(5)レベルアップ
翌日。
朝食を食べた後、考助は管理画面を見て、塔LVが2に上がっていることに気付いた。
なぜ上がったのか確認しようとしたら、普通に「お知らせ」という項目があったので、そこを見てみる。
「お知らせ」には塔レベルが上がったというメッセージだけが書かれていたが、そこから詳細にリンクがあったので詳細を確認してみる。
お知らせ:塔LVが2に上がりました。
詳細:以下の条件を満たしたため塔管理経験値を合計10得ました。
・転移門を五個設置しよう。取得経験値4
・設置物を十個設置しよう。取得経験値6
塔LV1⇒2に必要な経験値8を得たので、塔LV2になりました。残りの塔管理経験値は2になります。
どうやら昨日の段階で二つの条件を満たしていたらしい。
しかし、この二つの条件を満たした直後は、LVアップをしていなかった。
塔のLVアップは、例えば午前零時に行うなど、特定の時間に行うのかもしれない。
まだ一度のLVアップしかしていないので、確定したわけではないのだが。
とりあえずLVアップに関しては、情報が少ないので後々考えることにした。
LVアップしたことで設置できるものがわずかながら増えたので、確認していると気になるものが見つかった。
名称:灰色狼召喚陣(10体)
ランク:モンスターランクF
設置コスト:10pt(神力)もしくは、聖力+魔力の合計5000pt
説明:灰色狼を10体を任意で召喚できる。塔LV2で解放された。番犬として使える。
名称:灰色狼召喚陣
ランク:モンスターランクF
設置コスト:100pt(神力)もしくは、聖力+魔力の合計5万pt
説明:灰色狼をランダムで最大1000体まで召喚する。1000体討伐できると得られるptは、神力約110p
<灰色狼召喚陣>と比べると明らかに<灰色狼召喚陣(10体)>の方が、コスト的に割高だ。
だが、少し思うところがあったので、<灰色狼召喚陣(10体)>を村の神殿のそばに設置した。
設置コストも神力が10ptなので、思いつきと違っていてもあまり痛い出費ではないだろう。
昼前にはミツキも帰ってくると言っていたので、確認ついでに今度は三人で村へ行ってみることにした。
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予定通りミツキは昼前に帰ってきたので、三人で昼食をとってから第五層へ向かった。
目的は、昼前に設置した召喚陣の確認だ。
召喚陣は神殿の前にきちんと設置されていた。
試しに召喚陣に触れてみると、神力がわずかに流れ込むのが分かった。
それと同時に召喚陣が起動して、一体の狼が出現する。
「・・・主様!!」
「待って!」
召喚された狼を見て、近くにいたコウヒがすぐさま切り捨てようとしたが、慌てて考助がそれを止めた。
幸いにも考助の制止が間に合い、召喚された狼がコウヒに切り捨てられることはなかった。
その狼は、召喚陣の上でただじっと黙って考助を見ていた。
その様子に何となく思い当たることがあった考助は、そっと呼びかけてみた。
「・・・・・・おいで」
その言葉を待っていたかのように、狼が考助に向かって襲い掛かってきた。もとい、飛びかかってきた。
召喚陣に触れるためしゃがんでいた考助は、その勢いに思わず寝転がってしまう。
「うわっ・・・・・・ちょっと待って・・・くすぐったいって!!」
その言葉も気にせず、狼は考助の上に乗っかったまま考助の顔をぺろぺろと嬉しそうになめ始めた。
その懐き様に、コウヒとミツキは若干驚いたように見ていた。
「・・・召喚・・・ですか?」
「恐らく・・・ね。ここまで懐かれてるのは、予想外だけどね」
「こら・・・ちょっと待てって・・・。・・・・・・ふう。いや・・・たぶんだけど、通常の召喚とは違うよ。僕は召喚使ってないし」
なんとか狼を落ち着かせて、会話に加わった。
「どういうこと?」
「この召喚陣は、あくまでも塔の機能の一つなんだと思う。普通の召喚にしては、どう考えても魔力も聖力も全然使ってないから」
念のため左目を使って確認してみる。
固有名:なし
種族名:灰色狼
固有スキル:遠吠えLV2 噛みつきLV2 集団行動LV1
天恵スキル:なし
称号:考助の眷属(仮)
