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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第15章 塔と女神様

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閑話 女神様の事情

 考助が再び[常春の庭]にやってくる。
 その情報は、あっという間に神域にいる女神達の間に広まった。
 そもそもサキュバス一族の占いでさえ高い的中率を誇るのだ。
 神の中には当然、そう言った占いを専門にしている者達が複数いる。
 そう言った女神達から情報が広まったのだ。
 三大神の姉妹の元にその話が来た時には、既に神域中に噂が広まった後だった。

「で? 今回はどうするんの? 既に噂は広まりきっていて、前回の様には行かないと思うわよ?」
 エリスにそう問いかけたのは、女神達の代表の様な形で訪問してきたミディール神だった。
 三大神には及ばないとはいえ、大地の神であるミディール神は、農耕の民に広く親しまれている神だ。
 そのミディール神が、代表という形になっているからこそ、今のところ騒ぎにはなっていない。
 だが、もしこれが無ければ、集団でアスラの屋敷に押し掛けていたかもしれない。
 今回に関しては、考助が来るまでに半端に時間があったのも災いしていた。
 中途半端に時間があったために、噂が広まるのに十分だったが、事前調整するには時間が足りなさ過ぎたのだ。
 考助が[常春の庭]に来るという噂が、ここまで急速に広まったのには勿論、前回来た時に会った女神達の話が広まっていたためだ。
 特に、信仰がさほどない女神達の話が、注目を浴びていたのだ。
 信仰も弱くなるにつれて、アースガルドとの繋がりも弱くなっていたはずなのに、繋がりが急激に強くなったと。
 勿論普通に信仰が残っている神々とは比べるのが間違っているほど弱い物だが、それでも後は先細りをして消えるのを待つだけ、という状態だった女神達にとっては朗報どころではない。
 何が何でも今回の訪問で、考助とお近づきになりたいという者達が増えるのは当然と言えた。
 さらに言うなら、繋がりが増えるのは、そう言った弱小の女神だけではない。
 それなりに力のある女神も増えていたのだ。
 その女神曰く、神託が通りやすくなった、という事だった。
 早い話が、余計な雑音が入らずに解釈のしようがない神託が増えたのだ。
 これには、上級神たちも驚いた。
 当然、彼らの仕事に大きくかかわることになるので是非とも検証したいという話になったのだ。
 そう言った諸々の事情を鑑みて、何か事が起こる前にミディール神が動いたのだ。
 ミディール神の問いかけに、エリスがため息を吐いて答えた。
「仕方ありません。今回はすぐに帰還してもらわずに、一泊してもらいます。その間に出来るだけ触れ合ってもらいます」
「触れ合うと言っても数には限りがあるのでは? 希望者に比べて圧倒的に触れ合える数が少ないと思うわよ?」
「そうですね・・・・・・ジャル、何かいい案はありませんか?」
「ふえっ・・・!? また、無茶なことを・・・いくらなんでもそんな簡単に思いつかないわよ」
 突然振られたジャルが、必死に考え込んだ。
「取りあえず、一泊するんだったら夜会のようなのは開くわよね?」
「当然です」
 ジャルの提案に、エリスもミディール神も頷いている。
「そちらは、スピカに仕切ってもらいます。ジャルには別の何かを考えてもらいます。出来る限り多くの者達と考助様が、触れ合えるものをお願いします」
「わかった」
 エリスの言葉に、スピカは短く同意した。
「夜会の方は、人数が限られるので先に参加者を募ってしまいましょう。どういう形で選ぶかは任せます。ミル(ミディール神)と話し合ってください」
「ええ、それがいいわね」
 一応代表という形を取っているミディール神は、全員のとりまとめのような立場になっている。
 ちなみに、ミディール神が今回さほど焦っていないのは、前回の訪問時の中にいたからだ。
 それも含めて、前回考助と触れ合えた者は、優先度を落とすつもりだった。
 ただ、夜会に参加できる人数だけでは、今回の要求にはとても応えられない。
 例え人数を無理やり集めたとしても、考助に近づけなければ意味がないのだ。
 夜会の最中に、考助一人で応対できる人数などさほど多くはない。
 頭を悩ませる四人に対して、突然ドアを開けて乱入者が入ってきた。

