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塔の管理をしてみよう  作者: 早秋
第13章 塔をさらに増やそう
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7話 塔の現状

 1、残りの塔を攻略する

 2、今いる召喚獣たちを増やして生息域を拡大する

 3、新しい召喚獣を増やす

 4、第五十一層~第六十層のダンジョン領域を攻略し始めた冒険者用に宝箱を配置する

 5、その他(神具開発・攻略済みの塔の様子見など)


 考助は、今のところ思いつく作業を考えてみた。

 1は後二つとはいえ、攻略自体に日数がかかる。

 2、3は余っている階層はたくさんあるので、いつでもできる。

 4は下手に配置すると、冒険者たちがダンジョンだけに留まってしまうので、バランスが難しい。

 さらに言うと、第六十層を抜けた先の第七十一層は、上位モンスターが出てくるので冒険者たちにとっても攻略が難しい。

 そもそも上位モンスターが簡単に討伐できるのなら、アマミヤの塔はともかく、いままで周囲の六つの塔が攻略されてなかったのが不思議になる。

 それほどまでに、上位モンスターを討伐するのは難しいことなのだ。

 コウヒとミツキは別格にしても、ナナやワンリは冒険者たちを基準にすれば、脅威どころではない存在だったりする。

 5はさしあたって急いでいる物はない。攻略済みの塔に関しては、メンバーたちに任せているので、基本的に考助が口を出す気はない。

 口うるさい上司になる気はないのだ。

 

 そんなわけで、とりあえず4の作業をするにあたって情報収集をすることにした。

 以前からデフレイヤ一族の長であるジゼルに、攻略組の冒険者からの情報を集めるように頼んでいたのだ。

 そのジゼルに会うために考助はミツキを伴って、第七十九層へと向かった。

 考助を迎えたジゼルは、突然の訪問に関わらず笑顔で出迎えてくれた。

 以前の逃亡生活に比べて、この塔での生活はデフレイヤ一族を確実に豊かにしていた。

 物質的な意味でもそうなのだが、落ち着いて訓練できるという意味でもだ。

 過酷な逃亡生活が一族の者をより強くしていた面も否定はできないが、それはこの周辺で出てくるモンスターを討伐することで補える。

 ついでに言えば、訓練用のモンスターも召喚陣で好きに出せたりするのだからこれ以上の環境は無いだろう。

 そう言う意味で、まさしく考助はデフレイヤ一族にとっては、救世主的な存在になっていたりする。

 考助がそういった扱われ方をするのを嫌っているので、大袈裟な事をしたりはしないのだが。

 今まではピーチがいるため、直接考助がこうやって里に来ること自体が少なかったのだが、今後はそうも言っていられなくなるだろう。

 ピーチが北東の塔の管理にかかりきりになるからだ。

 デフレイヤ一族から得られる情報は、塔の管理にとっては非常に重要な物なのだ。

 デフレイヤ一族は暗殺などの技術もあるのだが、今のところ活躍の場は無かったりする。

 というよりも、塔の運営に関わっていく限りは、ほとんど活躍することは無いだろう。

 だからといって、ジゼルはその技術を放棄する気はないのだが。

 

