第八十三話 本当に……本当に、そういう所だぞ、わく学!!
今回はタイトル通りだと思います。
「……いや、でもさ?」
一瞬、『確かにわく学だしな』って納得したけど……いや、でも流石にそれは如何なもんかと思うぞ?
「……『だってわく学だし』で納得出来るんなら、最初に言った諸侯が協力して……みたいな話にも通じるんじゃない? こう……巧く音頭取れてなかったけど、奇跡的に巧く行きました、みたいな」
まあ……正直、自分のせいで皆が不幸になったとはちょっと考えたくない。それがたとえ、ゲームの世界の『アリス・サルバート』のした事だとしても、だ。そんな私に、エリサは頷いて口を開いた。
「アリスさんの仰る事は分かります。実際、ネットでも『いや、だってわく学だよ? 普通に考えて何にも考えてないけど巧く行きました、って全然あり得ると思うんだけど』みたいな意見や……まあ、そもそも『わく学に考察とか無駄。草生えるわ』みたいな声がネットに上がったんですよ」
「……だろうね」
私だってそう思う。むしろ、そんな考察したジークガチ勢、マジで凄いと思う。そんな私に、しかしてエリサは悲しそうに首を左右に振って。
「ただ……その声を全てぶち壊す、とある事件がありまして」
「……事件?」
……なんだろう、嫌な予感しかしないが……
「公式が認めたんですよ。『事件全容の黒幕はアリスとアレンだ』って」
「……マジか」
……んじゃ、今までの話はなんだったんだよ。結局、私が皆を――
「――まあ、全部嘘だったんですけどね、公式が認めたって」
――……どういう事?
「……どういう事?」
正直、意味が全く分からないんだが……はてな顔を浮かべる私に一つ頷き、エリサは言葉を継いだ。
「順を追って説明します。まず、ジークとエリサを断頭台に送ったのは誰だって仮説が出たって言ったじゃないですか? あの仮説、ネットで結構盛り上がったんですよ」
「……まあ、分からんでもない」
聞いていて、『確かに』と思う所もあったし。
「それを見てた公式のササヤキッターが反応しましてですね?」
一息。
「――『皆さん、わく学2を楽しんでくれている様で何よりです! それに……中々面白い考察をされている方もおられますし……特に、アリスとアレンの考察は鋭いですね。バレるとは思わなかったw』って」
「……確定じゃん」
それ、確定のヤツじゃん。絶望に顔を染める私に、エリサは小さく首を左右に振る。
「確かに、先程の『仮説』自体は中々興味深いですし、一定の整合性はあります。ありますが……まあ、ぶっちゃけ、穴だらけですよね?」
「……まあ、うん」
「なもんで、公式にジャンジャン問い合わせのリプが送られてきました。『んじゃ、サルバート家はどうしたの? 一番の功労者でしょ?』とか『アリスは今、何しているの?』とか『アレンシナリオでアレンが王城を追い出されているのはなぜ? そのまま王様になるのが普通じゃない? サルバート家は助けてあげないの?』とか『そもそも、どうやってジークとエリサを電光石火の早業で断頭台に送ったの?』とか……まあ、色々と疑問点が噴き出すわけですよ」
「……だろうね」
「そしてまあ……大体想像が付くと思いますが、そういったリプに対して、公式は一切反応を返さなかったんですよ。そんな公式の対応に当然、ネットは荒れます。『どういうことだ!』という反応が噴出しまして」
「……」
「流石にヤバいと思ったのか、ついに公式が正式な解答を出しました」
そう言って、ごくりと息を呑む私を見ながら。
「――『出ていた仮説が面白かったので、公式の設定にしようと思いました。すみません。アレンとアリスが共謀して、ジークとエリサを断頭台に送った事実はありません』」
「わく学ぅーーーーー!!」
本当に、そういう所だぞ、わく学! それは流石に不味いだろう、おい!!
「……元々評価が低かった『わく学2』ですが、この事件が決定的でしたね。公式に対しての不信感は最高潮に達しました。正直、私もあの返信見たとき『ふざけるな!!』って思いましたし、不信感募りましたね。むしろ、わざと炎上させているのかと思いました」
「……むしろ信頼してたのか、公式を」
「ゼロからマイナスになった、が正確かも知れませんね。ゲーム内容に対しての叩きとか、内容に追随しての制作会社叩きはありましたが、単純に制作会社叩きが始まりましたので」
「……」
「……個人的にはファンの声を取り入れて、作品に反映させる、という行為自体は別にダメとは思わないんですよ。ファンとしても自分の意見が取り入れられたら嬉しいですし……なんとなく、公式が寄り添ってくれた感覚になりますしね」
「……まあ、うん。それは分かる」
分かるけど。
「でも、それをやるなら次作以降の話でしょ?」
「仰る通りです。今出ているゲームのガバガバな設定を、ファンが考えた設定で穴埋めしようとしたって……まあ、辻褄が合う訳ないんですよね」
「……だよね~」
そう言う事を平然とやっちゃう辺り、本当にわく学だな~という感じはするが……
「……んじゃ結局、真相は?」
「闇の中、という感じでしょうか? どの可能性もありますし、どの可能性もありません」
「……分かんないじゃん」
「分からないです。分からないですが……一個だけ、気に掛かる事がありまして」
「気に掛かる事?」
「アリスさん、ゲームの世界に転生するネット小説とか、ラノベって読んだことあります?」
「そりゃ……あるけど」
「……ああいうお話のテンプレの一つに、『ゲーム内の裏設定が実装されている』っていうのがあるんですよね」
「……ああ。なんとなく分かる」
なんか見た事ある気がするな、それ。隠しマップとか隠しキャラとか、本来はゲームに登場させる予定で登場させてない設定が、転生先の世界ではある、みたいな。
「……もし仮に……仮にですよ? そうした裏設定がある世界だとしたら」
真剣な瞳をこちらに向けて。
「――『アリス・サルバートとアレン・スモルが結託してジークとエリサを断頭台に送った』というのは……嘘とは言え、『一度は公式が認めた』裏設定なんですよ」
「!? で、でも! それって嘘……っていうか、公式が乗っかっただけの話でしょ? ファンの雑談に!」
「そうです。ですが、異世界転生なんてトンデモナイ事が二例も出ている世界ですよ? 公式が一度は認めた裏設定が生き残る可能性はゼロじゃないと思いませんか?」
「……そ、それは……」
「何より」
言い淀む私に、エリサは視線を向けたままで。
「――だって、『わく学』ですよ? 適当な世界観のこの世界なら、嘘の裏設定が生き残っていても、全然不思議じゃないですよ? バグみたいな感じで」
……マジでパワーワードだな。今ので『あ、全然残ってる可能性あるや』って思ったぞ、おい。
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