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悪役令嬢に転生した……かと思ったけど、モブキャラの公爵令嬢の方だったので、馬鹿な攻略キャラを教育します!!  作者: 綜奈 勝馬


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第四十五話 それぞれのあいのかたち


 未だに『目がぐるぐるー』の洗脳状態のクリフトを横目で見ながら、少し離れた場所で私とジーク、ラインハルト、エディの四人は額を付き合わせる。


「……ウチの寄子がガチでヤバかった件について」


「……大丈夫なのか、あれ。クリフト、明らかに正常ではないんだが」


「……スゲーな、リリー嬢」


「……驚いたが……逆になんだか凄く納得したぞ、俺は。最初はリリー嬢の偽物かと思ったが……やっぱりリリー嬢に間違いないな。ある意味、流石リリー嬢だ」


 ……おい、エディ。流石にリリーを……ああ、でも、あの姿を見れば何とも反論し辛い。つうか、そっか。リリーとクリフトって姉と弟じゃないんだな。


「……主人と下僕、か。リリー嬢らしいな」


「……ジーク、それ以上言わないで」


 いや、確かにそうだけどさ。あの姿は完全に主人とペットだ。正確には洗脳してるんだから何とも言えんのだが……


「……とにかく、『アレ』は不味いよね?」


「……そうだな。色々な意味で正常な状態では無さそうだな。エディ、寄親としてどう思う? 自分の所の寄子が、サルバート家の寄子に……その、なんだ……洗脳……というか……ええっと……掌! 掌の上で操られているのを見て」


「……そう言われても……流石にこんな事態は想定外だぞ? あまり、良い意見が出てこないというか、なんと言うか……まあ、外聞は良くはないと思うが」


「……だよね」


 この世界、『わく学』の中で寄親・寄子という制度はそこまで厳密に適用されている訳ではない……と思う。少なくともわく学本編でエディとクリフトが寄親と寄子である事実が語られることは無かったし、きっと製作者が『そうだ! 寄親とか寄子って表現、小説とか漫画でよく見るし、ちょっと入れてみようぜ!』くらいのノリで入れた設定なんだろうと思う。


「……」


 思うがしかし、だ。流石に自分の所の寄子が他所の寄子を洗脳してました、なんてのは外聞が悪すぎる。エヴァンス侯爵家から抗議が来てもおかしくないし……そうなると、きっとリリーの立場も悪くなる。最悪、リリーともう逢えない、なんてことも……


「……えでぃ……」


「……そんな泣きそうな顔をするな、アリス。大丈夫、父上に言おうとは思ってないから」


「ううう……ありがとぉ……」


「……可愛いか」


「? な、何か言った?」


「……なんでもない」


 思わず涙目でエディを見つめてみると、顏を赤くしてエディがそっぽを向く。どうしたの、エディ?


「と、ともかく! 今のままでは不味いな。なんとか方法を考えなくてはな」


 そう言って声を上げるジーク。そんなジークを少しだけ不満そうに睨んだ後、エディが小さくため息を吐いた。


「……そうだな。確かに早めに対処しないと、不味い事になるかも知れん」


「……なにか上手い方法がある?」


「……そんなに簡単には思い付かないさ」


「……だよね」


 そう言ってはーっとため息を吐いて……ずっと黙ったままのラインハルトに視線を向ける。


「……ラインハルトはどう思う? なんかいい方法、ある?」


「? 良い方法って……なんの?」


 そう言って首を傾げるラインハルト。いや、なんのって……


「……つうか、お前らさっきからなんの話してるんだよ?」


「な、なんの話? ラインハルト、話を聞いて無かったの? クリフトの洗脳の話だよ!!」


 そう言ってちらっとクリフトの方を見やる。『リリー……』『ふふふ、クリフト?』なんて、端から見たら幸せそうなカップルそのものの二人を。まあ、片方の目がぐるぐると回って無かったら美しい光景なんだろうが……なんだろう? 怪しい新興宗教にハマる可哀想な人にしか見えない。


「……洗脳? あれって、リリーに洗脳されてるのか、クリフト?」


「されてるのかって……だ、だって、あんだけ目がぐるぐるしてるんだよ!? あんなの、漫画でしか見た事無いよ!!」


 そんな私の言葉に、ラインハルトは首を傾げて。




「え? あれ、洗脳なの? 単純に、クリフトがリリーにベタ惚れなのかと思ったんだけど?」




「「「……」」」


 ……ピュアか! ピュアピュアか! アレの何処をどう見て、『クリフト、リリーにベタ惚れなんだな~』って思うんだよ!!


「……ラインハルト、それは無いだろう?」


 やれやれといった風に首を左右に振るジーク。そんなジークに、少しだけ不満そうにラインハルトは口を開いた。


「なにがだよ?」


「なにがだよって……聞いてなかったのか? 『下僕だ!』とか『奴隷だ!』とか言っていただろう? アレの何処がベタ惚れなんだ?」


「それはあれじゃねーのか? 『愛の奴隷』とか、そういう意味なんじゃねーの?」


「あ、愛の奴隷って……」


 びっくりした。なにがびっくりしたって、脳筋キャラのラインハルトからそんな言葉飛び出した事に一番びっくりしたぞ、おい。


「……んだよ。俺だってキャラじゃねーのは分かってるけどよ」


 少しだけ気まずそうに頬を掻いて。


「……身内の恥を晒す様でアレだけど……前に言っただろ? ウチの曾祖父の弟がまあ、結構な『やんちゃ』な人だって」


「……ああ」


 アレか。『男女七歳にして席を同じくせず』の家訓を作ったスケコマシか。


「もう、殆どウチの家では伝説なんだけどよ? その曾祖父の弟、逢う女性、逢う女性、次々と恋仲になっていったらしいんだよ。『撃沈王』って呼ばれてたって。俺も詳しくは知らないけど……お爺様は、『……女性の目がハートになっていた』って言ってるの聞いた事あるし。今のクリフトも似た様なもんなんじゃねーの?」


「……目がぐるぐる回ってるのと、目がハートになるのは随分違うと思うけど……」


 ……でも、まあ、確かにそう言われれば一理ある気もしないでもない。あまりの変わりようについつい、『洗脳』というパワーワードを使ったが……リリーに心底惹かれていて、ああいう態度になっているのなら、勝手に動くのは馬に蹴られる事案ではある。


「……でもさ? あれ見たら正常なかかわり方じゃないと思わない?」


「曾祖父の弟曰く、『愛には色んな形がある。人それぞれ幸せの形は違う』、らしいぞ。お爺様が教えてくれた」


「……七歳児に何を教えているんだ」


「反面教師にしろって。『それでも、限度がある』って言ってたし……ま」


 そう言って私の頭をポンっと叩いて。



「――本人同士に聞いて見れば? それで、洗脳だと思うんだったら……その時、なんとかすれば良いじゃん。そうじゃないなら、温かく見守ってやろうぜ?」



 そう言って笑うラインハルトに、私も小さく微笑んで――




「……なあ、今の話が本当だとするとリリー嬢、七歳で同級生の男を手玉に取っているという事だよな? それ、逆に凄く無いか?」


「……ハニートラップとかさせたら最強そうだな、リリー嬢。むしろ、洗脳より怖い気がするが……」



 ……ジーク、エディ? お前ら、そういう事言うなよ、マジで。



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