒとミツキは二人で妖精と戯れている考助を見ながら納得していた。


「リストン、何があった・・・!?」

「あの光はなんだ!?」

 世界樹のいつもと違う様子に気付いたのか、セーラとゼパルもその場にやってきた。

 そして考助と妖精を見つけ、絶句して立ち止まった。

 それを見て、コウヒとミツキは妖精が世界樹に宿る者だと確信した。

 コウヒが二人の方へ近づいて問いかけた。

「一応確認しますが、あれは世界樹に宿る者で間違いないですね?」

「いえ・・・おそらく・・・というか言いようがないです。何しろ若木の世界樹自体が、もはや伝説の存在なのです」

「ましてやそれに宿る者となると、確認したことがあるものは皆無でして・・・」

「そうですか。・・・まあ、ともかく、主様に対しておかしな行動をするわけでもないですし、しばらく様子を見ましょうか」

「そうね。それがいいわ」

 コウヒとミツキは、この場ではそう結論を出して、考助と妖精の様子を見守るのであった。

次話翌日20時投稿予定


2014/4/24 訂正(ミツキの管理層訂正)

2014/6/6 脱字訂正

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