第五十九話 私に会社を買ってよね!!
どうでも良いですが、私今日誕生日です。なので、今日は生誕祭ということで全部で三話投稿予定です。宜しければ感想とか評価、頂けたら嬉しいです。誕生日プレゼントという事でw
「……会社……だと? なんだ、それは」
「会社とは……ええっと、ですね? 事業を行っている企業体の事で……」
「会社の説明など求めていない。それぐらいは知っている。知っているが……意味が分からない。何かの隠語ではなく、本当に『会社』が欲しいのか? 事業を行っている、会社が欲しいと……そういう事か?」
「はい。まあ、ざっくり言えばそうです。あ、ちなみにお父様? 株式会社って分かります?」
「カブシキガイシャ?」
「あ、なんでもないです」
なるほど……株式の概念は無いのか、この世界。まあ、わく学だし、そこまで難しい事はしないのか。
「……なぜだ?」
「はい?」
「なぜ、会社が欲しいなどと急に言い出すのだ? 今までそんな話、聞いた事も無かったんだが……平民の生活に興味があるのか?」
「いや、まあ……」
正直、それも無いワケではない。ぶっちゃけ、ゲーム内では学園内くらいしかウロウロしてないし、こっちに転生しては一応、大貴族の令嬢だしな。久しぶりに猫まんまとか食べたいし。米も味噌もあるしね、わく学世界。だが。
「少しばかり……会社経営に興味がありまして」
エリサと話をして思ったのだ。今までは『没落しない様に』頑張ってきたが、『没落した後』の生命線を作るのも、作戦としては無しではない。流石に、ジークがそこまで薄情だとは思わないんだけど……そもそも『異世界転生』なんてしちゃってるのだ。修正力とか強制力って謎の力があっても全然おかしくはない。
「……おかしな事に興味を持つな、アリスは」
「……規模の違いはあれど、会社も領地も『経営』という考え方であれば然程の違いは無いのではないでしょうか? 部下がいて、部下に三食を提供できる環境を整えるのは、日々の糧を領民が得る為に行動するのと、さして違いはないと思っています」
「……やってることは全然違うぞ?」
「心構えの問題として、です」
どっかのお米の国の大統領だって元会社経営者だし、会社経営者が国政……まで行くと流石に数は多く無いが、県政とか市政に関わるのは珍しくはない。地方自治体によっては、議員の半分近くが土建屋さん、みたいな地域だってあるし。詳しくは知らんが、似た様な所もあるのだろう、きっと。
「……お前は王妃になるんだぞ? 領地の経営などしないだろう?」
「……」
「……なんだ?」
「いえ……私が王妃になってですよ? お父様、私がお人形みたいにニコニコ笑ってる女だと思います?」
「……思わない。国政にガンガン口出して来そうだ」
「でしょ?」
そもそも私、『女だから』とかで黙っている事出来ないタイプだし。まあ……だから前世では三十手前まで独り身だったのかも知れないが。
「……それにしても……貴族が会社経営か……」
「前例がないですか?」
「ないな。会社の経営者から、功を立てて貴族になった例はあるが、その逆は聞いた事もない」
「……忌避される類の事でしょうか? その……みっともない、というか……」
「そういう事は……まあ、あまりないな。『物好き』として笑われるぐらいだろう」
「物好きなんですか?」
「そうだな。我が国は割合に豊かだ。戦争は下手くそだが、別に飢饉が起こったりもしていないし、国民生活にもある程度の余裕はある。贅沢さえしなければ、庶民は普通に暮らしていける。そして、庶民が普通に暮らしていけるという事は、その税で生きていく私達貴族も普通に生きていけるという事だ」
良い世界じゃないか。わく学の癖に生意気な。まあ、そう云う世界観だから王子とか宰相の息子とか近衛騎士の息子がポンコツでもなんとかなってるとも言えるのだろう。世紀末の様な世界観ならきっと生き残ってないだろうからな、わく学のキャラって。
「だから……まあ、わざわざ手間もお金も掛かる様な事はしないな。そんな事をしなくても生きて行けるし、贅沢をしたければ税を上げた方が早い」
「……大丈夫なんですか、それ? 税を上げるって……」
「大丈夫な訳が無いな。そんな事をしたらその領地で反乱がおきて、鎮圧され、新たな領主が送り込まれるだけだ。そうなったら今の生活どころか、下手をしたら死ぬからな」
「……なる程」
「だからまあ、皆そこまで無茶苦茶はしない。と、話が逸れたな。会社の経営……というか、会社が欲しいという話か……」
「……ダメ、でしょうか?」
「正直、ドレスや宝石の方が簡単だな」
そう言って小さくため息を吐くお父様。ううう……すみません、我儘娘で……
「……まあ、良いだろう。アリスの意見も一理ある。会社経営と領地経営、通じる所もあるかも知れんし……その世界の厳しさを知れば、もしかしたら国家を運営する助けになるかも知れないしな」
「っ!! ありがとうございます!!」
積極的、とまでは行かないまでも、消極的ながらものお父様の賛成に私の声が上ずる。そんな私に苦笑を浮かべて、お父様が言葉を続けた。
「……それにしても……お前は本当に九歳か? 九歳児とする会話では無いのだが」
「……」
「……まあ、良い。お前は七歳の頃から人が変わった様に大人びたしな。今回もまあ、その流れと思っておこう」
「……あ、あはは」
ありがとうございます。流石にお父様に転生者とか言えないしな、うん。
「それで? どんな会社が良いんだ? 一言に『会社』と言っても色々な会社があるが……飲食店か? 宝石商か? 衣装屋か? ああ、酒屋はダメだぞ? お前にはまだ早すぎる。それと、会社を買う、と言っても簡単に買えるものではない。売りに……というと語弊があるが、そんなに都合よく希望する職種が出ているとは思わないしな」
そう言ってお父様はこちらに視線を向けて。
「……さあ? どんな会社が良いんだ?」
そんなお父様に、私は笑顔を返して。
「なんでも良いです! どんな業種でも良いので、取り敢えず一番早く買える会社にして下さい!」
「……は?」
「あ、後……お金も貸してくれると、嬉しいです!」
そう言って胸の前で手を組んでうるうるお目目を……って、あ、あれ? お父様? なんでそんな残念な子を見る顔を……や、やっぱりお金貸しては不味かった?
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