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塔の管理をしてみよう  作者: 早秋
第16章 塔とゴーレム
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(1) 周辺の塔の現状

 ハクが塔に来てから半月ほどが過ぎた。

 その間のハクは、主にシルヴィア達の護衛に付いていた。

 塔の管理をする上で、各階層の様子を見るためにどうしても戦闘は避けられない。

 戦闘力がほとんどないシルヴィアを除けば、他のメンバーはそれなりに戦うことが出来る。

 とは言え、何があるかわからないために、ハクに付いてもらっていた。

 ハクの戦闘能力は、コウヒやミツキに匹敵する。

 確かに神域にいるときに、コウヒやミツキを超えることはないと聞いていたが、匹敵するとは聞いていなかった。

 まあ神域で聞いたときは、どのくらいの強さになるかは生まれてみないと分からないという事だったので、嘘ではないのだが。

 そんなわけで、ハクには主に護衛と言う名目で各塔の階層に出入りしてもらっていた。

 勿論、後々塔の管理をしてもらうためでもある。

 それぞれのメンバーとくっついて色々と動き回ったおかげか、ハクはすぐに打ち解けてしまった。

 出自のおかげで、最初はどうなる事かと思ったのだが、幾分ホッとした考助であった。

 

 肝心の塔はどうなっているかというと、まずはアマミヤの塔は、四種の妖精石を前と同じ階層に設置した。

 未だに召喚条件は分かっていない。

 ただ今のところ勝手に召喚されることはないので、神力が最後の条件であることは間違いないと考助は考えている。

 そこにたどりつくまでの条件も全く分かっていないので、妖精石に関してはほとんどわかっていないのが現状だった。

 アマミヤの塔に関しては、妖精石以外に何かを設置したりという事はしていない。

 勿論、召喚獣たちの討伐用の召喚陣は除いてであるが。

 一方でアマミヤの塔以外の他の塔に関しては進展があった。

 まずこの期間に、何もいじっていない北西の塔以外の塔LVがLV3になっていた。

 最初はそれぞれの塔でLVアップの条件が違っているのかと思ったのだが、塔の規模によって違っていたようだった。

 小タイプの北東・南東・北西・南西の塔、中タイプの北・南の塔、アマミヤの塔で違っていたようだった。

 一度条件が分かってしまえば、それに似た条件で経験値を得ていけばいいので、後は数を増やせばいい物だけだった。

 神力はアマミヤの塔や世界樹、ヴァミリニア城から得た物をそれぞれの塔に分けているので、ある意味コスト度外視で管理が出来る。

 さらに、北東・南東・南西の塔に関しては、考助がお願いしていた実験も進んでいた。

 北東ではレイス、南東ではスライム、南西ではゴブリンを召喚していた。

 考助が選んだわけではなく、それぞれの塔の管理者であるメンバーが選んだのだ。

 