ある意味予想通りの称号がついていた。
念のため別の場所に設置していた<灰色狼召喚陣>から発生した灰色狼を確認してみたが、称号はついていなかった。
(仮)が気になるが、特に今は気にしないでおく。
称号についてコウヒとミツキの二人にも話した。
「なるほどね。ということは、塔の管理で設置した召喚陣から召喚された魔物は考助様の眷属になるということね?」
「全部の召喚陣がそうだとは限らないけど、そういう召喚陣もあるということだね」
とりあえずこの召喚陣で召喚された灰色狼に関しては、特に危険がないというのが分かったので、さらに召喚してみた。
結果、きっちり10匹の灰色狼が召喚できた。
10匹目の灰色狼が召喚された後、その召喚陣は消えてしまった。
ついでに召喚された狼に名前を付けることにした。一々考えるのは時間がかかってしまうので、順番にヒイ・フウ・ミイ・ヨウ・イツ・ムウ・ナナ・ヤア・ココ・トウと名付けた。安直である。
名前を付けた後で確認すると、名付けた固有名があり称号の(仮)がなくなっていた。
個体それぞれに名前をつけると、正式に眷属になるのだろう。
次に彼らにどの程度の指示ができるか試してみることにする。
コウヒやミツキに村周辺にあるモンスターの巣を探してもらって、その場所まで行きどういったことができるのかを確認してみた。
その結果、ある程度彼らの自由に動かした方が上手くいくことが分かった。
考助自身が細かく指示を出すのではなく、あそこのモンスターの集団を襲え、など大まかに指示するとその通りに集団で行動するのだ。
まだまだそれぞれのスキルのLVが低いので危なっかしいところもあったが、その場合はコウヒとミツキの手助けが入り特に大きな事故は発生しなかった。
集団での行動が得意なのはスキルの恩恵だろう。
村に戻ってくるまでには、全部の個体の集団行動スキルがLV3まで上がっていた。
後の方になるにつれ明らかに連携が増していたので、納得の結果である。
村に戻ってきて、彼らに村周辺で警戒するように指示した後、考助たち三人は管理層へ戻った。
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管理層へと戻ってきたコウヒとミツキは、今日の分の召喚を行う。
また男女の召喚で、それぞれイスナーニとドルと名乗った。
当然のように考助に対して傅いていたが、それに関してはもうあきらめているので、考助も特に突っ込むこともなく挨拶も無事に終わる。
今日はコウヒがリュウセンまで彼らを連れていくことになったようで、挨拶もそこそこに彼らを連れて街に向かってしまった。
そして考助は・・・・・・、
「・・・うーむむ・・・」
管理画面の前で唸っていた。
村に関しては、今できることはもう終わってしまったので、後はリュウセン側の対応待ちになっている。
他にできることを探そうにも、リスクを考えるとなかなか手を出せない状態なのだ。
もっと神力のptがあれば冒険もできるのだが、それはないものねだりである。
「あらあら。ずいぶんと悩んでいるみたいね。とりあえず、ご飯にしない?」
「え・・・!? もうそんな時間?」
しばらく画面の前で唸っていると、ミツキが見かねたように話しかけてきた。
いつの間にか時間も夕飯の時間になっている。
「ありがとう。そうだね、ご飯にしよう」
考助がそう言って席を立つと、ミツキが嬉しそうに腕を組んできた。
食堂兼台所までは短い距離なのだが、それでもミツキは嬉しそうにしていた。
(そういえば、ミツキと二人っきりになるのは、初めてか・・・)
コウヒとは何度かあったのだが、ミツキと二人っきりは今回が初めてだ。
何となくミツキのテンションが、微妙に高そうに見えたのも納得がいった。
結局、食事のあと特にいい案も思い浮かばずに、風呂からベッドまでミツキと一緒に過ごすことになった。
それはいいのだが、というか考助としても大歓迎なのだが・・・。
(コウヒさん、全部をミツキに話すのはやめようよ・・・・・・)
思わぬ事で二人の関係を何となく察してしまう考助であった。
もふもふ登場。
全部というのがどこまでかは、ご想像にお任せしますw
次話投稿は翌日20時予定。




