第六十三話 アリスちゃんの野望は始まる前に終了しました。
タイトルでネタバレしていくスタイル。『え? メアリ、有能キャラでしょ?』のご意見は次回以降で回収方針。
「……そう言えば」
エリサがウチに来た翌々日、少し間が空いた『お勉強会』の休憩時間、紅茶とお菓子で休憩を取っていた私達だったが、ジークの言葉でそちらに視線を向ける。どったの、ジーク?
「サルバート公から聞いたが……アリス、会社を経営したいと言ったらしいな」
「は? アリス、会社なんか経営すんのか? どうしたんだよ、急に」
「……中々興味深いな。どういう心境の変化だ?」
ジーク、ラインハルト、エディ、三者三様、それでも気になります! と云う視線を投げかけてくる。そんな三人の視線を受けた私は、紅茶のカップを置いて口を開いた。
「まあね。もしかしたら、領地経営の助けになるかも知れないし……エリサが興味があるって言うしさ? 折角だから、メアリと三人でちょっと経営でもしてみようかな、って」
「ほう。それは中々、見上げた心がけだな。エリサ嬢が興味があるのなら、一緒にやってあげてくれ。光魔法の使い手などという不憫な運命なのだ。少しぐらい、息抜きになることをさせてやってくれれば助かる」
「分かってるよ、ジーク。まあ、半分『ごっこ』遊びになるかも知れないけど……」
「良いじゃないか。失敗も経験だ。若いうちだけなんだろう? 失敗出来るのは」
まあね。仮に成功しなくても、それはそれで経験になる。経験になるんだけど……
「……リリー?」
……ええっと……り、リリーさん? なんですか、そのジト目。
「……アリス様、会社を経営するんですか?」
「え、ええっと……まあ、うん。一応、その予定だけど……」
頬をポリポリと掻きながらそういう私に、リリーがそっと瞳を伏せる。え、ええっと……リリー?
「……んで」
「え?」
「なんで、私に声かけてくれないんですかぁ!! アリス様、酷いです!!」
「……は?」
がばっと顔を上げたリリーの瞳に、涙が一杯溜まっていた。ちょ、え、は? り、リリー? なんで泣いてるの?
「なんでそんな面白そうな事、私に声かけてくれないんですかぁ! 私だってアリス様と一緒に会社、経営したいぃ!! エリサ様とかメアリ様ばっかりずるいぃー!! 私だって、アリス様とキャッキャしながら会社経営、したいー!!」
「きゃ、キャッキャ!? お、落ち着いて!? リリー、落ち着いて? ね? お願いだから!!」
瞳から滂沱の涙を流しながら『えっぐ、えっぐ』としゃくり上げるリリー。そんなリリーの目の前に、メアリがそっと紅茶を置いた。
「……リリー様? そのように泣かれず。さあ、これでも飲んで下さい」
「えっぐ……えっぐ……メアリ様」
涙ながらに見上げるリリーに、メアリはにっこりと微笑んで。
「……まあ、私は一番にお声かけ頂きましたが」
「ぴぎゃーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!! メアリ様、嫌い!!」
なんで煽るの!? 止めてよ、マジで!!
「ちょ、メアリ!!」
「事実ですから」
「そ、そりゃそうだろうけど……」
いや、そりゃそうだろうけど! だからって敢えて言う必要はないだ――ん? どうした、リリー? 私の服の裾をくいくいって……って、おい。なんだよ、その潤んだ上目遣いは。
「……リリーは……いらないこ、ですか?」
「……」
「リリーは……アリス様にとって……いらないこ、ですか?」
……鼻血出るかと思った。なんだ、この庇護欲をそそる生き物は。エリサじゃないけどヤバい扉が開くぞ、おい。
「……そんな事、ないよ?」
「……アリス様ぁ……」
「リリーがいらない子なんて……そんな訳、無いでしょ? リリーは大事なお友達だもん」
流石に鼻血を出したら淑女として名乗れなくなるぞと意思の力でねじ伏せてリリーに笑いかける。
「でも……」
「……会社を経営するって言ったけど、まだ具体的にどんな会社か決まって無いの。だからまあ、それがちゃんと決まったらリリーを誘おうと思ってたんだ」
ちなみにこれはマジだ。だってリリーだぞ? メアリと並ぶ有能キャラなんだから、手伝って貰わないって選択肢はない。
「ま、待て、アリス? リリーだけか? 俺は?」
「そ、そうだぞ、アリス! 俺だって手伝ってやるから!!」
「……経営をする以上、国家とのつながりはあった方が良いと思うぞ、アリス? その点、俺は既に王城に勤務している。自分で言うのもなんだが、中々役に立つと思うぞ?」
「そ、それを言うなら俺は一応、第一王子だぞ! 何をするか分からんが、『王室御用達』の看板は役に立つと思うぞ!!」
「お、お前らズルいぞ!! っていうか、エディは百歩譲るけど……ジークは完全に、家の力じゃねーか!」
「い、家の力だって俺の力だ!!」
「……まあ、確かにな。それだって立派なジークの力だろう。まあ……自分で勝ち得ていないもので、ジークが納得するのならな?」
「え、エディ!! そんな事言うな!!」
「まあ、良いじゃないか。ラインハルトよりはマシだ」
「ちょ、エディ!! いや……そ、そうだ! 俺、用心棒やるわ!! それなら良いだろう、アリス!!」
「「……は」」
「何鼻で笑ってやがんだ、二人とも!!」
「いや……用心棒って」
「……そうだな。そんなもの、役に立つか」
「う……」
……そんな捨てられた様な目でこっちを見るな、ラインハルト。
「……でもまあ、用心棒は居てくれた方が助かるかも」
「アリス!! だ、だろ? 用心棒、大事だろう!!」
「……待て。用心棒が必要という事は……危ない事をするという意味か? それは流石に……こ、婚約者として認める訳には行かないが?」
「危ないって言うか……」
私は私のやろうとしている事業計画をざっくりプレゼン。金の力で押し切る、というなんの捻りもない計画に、ラインハルトとジークの顔が引き攣った。な、なんだよ?
「……なに?」
「いや……まあ、アリスだしな」
「……だな。やり方が一々えげつないが……まあ、アリスのする事って考えたら、納得行くかも。アリスだし」
「……あんたら」
なにさ! その言い方だと、私がまるで悪いヤツみたいじゃないか!! エディを見習え! 文句ひとつ言わないじゃないか!!
「エディはどう? どう思う?」
私の言葉に、エディは腕を組んで考え込む。
「……そうだな。確かにアリスのやり方は、巧いやり方だと思う。金の力は偉大だからな」
「でしょ!」
「ただ、問題が一つあるな」
「問題? お金の話? それはお父様に――」
「そうじゃなくて」
そう言って、エディは組んでいた腕を解いて。
「アリスのやろうとしている事……普通に犯罪だぞ?」
……は?
「その……折角『思い付いた!』と喜んでいる所、非常に言い難いが……そういう、原価割れを起こす様な大安売りをする事を『不当廉売』と言ってな?」
言い難そうに――でも、はっきりと。
「……独占禁止法違反だ」
「……」
「……」
「……は……」
「……」
「……は、はははは……」
「……」
「――はぁああああーーーーーーーーーーーーーーーーーん!?!?!?!?!?」
……わ・く・が・く・めぇーーーーーーーーー!! てめぇ、このやろう!! なんでこんなポンコツな世界観で独占禁止法とかあんだよ!! ざけんじゃねーぞ!!
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