「握手会をすればいいのよ・・・・・・!!」

 そう言って部屋に入って来たのは、アスラだった。
 アスラが何故握手会の存在を知っているかというと、[常春の庭]に来た考助の事を調べるために、その記憶にも触れていたからだ。
 余談であるが、記憶に触れることには考助にはきちんと了解をもらってから触れている。
 その記憶の中にそういった物があったのだ。
「握手会とはなんでしょうか?」
 そんなものを見たことも聞いたこともないので、当然のようにエリスが疑問を口にした。
 他の三人も不思議そうな表情になっている。
 そんな彼らに、アスラが握手会について説明を始めた。
 詳しく説明するにつれて、彼らの表情が明るくなってきた。
「確かにそれだと、短時間で多くの人数が捌けるわね」
 ミディール神の言葉に全員が頷いた。
 この瞬間、アースガルドの世界において、初の握手会が開催されることが決定したのだった。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 考助が塔へと戻った後。
 ミルがアスラの屋敷へと訪れていた。
 今回は遠慮をしていたために、ミルは屋敷の訪問を控えていたのだ。
「それで? どうだったの?」
「問題ないわね。大成功よ」
 ジャルの答えに、顔を綻ばせたミルだったが、ふと考え込むような表情になった。
「相性が悪い者は出なかったの?」
「不思議と出なかったわね」
 傍に寄るとかならともかく、握手という形で直接触れ合う場合には、どうしたって相性の悪さが出てくる場合がある。
 そのはずなのだ。
 だが、そう言った報告は一件も出なかった。
「あれだけの人数に触れて、一人も出ないというのは逆におかしいわね? 何か理由があるのかな?」
「勿論あるわよ」
 ミルの答えに答えたのは、ジャルではなくアスラだった。
「そもそも考助が最初に来たのが、ここだったというのが大きいわね。アースガルドそのものに行っていたらこうはいかなかったでしょうね」
 魂の状態のままで[常春の庭]の空気に触れたことが、そこで生活している女神達と同じような存在になった。
 さらに初の男性神ということで、今までなかった基準が考助を中心に考えられるようになったのだ。
 考助がこの話を聞けば、頭を抱えそうな話だった。
「だから最初から彼女たちも悪い感情は抱いていないでしょう?」
「言われてみれば、私もそうでしたね」
 ミルが初めての訪問時に考助に会いに来たのは、単なる好奇心だったのだが直接会ったときは、その感情が好ましいものなっていた。
「他にもありそうな気もするけど、流石に今の状況だと分からないわね」
 アスラは最後にそう締めくくった。

「ところで・・・今後は定期的に来てもらうようにしてもらうとかは出来ないの?」
 ミルの問いかけに、その場の全員が固まった。
 迂闊すぎるが、言われるまで思いつかなかったのだ。
 だが言われてみれば、こちらから交神することも可能なのだから聞いてみればいいのだ。
 もし定期的に来れるようになれば、今回のような騒ぎにはならなかっただろう。
「後ほど確認してみます」
 アスラを除いて一番結びつきが強いエリスが、そう答えた。
 この場合アスラが答えなかったのは、そうそう簡単にアスラ自身からアースガルドに干渉できないためだ。
 結局この後エリスがシルヴィアを経由して確認して、定期的な訪問を取り付けたことにより、今回のような騒動は起こらなくなったのであった。
ミディール神が今後再登場するかは、作者にも分かりません。
農耕の神なので、ケネルセンを配下にした以上神の名前として出てくるかもしれませんが。

この話で第十五章は終わりです。明日から第十六章になります。
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