(1) 第五層の状況確認
状況説明回。
文字ばっかりです。
定例会。
月に一度、第五層の主要メンバーが管理層の会議スペースに集まって町の状況を報告することになった。
考助としては特に必要ないと思っていたのだが、町のメンバー側から是非に、と言われて開くことにしたのだ。
町側のメンバーは、まずクラウンから部門長の三人プラス六侯から一人、行政府からはアレクとその部下三人、それに召喚組五人が来ていた。
塔の管理側は、フルメンバーが揃っている。
まずはアレクから現在の第五層の町の状況が説明された。
つい最近、とうとう町の人口が一万人を超えたという報告から始まった。
この人数は、全体の人数ではなく定住者のみの数だ。
ここでいう定住者と言うのは、第五層の町に住居を持った者達の事を指している。
賃貸の住居にすんでいる者達もこの数に含まれている。
ただし、宿やホテルの宿泊者は別になっている。
要は住人登録しているかしていないかの差なのだが、住人登録している人数が一万人を超えたということになる。
基本的に行政府の収入の大部分が塔外部からの転移門の使用料と、土地の賃貸料で賄われている。
定住者が増えればそれだけ行政府にとっての収入になる。
今のところ住人に対しての税金はないのだが、今後は人頭税という形で税金を取ることは発表されている。
住人登録すると、この人頭税がかかるということになるので、登録しない者も出てくるだろうが、それはそれで構わない。
住人登録するという事は、自身の所属をはっきりさせるという意味があるので、身分保障にもなるのだ。
だからこそ第五層の町以外の町でも、同じような方法がとられていた。
というよりもアレクたち行政府が、同じような方法をとることに決めたのだが。
住人に対してかかる税は今のところそれだけだが、商売を行う者達にとっては税はまた別にある。
これに関しては、個人で商店を開いている者達も同様だった。
今のところ個人商店で一番多いのが、飲食店になる。
第五層の町は、完全に冒険者で成り立っている町なので、その冒険者狙いの商売が盛んにおこなわれているのだ。
大手の商業ギルドが狙うのは、宿やホテルの経営であり、その冒険者が売買する物、という事になる。
定住者が増えたことにより、以前は冒険者たちに任せていた治安維持に関しても正式な部隊が設けられた。
ほとんどのメンバーが元冒険者という者達だったが。
人が増えればどうしたって犯罪行為は増える。
治安部隊が無いと町が荒れるだけなので、どうしても必要な組織なのだ。
だが、他の町の治安部隊とは大きく違っているところがある。
それは処罰の中に、塔外への追放という物があるところだ。
この刑を受けると、二度とアマミヤの塔へと戻ってくることが出来ない。
生涯変わることのない魔力パターンが登録されるので、これは絶対に変えることができない。
既にその刑を受けている者も出ているそうだ。
治安部隊以外にも様々な組織が動き出しているようで、本格的に行政府としての機能を果たし始めていた。
他の町であぶれた者達が第五層の町の噂を聞いて、移住してきているため、現在の人口増加の流れはしばらくは続くとアレクたちは予想していた。
新しく作られている最中の町なので、基本的に仕事はいくらでもある。
その仕事を狙って、移住者たちがやってくるのだ。
続いてクラウンの活動が報告された。
六侯が加わったことにより、新たに生産部門が作られた。
主に農林畜産関係をその部門が管理することになった。
増え続ける町の人口に対する食糧生産は、完全にこの生産部門が一手に引き受けることになっていた。
生産部門の部門長は、六侯達が持ち回りで引き受けることになっていた。
現在は塔外部からの仕入れで賄われているのがほとんどだが、既に開発が行われていた農地の分も含めて少しずつだが第五層産の生産物も出来ているようだった。
六侯達は、いずれは大部分の食物を塔内だけで生産するように目指しているようで、その後は塔外への取引も視野に入れている。
というよりも今開発している農地や放牧地が完全に機能するようになれば、その目標は達成されるとのことだった。
増え続ける町の人口に関しても織り込み済みという事なので、六侯の手腕が余すことなく発揮されていることになる。
生産部門が管理しているのは、農産物だけではなく畜産物も含まれているが、流石にそちらが結果を出すのはもうしばらく先のことになるということだった。
新たに加わった生産部門の他に、開発部門も作られることになった。
当然部門長はイスナーニなのだが、今まで一人だった部門だが、新たに他のメンバーを集めることになった。
イスナーニは今まで管理層で開発していたのだが、それを第五層に新たに開発室を作り技術の継承も含めて行われることになった。
これはシュミットとアレク達から是非にと言われて作ることにしたのだ。
なぜそんなことを言いだしたのかというと、ゴーレムの一号を見たためである。
使われている素材を聞いたシュミットが頭を抱えていたが、それでもかなりの価値があるようで、塔の目玉商品として売り出したいとのことだった。
時間と手間を考えて、考助達がわざわざ作って売り出すわけにもいかないので、新たな部門を作って対応することにしたのだ。
神力を使っていないとはいえ、かなり高度な技術を使っているので、かなりの長期戦になるのだが、その過程で作れるものだけでもそれなりの利益は見込めるとのことだった。
その辺は流石のシュミットと言ったところで、きっちりと計算されていた。
上手くいけば、セントラル大陸に限らず他の大陸への輸出も出来るとのことだ。
もっとも、塔で取れた素材の一部は、既に他の大陸への輸出も行われているのだが。
工芸部門は一部の業務が生産部門に移ったくらいで、あとは変わらず活動しているとのことだった。
相変わらず建築に関する需要が高いとのことで、それに関する労働者が常に足りていない状態だ。
その職を求めて他の町から人が流れてきているので、町にとってはいい面もあるのだろう。
問題はその職が無くなった時なのだが、これに関しては行政府とクラウンの間で幾度となく話し合いがもたれている。
流石に長期的な話で、さらには一つ決めて終わりというわけではないので、町が存続する限りは話し合われるテーマになる。
最後は商人部門と冒険者部門の報告だった。
二つが同時に報告されたのには、きちんと理由がある。
メインの話が、セントラル大陸の東西南北の町に作られたクラウン支部の話になったためだ。
支部に関しては、立ち上げは順調に行われて、クラウンカードの仮発行も問題なく行われているとのことだった。
仮発行の段階では、ステータス表示はされないのだが、それでもクラウンの噂はしっかりと伝わっているらしく、登録希望する冒険者は各町でかなりの数になっている。
それぞれの町から転移門を是非設置してくれという要望も上がっているそうだが、これに関してはきっぱりと断っていた。
転移門がある四つの街から東西南北の町への流通が一番の問題だが、クラウンの冒険者部門に登録されている冒険者を使って数で解決していた。
輸送中の護衛だけではなく、輸送で使われる街道の調査もクラウン発で依頼が出されていた。
それでも輸送中に襲われる事は普通にあるので、護衛もきっちり雇っている。
一時期、街道のモンスターの数が増えて来たという話もあったのだが、何とか抑えることに成功したようだ。
この活動により、クラウンがセントラル大陸にとって重要な存在になりつつあると認識され始めているという話で、今回の定例会は閉会となった。
しかし・・・土日より月曜の方がプレビュー多いのは何故なんでしょうね?
全く理由が思い当たりませんw




