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妻をやめたら、冷徹侯爵が毎日求婚してきます  作者: 唯崎りいち
元夫の章

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15/15

追い出されて、農民になる

 僕、ローレンス・ウィンザー公爵はローザの元に走った。


 僕はローレンス・ウィンザー公爵で、平民になったなんて嘘だ!


 ウィンザー公爵家に行くと、既に屋敷は封鎖済みで、公爵だと言っても入れて貰えなかった。


 父の前公爵は公爵時代の不正の罪で捕まり、母は実家の伯爵家に戻ったと言う。


 どんな扱いを受けているのか……。


 僕だって屋敷に入れないのだ。


 平民のあの女なら僕を受け入れてくれると思ったが、社交クラブは辞めたと言う。

「ところで、まだ先月のツケが払われてないんだが……どうなるんだ?」

「僕が、知るわけないだろう」

「ああ?」

 酷い扱いを受けながら、やっと聞き出した住所の前で、数日待って、やっと帰って来たと思ったら、男が一緒だった。


 僕が浮気を責めると、逆ギレしてくる。


 こんな女だと思わなかった。


 何故、ここに立ち寄ってしまったのか、僕にはローザしかいないのに!



 僕はローザが捉えられているダリウス・ブラックウッド侯爵の屋敷まで来た。


 僕の、公爵家よりは小さな屋敷だ。


 ただ、足がすくむ。


 僕のお下がりを満足そうに愛ている男だというのに!


 僕が迷っていると、屋敷から門へ馬車がやってくる。


 僕に気づくと、馬車が止まりダリウスが降りてくり。


 馬車の中にローザの姿が見えた。


「ローザ! 僕だ! 君が僕を愛しているのは分かってる!」


 ダリウスが呆れた顔をする。


「何を言っているんだ、お前は」


「どうしたの? ダリウス?」


 ローザも馬車から降りてくる。


「なんて美しいんだ! 僕のローザは」


 ローザは僕を見る。


「誰??」


 ローザは僕が誰かわからないと肩をすくめる仕草をする。


 可愛い。


「ローザを見るな!」


 ダリウスが僕からローザを隠す。


 僕のローザだ!


 ……ダリウスが背中を向けて、しばらく動かない。


 ……。


 さらに、動かない。


「ダリウス?」


 ローザが疑問を口にする。


「どうしたの?」


「ごめん、ローザ……。アイツの前で君にキスしてる所を見せつけてやりたいと思ってしまった。昔、君とアイツがキスしてる姿を見せつけられて、ずっと、その光景が目に焼き付いてたから。そんな、事したらアイツと同じに……」


 ローザが話の途中でダリウスの首に手を回す。


 そしてキスした——!


「……ダリウスに愛されてるって、私もみんなに知って欲しい。ずっと、愛されたことなんてなかったから」


 僕も、ずっと愛してた——。


「ローザ……」


 今度は、ダリウスがキスする。


 長くて、長すぎて、重いダリウスのキスを、ローザが微笑みながら受け入れて——。


 ——!


 頭と心が掻き乱される。


 僕の、ローザが!


 ガクッと、僕は膝から崩れ落ちた。


 そうか、僕は全てを失ったんだ……。



 どれくらいそうしていたのか、ダリウスが僕を見ていた。


「その顔が見たかったけど、ずっと見ていたいものじゃないな……。住む場所と仕事はやるから、あとは僕たちの仲の良さを聞きながら、一生を過ごすといい。俺たち以外も、幸せな奴しかいない場所だ——」


 ダリウスが言うと、ローザはもう馬車に乗り込んで僕を見ていない。


 何処かで見た男の馬車に乗せられる。


 ——ミリアと一緒にいた男か!



 男は、侯爵領に作物の買い付けに行くついでに、俺を農村に置いていく。


「もっと酷い場所に追放されるかと思ったら、こんないい村で働かせて貰えるんだ、侯爵——公爵様に感謝しろよ。ローレンス」


 そう言って僕を置いていく。


「ダリウスが昔住んでた場所をお前に住まわせろって? 新しくローザ様も滞在出来る館を建てているから、昔の家は必要ないんだろうけど……あんないい家を……特別扱いだな」


 そう言ってボロ小屋に案内された。


 朝は日の出から起こされて、農作業をやらされる。

 優しく教えられていたのに、昼近くにはゴミを見るような目をされる。


 僕は公爵なのに——!


 ——ここは地獄だ。


 村祭りの日にローザがダリウスと村に来る。


 お腹が膨らんでる——。


 僕のローザが……。


 ふらふらと僕が近づいていく、ローザはこっちを見た。


「誰?」


 すぐにダリウスや村人に引き離される。


 村の中心に花で囲まれた特別な椅子が置かれていて、ローザとダリウスがこの世のものとは思えない美しさで、座って談笑してる。


「ダリウス様が幸せそうで良かった」

「ダリウス様って……そうだな。破産寸前だった侯爵家を建て直して、この村をこんなに立派にしてくれたんだ。もう呼び捨てに出来ないな……」

「でも、ダリウス様の前では、呼び捨てじゃないと、気にすると思う。ダリウス様がこの村の一員だって思っている事は変わらないけど」


 僕の隣でダリウスと近い歳の村人が話している。

 村人と一緒にされるなんて僕は嫌だ!


 ローザとダリウスは丘の上の領主の館に行き、数日後に子供が生まれたと聞いた。


 その子供は次の村祭りの日に現れる。

 次の年も次の年も。


 子供の数が増えていく。


 たまに、僕の家の隣の立派な屋敷に滞在する事もあった。


 ローザは僕を見て、やっぱり、


「誰?」


 と言う。


 わざとやってる。


「お母様、この人は何の役にも立たない穀潰しのクズだって、村の人たちが言ってたわ」


「クズ! クズー!」


 ローザの子供達が騒ぐ。


「ごっ!? クズ……って、いくらそれ以上に相応しい言葉が無いからって、使っちゃダメよ!」


 ローザが子供達を叱っているそばにダリウスが来る。


 ローザを抱きしめて……子供たに囲まれて……。


 僕が手に入れるはずだった未来を見せつけられる。


 僕は、何も手に入れられずに、死んでいくだけ——。


◆◇◆


「ダリウス、そろそろ子供達の王都での学園を何処にするか決めないと……」


「ああ……」


「ダリウス、聞いてる?」


「君があんまり綺麗だから見惚れてた」


 ダリウスが私にキスする。


 結婚して、子供が生まれて……何年も経ってるのに、ダリウスは変わらない。


 ずっと私を愛して、幸せにしてくれる人。


 毎日、ずっと——。


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