「うーん。なるほど。参考になります」

 考助は、ジゼルから渡された報告書を見て、そう言った。

 そこに書かれているのは、塔で活動している冒険者たちの状況が記されている。

 ダンジョン層である第五十一層に行く前までは、初心者から中堅までの冒険者たちが活動をしている。

 主に植生の採取やモンスターから獲れる素材を元に生計を立てているようだった。

 因みに、昔からの知恵でモンスターから獲れる素材は、基本的に隅から隅まで活用される。

 取りすぎて買取値が下がることはあるが、需要がなくなることはあり得ない。

 それほどまでに、モンスター素材は生活に溶け込んで利用されている。

 そう言う意味では、ダンジョン層が始まる第五十一層からが問題になってくる。

 現在、第五十一層から第六十層のダンジョン層は、高レベルの冒険者たちが攻略している。

 第五十一層からのダンジョン層では、主にスケルトンのようなアンデット系のモンスターが多く出る。

 そうしたモンスターたちから獲れる素材は、実はあまり美味しくないのだ。

 アンデット系モンスターを討伐するくらいなら、その手前の第四十五層で狩りをしていた方が稼げる。

 それでも高レベルの冒険者たちがダンジョンの攻略を行うのは、宝箱の存在があるためだ。

 この宝箱については、冒険者たちの間で既に情報交換が行われていたりする。

 例えば、宝箱がある位置は変わらない。一度中身が取られた宝箱は、ある一定時間放置すると中身が復活するなどだ。

 因みに放置していた時間によって、中身のグレードが上がったりするということまで調べられているようだった。

 この辺の情報は、考助も知らなかった。

 塔の管理メニューで出来るのは、宝箱を配置したり撤去したりすることだからだ。

 中身がどういう変化を起こすかまでは、記されていなかった。

 ついでに、配置された宝箱の中に指定した物を入れることも可能だ。

 その機能を使って、宝箱の中身を調整しようと思っていたのだが、この報告を見てその必要がないという気がしてきた。

 少なくとも当分は様子見でいいだろう。

 ダンジョン攻略をするパーティが増えてくれば、宝箱を巡っての争いが起こったりするだろうが、その辺はあくまでも自己責任だ。

 こういったことは冒険者たちの間で、暗黙のルールが出来上がっていくものだろうと考助は考えていた。

 あえて、塔側で規制することでもないだろう。

 ちなみに、セーフティエリアは認知されるとともに、冒険者たちの間で有効に利用されているようだった。

 最初は戸惑いもあったりしたようだが、今は逆に喜ばれて人気のスポットになっていたりする。

 そうした報告を見た考助は、当面は手を出さなくてもいいだろうと考えた。

 ついでに、第七十一層と第七十二層を越えた先にある第六十一層から先のダンジョン層を越えるパーティも出ないと予想している。

 考助としても第七十一層から先は、セーフティエリアを置くつもりはなかった。

 一応の方針としては、冒険者たちの活動場所は第七十層までと決めている。

 もし第六十一層まで到達するパーティが現れれば、第七十層から先に行く転移門は、撤去かもしくは未稼働にするつもりでいる。

 考助としても狼達のいる階層に冒険者を呼び込んで、討伐させるつもりはない。

 

 ジゼルが渡してきた報告書の中に、気になる文言があった。

 セントラル大陸のモンスター達が活動期に入った可能性あり、という一文だ。

「モンスターが活動期に入ったとありますが、これは?」

 考助の質問に、ジゼルが頷いて、

「ああ、まだ確定はしていないのですが、どうも大陸の街をつないでいる街道で、モンスターからの襲撃が多くなっているようです」

「それは、大丈夫なのかな?」

「まあ、こういったことは歴史上何度もあったようですから。ついでに、今はここの転移門もあるでしょう」

 そうはいっても塔にある全ての街と繋がっているわけではない。

 街道の行き来が阻害されるのは、どう考えても良い兆候とは言えないだろう。

「・・・うーん。街道押さえられて商業活動が落ちると困るんだけどな・・・」

「考助様。懸念は分かるけど、流石に今のクラウンだとそこまで手を出せないわよ? それとも冒険者総動員して、どうにかするの?」

 ミツキが口添えをしてきた。

「そこまでは言わないけど、街道のモンスターが増えたのって、冒険者が塔に集まって来たせいとも考えられない?」

「あり得なくはない・・・と思いますが、それは各町の行政機関が考えることですな。正式にクラウンに依頼があれば、そこから考えればいいでしょう」

「はっきり言えば、今の段階でクラウンが余計なことをすれば、色々口出しされるわよ?」

 結局のところ政治の問題になるということだ。

 今のところクラウンは、塔の行政機関を除いて、どの組織にも属していないことになっている。

 そのクラウンが依頼もなしに動けば、色々付け入るスキを見せることになる。

 だからこそ、シュミットもガゼランも現状では動いていないのだ。

「・・・・・・うーん。やっぱり政治はめんどくさいなぁ」

 思わずそう呟いた考助であった。

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