「それで? どんな感じ?」

 考助が、たまたま管理から戻ってきてたフローリアに聞いた。

「階層の制圧率は八割くらいまで行ったが、その先はなかなか調整が難しいな」

「難しいって言うのは?」

「どうしても隙間のような所が出来てしまうのと、自然発生するモンスターが抑えられないようだ」

 隙間なく結界で覆ってしまえば大丈夫なのだろうが、それでは実験の意味がない。

 あくまでも自然発生するモンスターの様子を見るためでもあるのだ。

「うーん・・・召喚モンスターの維持は?」

「其方は召喚陣からの餌で賄えるから今のところ問題ない。同士討ちといったことも発生していないしな」

 ちなみにフローリアが管理している南西の塔では、小鬼人ゴブリンを召喚しているのだが、既に鬼人キジンに進化している個体が出ていた。

 姿形がより人間に近くになっているというか、完全に小柄な人といった姿形になっている。

 知能もゴブリンに比べてはるかに上がっているので、指示も出しやすくなっている。

「鬼人たちが出てから統率も取れて来たから無駄狩りも減ったしな」

 以前は、食料にするわけでもないのに、ひたすら狩りをしていたゴブリンたちが、必要な分だけ狩りをするようになったのだ。

「うーん。それはそれで効率がいいのか悪いのか」

「む? 余計な召喚をしなくて済むのではないのか?」

「そうなんだけどね。この先の上のレベルを召喚することを考えたら食糧分だけ狩られるのも問題なんだよね」

 中級モンスターの召喚陣を設置できるようになれば、神力が確実に稼げるようになる。

 それは当然召喚陣を設置すればするほど増えていくのだ。

 だが、召喚モンスターの方で狩りを制限してしまえば、その効率が悪くなる。

「それもそうか。だが、こればかりは教えられるものではないぞ?」

「いや、それは別にいいよ。というか変に教えて戦闘マシーンになるのも困るから、むしろ今の方がいいんじゃないかな?」

 食料やなにかの材料にするわけでもないのに、ひたすら狩りをするのはただの殺人狂だ。相手がモンスターだとしても。

「そんなものか?」

「変に凶暴化して手が付けられなくなったら困るよね?」

「ああ、なるほど。そういう事か」

 塔と言う限定した場所で活動しているとは言え、ただただ暴れまくるだけの眷属など考助としてはごめんなのだ。

「あとは、鬼人の中で人の言葉を理解できるものが出て来たな。おかげで意思疎通がやりやすい」

「へー、それは、複数?」

「ああ、何体か出ているようだが?」

「だったらその個体を連れて他の階層に拠点でも作ってみたら?」

 現状、中級モンスターの召喚陣が設置できない以上、あまり進化個体を置いておく意味がない。

 それだったら他の階層に連れて行って、自由に行動させたらどうなるかと思っての意見だった。

「まあ管理するのはフローリアだから自由にやっていいけど。召喚陣の設置とかもあるからね」

 考助の意見に、フローリアは考え込むような顔になった。

 色々と考えているのだろう。

「確かに考えてみる価値はありそうだ。ある程度数が揃えば、中級の層へ拠点を作るのもありだな」

「そうそう」

 中級モンスターが自然発生している階層での討伐が出来れば、そこからも神力を得ることが出来るようになる。

 現状他の塔から神力を得ている以上、多少でも赤字状態が改善されればいう事なしなのだ。

「まあ、召喚陣をたくさん設置するのもありだけど、自分が動けなくなったら意味がないからあまりやりすぎないようにね」

「わかっている。ちゃんと調整はするさ」


 何となく話が終わりそうな雰囲気になったところで、二人がいる場所にピーチとシルヴィアとハクがやってきた。

「あれ~? 何か相談事ですか?」

「いや、相談事と言うか、どちらかというと現状の確認だね」

「そういう事なら私も報告します~」

 言ったのはピーチだったが、シルヴィアも同時に報告することになった。

 結果としてわかったのだが、それぞれの塔の階層で同一の眷属が占有できるのは八割くらいなのではないか、ということだった。

 それ以上となると、どうしても先ほどフローリアが報告した状態になるのだ。

 余談だがシルヴィアが召喚しているのはスライムだが、眷属化しているスライムは、何かの補正があるのか簡単には倒されなくなっているらしい。

「うーん、となるとやっぱり現状維持が一番いいのかな? 塔LVが上がって中級モンスターが召喚できるようになれば、また状況が変わるかもね」

 三つの塔の結果から考えるとどう頑張っても自然発生するモンスターを抑えることは出来なさそうな感じがする。

 それに合わせて召喚陣から餌を得ている以上、自然発生するモンスターのレベルが上がるのも時間の問題だろう。

 下手なことをすると、突発的に発生したモンスターが、レベルの低い眷属モンスターを駆逐してしまう可能性もある。

 この先は自然発生するモンスターについても注意しないといけない。

 取りあえず現状維持、ということだけ伝えて後はそれぞれの管理に任せることにした。

 この実験はあくまでも考助の依頼によるもので、それぞれの塔の管理はそれぞれに任せている。

 それに、いまの段階でアマミヤの塔に同じことは出来ない、という事が分かっただけでも十分だった。

 かかるコストが全く違ってくる上に、隙間が発生した時の危険度はさらに上がる。

 それぞれの塔でも、出来れば中級モンスターが召喚できるようになるくらいまでは様子を見たいが、その後は結果次第でそれぞれの階層から眷属たちを他の層へ分散させた方がいいかもしれない。

 何となく眷属モンスターが駆逐される可能性が現実的になりそうな気がしたため、自然発生するモンスターをよく見ておくように伝える考助だった。

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